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中国にある「こびとテーマパーク」は、差別を助長するのか?

先月の『AbemaPrime』で、中国にある「小矮人王国」というテーマパークの是非を特集していた。これは、いわゆる“小人症”と呼ばれる低身長症の人々がキャストを務めるテーマパークで、これに対して「差別を助長する」「障害を見世物にするな」といった批判が寄せられているのだという。

この特集が組まれたのは木曜日で、私がMCを担当する水曜日ではなかったため、放送後は「水曜でやってほしかった」「乙武さんの意見を聞いてみたかった」という声が散見された。まあ、私自身が望むと望まざるとにかかわらず、“障害者問題のご意見番”のような立ち位置となってしまっている現状を考えれば、そうした声が上がることも理解ができる。

だが、おそらく番組のスタッフはそうした声が上がるだろうことは百も承知で、あえて「水曜以外」にしたのだと思う。はっきり言って、その場で「私はこう思う」と自説を述べてしまえば、他のコメンテーターはやりづらくなる。それは決して健全な状況ではないのだが、どうしても当事者性という、その一点のみにおいて、私の意見がとんでもなく説得力を帯びて見えてしまうからだ。

そういう意味で、私は個性あるコメンテーター陣がそれぞれの見地から自由闊達な議論をすることができて、番組としてはむしろ「水曜以外」で正解だったと思っているのだが、せっかく多くの方が「乙武の意見が聞きたい」と言ってくださっているので、この場を借りて述べてみようと思う。


中国にある「こびとテーマパーク」は、差別を助長するのか?

この疑問に対して、私が真っ先に抱いた感想は、「いったい何周遅れの議論をしてるんだよ」というものだった。その話は、すでに「ミゼットプロレス(小人プロレス)」で済ませてきたはずじゃなかったか、と。

ミゼットプロレスとは、まさに低身長症のレスラーが試合をするプロレス。コミカルな動きが好評を博し、日本でも興業が打たれ、テレビ中継までされていた。だが、一部の視聴者から「障害者を笑い者にしている」と非難の声が上がったことで、テレビ局は中継をやめ、やがて人気も衰退していった。

それが、どれだけ当事者たちを苦しめることになったのか——。

当時、低身長症者は就職などで差別されることも多く、ミゼットプロレスは彼らにとって数少ない仕事のひとつだった。さらに彼らは仕事だけでなく、生きがいまで奪われることとなったのだ。

当時、ミゼットレスラーからはこんな声が上がっていたという。

「自分達は笑われているのではない、笑わせているんだ」
「自分の技に笑って1人くらい死ぬ人がいれば本望」

またミゼットレスラーと合同で興行することの多かった女子プロレスラー・影かほるは、こんなコメントを残している。

「『見世物で何が悪いの。こいつらプロレスやって幸せなんだよ』って思っている。プロレスでカネを稼げて飲みにも行けるし、女も買える。最高に幸せなんだよって。かわいそうっていう考えを持った時点で、ボランティアの人たちは大きな差別をしてると思う」

「かわいそうだという考えを持った時点で、大きな差別」という彼女の指摘は、今回の「こびとテーマパーク」にもまったく当てはまる話だと思う。

とまあ、ここまでずいぶんと“きれいに”書いてきたが、どうにもこの話題には感情が吹き出てしまうので、それを整えることなく、ありのままに吐き出してみようと思う。

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「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.com/h_ototake/m/m9d2115c70116

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