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「本当は歩けるのに車椅子に乗っている」と批判されている市議会議員のこと。

長谷基弘さんという芦屋市議会議員がいる。高校3年生の時に「ネフローゼ症候群」 という病気にかかり、ステロイドホルモン剤を大量に投与。その影響により、2003年から車椅子生活を送っているという。

1991年に芦屋市議会議員に初当選して以来、現在7期目。「目線が低くなった分だけ、今まで見えなかった物が見えるようになりました」と熱心に議員活動を続ける、地元では有名な“車椅子議員”なのだそうだ。

そんな長谷さんが、“文春砲”を食らっている。詳しくは下記の記事を読んでもらいたいが、「普段から車椅子を使用しているのはパフォーマンスで、じつは長谷議員は歩くことができる」という趣旨の記事なのだ。

「じつは歩ける人」が「歩けないフリ」をして議員活動をしているなんて、とんでもない!!! というのが天下の文春様の言い分だが、これには私にもぜひ物申させてほしい。

まず初めに多くの人の誤解を解いておかなければならないのは、「車椅子ユーザー=決して歩けない人」ではないということだ。たとえば、私の友人で車椅子YouTuberの寺田ユースケさんも、短い距離なら車椅子なしで歩くことができる。「装具をつければ歩ける」とか「手すりにつかまれば歩ける」とか人によって状況はまちまちだが、「車椅子ユーザー=決して歩けない人」ではないということだけは、まず押さえさせていただきたい。

私は文春オンラインの記事も読み、長谷議員が実際に歩いているという“流出動画”なるものも見たが、結果から言うと「グレー」であるという印象を受けた。長谷議員は障害者手帳も保有しているし、複数回の手術歴もある。医師の診断書もあることから、「障害者を詐称している」とするのは、さすがに無理があるように思う。

とは言え、長谷さんの「オフィシャルな振る舞い」と「実際の動き」に若干の開きがあることも否めないようだ。今回、流出している動画での歩行を見てみると、ゆっくりではあるが自分の足で何かにつかまることなく歩くことができている。これが文春の取材通り「令和以降に撮影された動画」なら、長谷議員は普段の振る舞いよりは自力で歩くことができる、ということになる。

だとすると、有権者が受ける印象もまた変わってくるだろう。「車椅子でかわいそうだから投票しよう」という有権者がどれほどいるのかはわからないが、「車椅子議員」を謳って活動している人が、じつは「短い距離なら歩けます」ということなら、たしかに候補者に対するイメージは変わってくるのかもしれない。

ただ、そもそも選挙というものは「たいした人柄でもない人」が「さも人格者であるかのように」振る舞うことは許されている。また、「たいした実績も残していない人」が「あれも私がやりました」とさも自分の実績であるかのように振る舞うことも許されている。いや、本来はどちらも好ましくない行為だとは思えないのだが、少なくとも週刊誌で糾弾されることはない。

だとすると、上記の行為が許されて、歩行に難を抱えている人が(長谷議員が当該するかは別にして)より歩けない体を装うことが糾弾されるのだとしたら、その線引きはどこになるのかという議論は必要になってくるのではないだろうか。

さて、ここからが「言いたいこと」の本番だ。

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