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【特撰記事②】れいわ・舩後議員が「感染症にかかれば命に関わる」と国会を欠席した件。

※これは3月14日に公開された有料記事ですが、特に反響が大きかったので年末特別企画として無料公開しています。

センバツ高校野球が史上初となる中止、私が楽しみにしていたプロ野球開幕も延期、さらには東京オリンピック・パラリンピックも延期か——という報道が出るなど、各所で新型コロナウイルスの影響が出ています。

私もご多分に漏れず、あちこちで仕事がキャンセルとなり四苦八苦しております。ホント、こういうときフリーランス稼業はしんどいですなあ……。

さて、そんなコロナウイルスの影響がついに国会にも。昨年の参議院選挙で当選を果たしたれいわ新選組の舩後靖彦議員が国会を欠席しました。「ALSの影響で人工呼吸器を装着しており、呼吸系に影響が出る感染症にかかれば命に関わる」というのが、その理由です。

「国民の負託にこたえるために、質疑を行いたいと考えていたが、医療関係者からの助言も踏まえ、欠席という苦渋の決断をした」

ご自身も上記のようなコメントを出されているように、非常に悔しい思いをされているのではないかと拝察します。

また、同じくれいわ新選組から当選された木村英子参議院議員も、人工呼吸器は使用していないものの、体の器官が全体的に弱く、万が一感染した場合に重篤化する可能性が高いとして、みずからが質問に立つ時間のみ出席するという形をとりました。

さて、こうしたニュースに世間はどう反応したのか見てみましょう。

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ちなみに、これらは私が恣意的に抜き取ったコメントではなく、各ニュースごとに上から表示されているコメントを順に転載したもの。つまり、多くの方から賛同や共感を得ているコメントだということです。

これらのコメントに当然思うところはあるわけですが、まあ匿名コメントにいきり立ってもなあと気持ちを落ち着かせていました。しかし、まあ見事にそんな私の気持ちを逆なでする記事を見つけてしまい、ついに怒髪天を衝いてしまいました。それが、こちら。

該当箇所だけ抜き出してみよう。

重度の身体障害を抱えておられる方なので、この方々に議員辞職を勧告するのは忍び難いのだが、しかし、やはりどなたかがアドバイスをされた方がいい。

議員活動に具体的な支障を来たしておられるのであれば、このお二人にもどなたかが選手交代を告げられるべきだろう。

ここは、山本太郎さんの出番である。

あなたしか、この方々にアドバイスは出来ないはずである。

プロフィールを見れば、著者は元衆議院議員だという。さて、私としても、このまま黙ってはいられない。怒りの反論を試みてみよう。

そもそも、この著者はブログの前段で、ウグイス嬢の買収疑惑でダンマリを決め込む河井案里議員について批判している。そして、その直後に「件の参議院議員の外に参議院議員としての職務遂行に支障を来たしておられる方が目下のところあと二人おられる」として舩後議員と木村議員に辞職を促しているのだ。

もちろん、河井議員の件は裁判が終わってみないと完全にクロとは言いきれない。だが、少なくともそうした疑惑を持たれ、秘書が逮捕までされている議員と、障害により命が危険にさらされる可能性がある議員とを横並びにして、「そろそろ選手交代でもいいんじゃないのかしら」などと軽々しく論じる姿勢に、私は激しい憤りを覚えてしまった。

まあ、私の感情など、どうでもいい。具体的な反論に入りたいと思う。

河井議員と舩後議員の、最も大きな違いは何か。それは本人の意思であると思う。「できれば仮病を使ってでも逃げ隠れしたい」という姿勢が如実に表れてしまっており、まるで説明責任を果たそうともしない河井議員。それに対して、「苦渋の決断」という言葉からも読み取れるように、出席したくても“命に関わる”ほどの状況がそれを許さなかった舩後議員。両者の意思には天地ほどの開きがある。

出席する意思があるのに、出席できないのだ。ここで考えられる選択肢は、2つだ。

A.「どんな事情であれ、出席できないなら辞めるべきだ」
B.「なんとかして出席できる環境を整備できないだろうか」

世間の多くは、そしてブログの著者は「A」という態度を取った。しかし、私は、「B」を模索する人間でありたいと思う。

以前にこんな記事を書いた。

この記事でも書いたように、私は「重度障害者に国会議員が務まるのか」ではなく、「選挙で選ばれた以上、重度障害者でも議員活動できるよう徹底的に環境を整備すべきだ」と考えている。その考えは、いまでも変わらない。「出席したいけどできない」舩後議員に、なんとか救済策がないだろうかと考えてしまう。

いや、あるではないか。ウルトラCとも言える救済策が。

「出席」という言葉を、辞書で調べてみる。「会合に参加すること」「授業に出ること」とある。「その場にいること」とはどこにも書かれていない。つまり、その場にいることが難しくても“出席”することは十分可能になる。そう、オンラインで参加すればいいのだ。コロナの影響で多くの企業が取り入れているリモートワークを国会にも導入すればいいのではないだろうか。

ビデオ会議で質疑する。遠隔で採決に関わる。技術的には問題ない。道義的にも、私は問題ないと感じる。残される問題は、人々が抱くだろう根拠のない“抵抗感”だけだ。

こうしたオンライン参加が可能になることで救われるのは、なにも舩後・木村両議員のような障害を抱える方々だけではない。先日、育休取得で賛否を巻き起こした小泉大臣など、子育て世代の議員もうんと活動しやすくなるだろう。

国会議員は、国民の代弁者だ。つまり、さまざまな属性の人々から代表が選出される必要がある。しかし、いまの国会に女性がどれだけいるだろうか。子育て世代がどれだけいるだろうか。障害者がどれだけいるだろうか。まだまだ「オジサン」に偏りがあることは否めない。

オンライン参加の導入は、舩後議員や木村議員のためだけのものではない。こうした属性の偏りを是正していくためにも、つまり、私たち有権者から、幅広い層の代表を選出するためにも、欠かせない仕組みだと思うのだ。

ブログの著者は、元国会議員だという。現状に困難を抱える人がいたとき、「なんとか環境を整備できないか」ではなく、「だったら辞めるべきだ」と考えるような方が、一時期でも国会に議席を持っていたのかと思うと、暗澹たる気持ちにならざるを得ない。

みなさまにおかれましては、ぜひとも、

B.「なんとかして可能となる環境を整備できないだろうか」

と考える習性を身につけていただければ幸いです。

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