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【3社登壇】SDGs × 発達障害で考えるマーケティング・商品開発とは?

ここ数年で様々なシーンで聞かれるようになった、「SDGs」という言葉。

多くの企業にとって取り組む必要性が高まっている「SDGs」について、特に発達障害の分野において今後どのような課題や可能性があるでしょうか。

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その疑問に対して企業の皆さんと考えるため、昨年度末、発達ナビ「ALLIANCE PROGRAM」主催によるセミナー、「SDGs × 発達障害で考えるマーケティング・商品開発とは?」が開催されました。

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企業で働く方々の興味関心の高まりを象徴するように、当初の予想を超える応募をいただいたこのセミナー。当日の様子を振り返ります。

持続可能な社会に向けて、企業として出来ること。

「障害って一体なんでしょうか?」

この日のセミナーは、株式会社LITALICOの社長室、チーフ・エディター鈴木悠平による問いかけではじまりました。

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「私たちはそれを、人ではなく社会の側にあるものなんだと解釈しています」

先天的な脳機能の偏りによって、社会生活に困難が生じてしまう発達障害。

その困りごとは個人だけの要素ではなく、周囲の環境との関係性、相互作用の中で生まれてくるものだから、社会の側に働きかけることで発達障害の方の生きづらさを変えられるはず。社会の側の偏見を無くし、関わり方や環境を個性に合わせることで、誰もが生きやすい世の中はきっとつくることができる。

だからこそ企業の持つ大きな力を今まさに困っている人たちに届けることは、障害のない社会をつくる上で大きな意味があるはずです。

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「SDGsについて言えばまだ課題も多いとされますが、発達ナビでは多く当てはまる項目があります。でもそれは、あくまで結果として、ということなのですが」

企業の中での認知自体は高まってきたSDGsですが、まだまだ具体的な取り組みまで繋げられている企業は多くありません。また、担い手がCSR部門に偏っていること、中間管理職への浸透など、様々な課題も。

発達障害支援がSDGsと重なる項目は、「人や国の不平等をなくす」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等の実現」「住み続けられるまちづくり」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくる」があげられます。

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「私たちの場合は発達障害という分野でしたが、企業にとって力になりたい誰かの背景にある顧客課題をまず考えることが、SDGsを身近にするために大切なのでは」

想いを届けたい人たちのことを考え、自分たちに出来ることを追求したその先で、SDGsが重なってくる。SDGsを目的ではなく機会と捉え、それぞれの企業が持っている力を今必要としている人たちに届ける原点に立ち返ることこそ、いつの時代もマーケティングや商品開発に求められていることなのではないでしょうか。

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「社会の潮流だからと言って、企画の頭からSDGsに絡めることって本質的では無いのでは。それぞれの企業の文脈で、誰のために働きかけていきたいか。結果として、どのSDGsを実現したいか。今日がそれを考えるきっかけとなっていたら嬉しいです」

誰の、どんな課題を解決したいのか?
企業のビジョン・ミッション・事業を踏まえて、何をやるべきか?
関わる私たち自身が、いきいきと取り組めるテーマであるか?


例えそれが発達障害の分野でなくても、多様化する社会の中で誰かのために企業の力が必ず必要とされています。

そんな鈴木の言葉に、ご出席いただいた方々も熱心に耳を傾けていただきました。

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企業の側から見る、発達障害の領域に取り組むということについて。

発達ナビ「ALLIANCE PROGRAM」では、すでに企業の商品やサービスを、発達障害の方々に届けるお取り組みを多数させていただいています。今回は、3社の方々をお招きし、パネルトークを通して企業の側から見る「SDGs × 発達障害」について、お話をいただきました。

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中井信彦さま
コクヨ株式会社 事業開発センター ネットソリューション事業部 ネットステーショナリーグループ グループリーダー

中井さま:「しゅくだいやる気ペン」という商品(いつもの鉛筆に取り付け、勉強への取り組みを分析することで、日々の努力を”見える化”するIoT文具)を開発したのですが、想像以上に発達障害の親子から反響があり、これまでに発達ナビとも多く企画を共にしてきました。

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佐々木章太さま
株式会社すららネット マーケティング企画室 室長 兼 子どもの発達支援室 室長

佐々木さま:すららネットの家庭学習における約半数のユーザーが発達障害ということで、「無学年方式」という特徴を持つ教材を一人でも多くの方に届けていくために、発達ナビでコラムの掲載やイベントの開催などを実施してきました。

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久山貴暉さま
株式会社LIFULL LIFULL HOME'S事業本部 新UX開発部 オムニチャネルマーケティングユニット カウンターマーケティンググループ

久山さま:ライフルホームズというポータルサイトの中でも、やはり発達障害の方々は住まい選びに困られていることが多いんですね。そんな方々対して、発達ナビを介して暮らしやすい住まいの選び方の情報を届ける取り組みをしています。

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鈴木:本日はよろしくお願いします。SDGsや発達障害に取り組むにあたって、まず社内で企画を通すのが大変な部分もあったかと思うのですが。

中井さま:すぐに利益が出るものでもないので、やはり当初は社内からも懐疑的な見方もあったかと記憶しています。ただ、広くユーザーに対して事前調査をする中で、発達障害の親子からお手紙をいただくほど熱量の高い反響があり、それが追い風となって社内での賛同を得ることに繋がりました。本当に必要としてくれる人たちに商品を届けたい、その想いはどの企業も持たれているのでは。

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鈴木:反響を得ることで社内でも共感を生んでいったと。その点LIFULLさまは、最初反響を見るためにトライアルで発達ナビと相談会を実施したんですよね。

久山さま:はい、住まいの選び方に関する情報は発達障害の方々にニーズはあるんだろうなとは想定していましたが、どの程度の規模感で反響があるかは未知数でしたので。当然「住まいの窓口」には発達障害への専門性は無いのですが、その中でも発達ナビからも情報を得ながら住まい探しをサポートしました。相談会を通して、相談者が求めていた条件に近い住まいを見つけたケースが生まれ、このサービスは発達障害の方に寄り添えるという価値を持っているんだな、と確信を深めることができました。

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鈴木:「すららネット」さまも、最初発達ナビのコラム企画からトライアルで始めたと記憶しています。

佐々木さま:はい、その記事が公開2週間で2万PVを超えたことで社内からも納得度が上がり、今に至る発達ナビとの関係性に繋がっています。直近の事例としては、「出席扱いの説明会&自発的に勉強する子の育て方講座」イベントも発達ナビのコラムで告知することで、200人近く参加いただくことができました。LITALICOからのプレスリリースもあり、メディアからの注目度も高く、「すららネット」の課題である知名度の向上で力になっていただけています。

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鈴木:発達障害という分野で自社の商品・サービスを届けることをしてみて、どのような感想を持たれましたか?

中井さま:今回一番大切にしたのが、ユーザーがどのような気持ちでいるのかを正しく理解すること。その点で発達障害は専門性なく不安でしたが、ユーザーの言葉を発達ナビが代弁してくれて、より多様な顧客像を具体的に描くことができました。

佐々木さま:私たちも基本的には発達ナビの専門性を頼りながら、私の専門がマーケティングですので記事に「無学年方式」などSEO観点からも強いキーワードを多く入れたり、それぞれの強みを合わせることで顧客に届く記事をつくることができたと思います。

久山さま:同じくですね。専門性のサポートはもらいつつ、他のお客様と変わらないサービスの価値に立ち返って、「住まい探しの悩みに寄り添うこと」を突き詰めました。その中で「自分ごと」として読みたくなる内容・タイトルづくりを、住まい探しのプロとしてこだわりました。

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鈴木:ありがとうございます。発達障害にかかわらず、SDGsや社会課題に対してこれから挑戦していきたいことを、最後に教えてください。

中井さま:「やる気ペンを卒業した後に何を残せるか」を考えています。やる気ペンで価値が大きいのが、外発的な動機で勉強に取り組むことを繰り返すことで、いつか内発的な動機にしていけること。学びの入り口に立つ親子を応援するために、出来ることを考えていきます。

佐々木さん:この企業にいてずっと気になっているのが、お父さんに対して何か働きかけができないかということ。どうしても前に出てくるのがお母さんが多く、お父さんはどうしてるんだろうと思うことがある。より豊かな家庭学習のために、可能性を検討しています。

久山さま:住まい探しや購入で諦めてしまう人を無くしたいです。LIFULL HOME'Sでは、ちょうど「LIFULL HOME’S ACTION FOR ALL」という、高齢者の方々やLGBTの方々に寄り添う取り組みも始まりました。今後発達障害の方々も含めて、一人でも多くの方の住まい探しをサポートします。

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質問コーナーでは、発達障害のあるお子さまをお持ちの方からもお声をいただきました。

「新企画の商品開発において、言葉は違うかもしれないが発達障害の親子をもっと使って欲しい。やはり市場にサービスが足りないから、自分たちを見てもらえているということで満足度が出やすい特徴もあるので、ぜひ商品開発の裏付けとしても発達障害という観点を取り入れることについて検討してみてほしいです」

発達障害を取り巻く生活領域にはまだまだ支援が足りていないのだから、企業の力がきっと求められている分野ですし、希望になることができるはず。そんな風に、たくさんのことを考えさせられる、パネルトークとなりました。

熱量の高かったセミナーの終わりに。

セミナーの終わりに設けられた懇親会では、様々な業界の方が繋がるきっかけとなり、何かSDGsや発達障害の分野で一緒に出来ることがないかと、活発な意見交換が行われました。
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また事後アンケートでも高い満足度をいただき、有意義な時間としていただくことができました。

【いただいたご感想の一部】
「新規事業を立ち上げるためのヒントをいただけました」
「取り組まれた企業の飾らないリアルな声が聞けて大変参考になりました」
「SDGsと仕事を絡めると難しいと感じていましたが、身近にやれることを考える機会をいただけました」

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「SDGs × 発達障害」というテーマに関わらず、発達ナビ「ALLIANCE PROGRAM」では今後もセミナーを企画予定です。ぜひ企業の力を発達障害の方々に届けていきたいと思っていますので、セミナーを一つのきっかけにご一緒できることを考えさせてください。

何か私たちにできることがありますように。いつでもお問い合わせをお待ちしております。

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