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HSP的会社との向き合い方②~有給休暇をどうやって取るか~

 会社の仕事を覚えるにも、周囲との人間関係が気になり上手くいかない。心身が疲れてしまい、能率も上がらない。
 少し休みたい。でも、仕事が出来ていない自分が皆を差し置いて休んでいいのか?
 上司は絶対に認めてくれないだろう。そもそも休む理由がない。「疲れたから休みたい」では理由にならないのでは。周囲の目も気になる。いったいどうすればいいんだろう?

 HSPの方が仕事をする上で特に重要なのは「休養」です。
 ただでさえ職場で周囲のことが気になってしまい疲労度が高いのに、その状況が長く続いてしまうと心身共に疲弊してしまいます。

 そこで有効なのは「有給休暇」です。
 もし有給で休暇が取れれば、疲れ切った心身の回復などが出来、もっと自分のペースで能率良く仕事ができるのではないでしょうか?

 しかし、実際のところは残業ばかりで普段の休みでさえ満足に取れない。有給休暇なんて自分には取れるわけないと感じている人も多いでしょう。
 「上司から、自分の会社に有給休暇はないと言われた」「有給休暇なんて使ったことがない」といった方も多いと思います。

 そこで、今回は「HSPが職場で有給休暇を取るための方法」について考えてみたいと思います。

 HSPとは、「とても敏感な人」の意味です。詳しくはこちらに書いています。

■取れない一番の原因は「罪悪感」

 「休暇が取れる訳がない」と感じてしまう一番の原因は「罪悪感」です。
 敏感な気質のHSPにとって、罪悪感という感情は厄介です。
 罪悪感によって、自ら休暇なんて取れない、取ってはいけないという気持ちになってしまうのです。
 この罪悪感は、与えられた仕事をしっかりやりたい、会社に貢献したいと考えるまじめな人が陥りやすいのです。

 でも実はこの罪悪感は、自分が感じる前に人から植え付けられるのです。
 会社や周囲の人のつくりだす「空気」で罪悪感が生まれるのです。
 この罪悪感を利用する会社集団のシステムがあります。敏感なHSPの皆さんはそれを敏感に感じ取っているのです。

 罪悪感から抜け出すためには、有給休暇という制度、そして会社という集団のシステムを十分に知っておくことが必要です。
 その上でいくつかの対策を講じて、有給休暇を取りましょう。

■有給休暇の制度を知る

 まずは、「有給休暇の制度を知る」です。
 ここで一番知ってほしいことは、「有給休暇を取る時に理由は必要ない」ということです。
 家族が病気だとか、引っ越しだとか、大きな理由がないと有給休暇は取れないと思われている方もいるでしょう。
 しかし、従業員は一定の有給休暇を取得する権利がもともとあり、会社が拒否できません。理由なんて必要ないのです。

 有給休暇を取得する権利が従業員にはあると言いましたが、例外がひとつあります。いわゆる「時季変更権」です。
 会社は従業員の有給休暇の取得を拒否は出来ないけれど、人のやりくりなどがどうしても難しい場合に限り休暇の日を変更する権利をもっています。
 とはいっても、時季変更権は業務が立ち行かないなど程の人員不足などに限られます。事前に申請をしているにも関わらず変更権を行使するのは、行きすぎとして無効とされます。

 まとめると、私たちが休暇を取得することは権利としてもっている。理由は必要ない。しかし、自分が望んだ日に休暇を取得出来るかどうかは会社の状況による。だから、会社の業務の状況も見ながら休暇の申請をすると良いのです。

 次に知ってほしいことは、「有給休暇は誰でも利用が可能」です。
 よくある誤解に「パートは有休は取得できない」があります。これは大きな間違いです。
 パートなど、いわゆる非正規と言われる従業員も有給休暇は取得できます。6ヶ月継続して働いていれば、取得できる日数は勤務時間に比例し少なくなりますが取得は出来るのです。
 これを無視して「パートには有休はない」とうそぶく会社も少なくないので十分注意しましょう。

■会社という集団のシステムを知る

 会社は、自社の利益を向上させることを目的に動いています。だから社内を効率的にするため、従業員を集団としてまとめ、一定の方向に動かそうとします。
 そのために、従業員を褒めたり圧力をかけたりと、様々な方法を使います。会社は、従業員どうしの相互の監視も使います。
 つまり「あの人だけいい思いをしているのは許せない」という感情を利用するのです。会社という集団の中での従業員どうしのポジション争い。これを利用するのです。
 会社も従業員に勝手な行動をさせたくない。従業員どうしも、ひとりだけに勝手な行動をさせたくない「出る杭は打たれる」方向に向きがちです。
 会社に無条件に貢献しろ。上司、同僚の迷惑になることはするな。こういったことが暗に強制されがちです。いわゆる「空気」が醸成されるのです。
 こうして会社も従業員どうしも、集団として有給休暇を利用させない方向に向いてしまうのです。

 集団のつくりだす「空気」については、こちらに詳しく書いています。

■HSPの立ち回り方

 このような出る杭を打つ集団のシステムの中で、HSPはどう立ち回るか?
 まず一番の問題である「罪悪感」をクリアするために、有給休暇の制度と会社という集団の基本システムを知りました。
 その上で集団の空気をコントロールし、有給休暇を取得するハードルを下げるのです。
 ここで、私が使っている3つの方法をご紹介します。

①観察する。
 集団が誰に注目しているのか?誰を、そして何に恐れているのか?について、しっかり観察します。
 ここで、会社での典型的な例を2つほどあげてみます。

タイプA:社員がワンマン社長のことを気にしている会社
 社員の視線はワンマン社長に向いている。全ては社長の意向で決まる。
 社長に気に入られれば話が前に進むし、目を付けられれば全てダメ出し。
 事前の根回し、社長の気分が大事だと社員は心得ている。飲み会は必須。お世辞は当たり前。根回しが出来ていれば、理不尽なことでも通ってしまう環境。
 売り上げに悪影響を及ぼすようなことは絶対に提案出来ない。ましてや売り上げが下がっている中で、社長の気に障るようなことは絶対に言えない。

タイプB:パートが力を持っている会社
 パートが多く居る会社。長年勤めたパートが多い。社員以上に仕事の内容を熟知している。
 社員は何かを変えたい場合にも、パートにお伺いを立てないといけない。特に長く務めたパートが首を縦に振らないと話が前に進まない。
 パートは自分達が慣れ親しんだやり方を変えるのを極端に嫌う。そして新しく入った人が、その流れを乱すことも嫌う。それが高じて、職場内での新しい人へのいじめもあり、新人がすぐ辞めてしまう。

 タイプAの場合、社員が何に恐れているのかといえば、当然社長です。だから社長の動きをみんな注目しています。
 一方で、社長は何を恐れているのでしょうか?おそらく社員です。社員を誰も信用できなくなっているのでしょう。そして社員は、他の社員を恐れるようになります。自分だけが陥れられ、社長に目を付けられることを恐れるのです。

 タイプBの場合、社員が恐れているのはパート(特に勤務の長いベテランパート)です。
 そのパートは何を恐れているのでしょうか?
 おそらく新人です。今の自分たちの安泰を乱す可能性のある人を恐れているのです。
 どちらのタイプでも、恐れを感じている人をマークし自分のコントロール下に置こうとするか、排除しようとします。

 ここで分かるのは、人は怖れから自分の身を守るために、人を攻撃してしまうということです。
 有給休暇に戻ると、上司が休暇を取らせないのは、部下に休みを取らせ業績が落ちると、周囲から攻撃されてしまうという恐れがあるからです。
 従業員同士が休みを取ることを牽制し合うのは、誰かが休みをとって自分に負担が増してパンクしてしまう、負担が増して成果が上げられず、批判されることに恐れを感じているのです。

 恐れを感じている人たちは、周囲へ負のエネルギーをまき散らします。
 敏感な気質のHSPは、そんな人たちを目の前にすると激しく感覚と感情が揺さぶられます。ボロボロに傷ついてしまう。見ていられなくなり、逃げたくなってしまいます。だから罪悪感も生まれてしまうのです。
 そんな時は、感情が揺さぶられない所まで距離をとります。逃げていいのです。しかし、観察する目は背けないで下さい。人を、そして自分をしっかりと観察しましょう。

 揺さぶられる感情を後ろで観察している自分を想像します。客観的な視線を意識するのです。
 もし自分が上司だったら、同僚だったらどう感じているか?どう行動するか?何を恐れているか?何がネックになっているのか?相手に乗り移ったようなイメージです。想像をたくましくするのです。

 敏感な気質のHSPの皆さんのための感情を乱されない方法「自分を保つセルフマネジメント」については、こちらに詳しく書いています。


 そうすると、徐々に相手が恐れていること、困っていること、いわゆる「ボトルネック」に気付き始めます。
 ここでは、よくあるいくつかのボトルネックを紹介します。

 一つ目は仕事です。仕事が前に進まない。成績が上がらない。そこで感じているストレスを何とかして欲しい、助けて欲しいと思っています。その上に仕事の邪魔をする人が生まれると、その人を恐れ、排除しようとします。

 ふたつめは人間関係です。直属の上司とそりが合わない。何とか上手く立ち回りたい。不安で仕方ない。
 そのために周囲の人を貶める。自分が仕事を完璧にやっていることをアピールするために、同僚を利用する。同僚のミスをあげつらって、自分を相対的に上に見せようとするのです。

 相手のボトルネックに注目し、その解消に向けて力を貸します。相手も自分のボトルネックの解消につながると感じると、あなたを信頼するでしょう。

②アメとムチ作戦
 次は「アメとムチ作戦」です。
 先程述べたように会社の、集団の、個人の恐れ、ボトルネックを解消することに力を貸すのですが、それだけでは会社の、集団の良いように使われてしまいます。 いわゆる「便利屋」になってしまうのです。

 便利屋にならないようにするためには、どうすればいいでしょうか。
 それは「相手の恐れ」をあえてつくりだすのです。
 具体的には、相手に良いように使われそうな時、周囲の人のいる前で正論を相手にぶつけるのです。
 例えば、自分に仕事を押しつけようとする相手に対し、「これって本当は○○さんがやるべき仕事ですよね」とか、「○○さんがやらなくてもいいんですか?」などと大きな声で、周りに聞こえるように言うのです。
 これは相手とケンカをするという意味ではありません。正論をあえてぶつけて、理不尽な要求に待ったをかけるのです。
 相手は、上手く使おうと考えていた相手から、いきなり正論をぶつけられると恐れを感じます。痛い目に遭うのではと不安になるのです。
 しかし、相手が「申し訳ないけど」というスタンスであなたに頼んできた場合は、快く受けます。相手のボトルネックを解消しようという意志を見せるのです。
 そうすれば、あなたは相手から一目置かれる存在になります。少なくとも便利屋にはならないでしょう。

「人の恐れの原因、ボトルネックを解消する手助けをする」と「人の恐れをあえて作り出す」その両方を使い分けることで、あなたが集団の中で唯一無二の存在となれるのです。

③練習する
 「集団を観察すること」と、「アメとムチ作戦」、これらを行う中で、集団の中であなたの存在感が増してきます。徐々に休暇を取ることを会社で当たり前にしていきましょう。休みを取る事へのハードルを下げるのです。

 具体的には、会社に申請して休暇を取る「練習」をするのです。
 最初は職場の業務の状況を見ながら、一番取りやすそうな時期に休暇を申請します。いきなり自分が休みたい時期に申請してはいけません。
 自分が本当に必要な時期にいきなり休暇を申請すると、その時期が仕事が忙しければ会社も困惑しますし、お互い余裕のない状況でのやりとりになるので、つい感情的になり、トラブルになってしまいます。
 まずは「時季変更権」で休む日を変更されても気にしないくらいの心持ちで申し出てみるのです。そして、会社、上司、同僚の反応を見ます。
 申請する方法も工夫します。先に説明したとおり有給休暇の取得に理由を言う必要はありません。法律に則った社員の権利だからです。
 しかし、理由を聞かれた時あえて法律を前面に押し出して会社と争っても、あまり良くありません。
 休暇を申し出た時に理由を聞かれたら、「あれ?理由を言わないといけないんですか?就業規則に理由が必要って書いてないですよね。私の勘違いですかね?確認してみましょうか?」などと答えるのです。アメとムチのムチです。
 良く分かっている上司なら、絶対にそれ以上は突っ込みません。
 しかし、分からず闇雲に「理由を言うのが当然だ」と言う上司もいるかもしれません。そういう上司のいる会社は、良い会社ではありません。去ることも視野に入れなければいけません。

 業務の余裕のある時期に休暇を取ってみる。そして、取得できたら周囲にも休暇を勧める。周囲の人が休暇を取得したら、お互い様とばかりバックアップを惜しまないようにしましょう。
 こうやって職場として休暇を取得する練習をしていくことで、休暇を取得することがお互い様であり、日常だという職場の雰囲気が出来てきます。

 従業員の中でも、「誰かに言ってほしかった」と思っていた人が同調してくれるかもしれません。そうなればこっちのものです。休暇をとる自分、集団を乱す方に向いていた注目が、会社に向かいます。視線が変わるのです。視線の変化が、仕事のやりやすさにもつながるでしょう。

■まとめ

 今回は、HSPの方のための有給休暇を取るための方法について考えてみました。
 会社は、会社自身の目的と従業員のポジション争いとが相まって、突出する人を拒み、排除してしまう傾向があります。
 それは人の持つ「恐れ」が原因であり、人が入れ替わっても生まれてしまう集団の癖のようなものだと私は思っています。
 だから、それをかいくぐって自分のポジションを確立し、有給休暇を取得するためには、集団の「恐れ」を解消するための努力を惜しまない姿勢を見せることが必要です。
 有給休暇取得の練習もそのひとつです。練習により、職場の人が日常業務に支障がないこと、成績に影響がないことが分かれば、「恐れ」が消え去ります。
 そうすれば、集団の中にいる人は安心し、手を貸してくれるようになります。
 でも、集団は安心すると暴走します。楽な方に走ってしまいがちなのです。そのためにムチも用意するのです。健全な緊張感が必要なのです。
 徐々に集団の中の自分のポジションが確立します。集団も恐れが解消されて、目的に向かって一丸となれる結束力も生まれます。
 有給休暇の取得は、個人の心身の健康にも集団の健康にもつながる、一挙両得なのです。
 今回の方法を取り入れていただき、多くのHSPの方が有給休暇を取って、心地よい仕事生活が送ってもらえれば嬉しいです。

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