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「繊細さん」ブーム~敏感な人の「青い鳥」はどこにいる?~

はじめに

メーテルリンクの「青い鳥」、この本を子どもの頃に読んだ方は多いかもしれません。

 チルチルとミチルの兄妹が、ベリリューヌという魔法使いの老婆に幸せをもたらす青い鳥を探してほしいと頼まれます。
 チルチルとミチルは寝ていた家を抜け出して、お供である犬のティロー、猫のティレット、パンや砂糖などと一緒に沢山の冒険を繰り広げます。
 チルチルとミチルは様々な場所で青い鳥を探し続けますが、なかなか見つかりません。

 敏感な気質の人にとって、「繊細さん」ブームが幸せをもたらす「青い鳥」だったのでしょうか。

 繊細さんブームとは一体何だったのか?
 そして敏感な気質を持つ私たちにとって、「繊細さん」ブームから何を学んだのでしょうか?
 今回は、それをお話してみたいと思います。

「繊細さん」ブームって?

 「繊細さん」は、高い感受性で周囲の環境の変化に敏感に反応する人を指す言葉です。この言葉は、同じく周囲の環境に敏感に反応するHSP(Highly Sensitive Person)とも関連しています。
 「繊細さん」という言葉は、2018年7月に出版された武田友紀氏の「「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本」により知られることとなりました。

 分かり易い言葉で自分のことを表現してくれるということで、SNSなどで大きな反響となりました。
 その後テレビに紹介されるなど一般の人にまで「繊細さん」という言葉が知られるようになり、一大ブームになりました。

繊細さんブームの意義

 繊細さんブームは、敏感な人の助けになりました。
 「繊細さん」という言葉を通じて自分の気質を認識でき、自己肯定感を高めることができました。
 また、自分の気質を「繊細さん」と表現できるようになりました。
 私たちは「繊細さん」という言葉を手に入れたことで、周囲に自分の気質を理解してもらえると希望をもてたのです。

 しかし、自身の気質を表現する手段が生まれ、周囲の認知度が高まったとしても、周囲の人が「繊細さん」に対し十分に配慮してくれるわけではありませんでした。
 元々「繊細さん」は性格、気質の特徴であり、それ以上でもそれ以下でもありません。
 だから周囲の人は、「繊細さん」も他の人と同じように周囲と折り合っていってほしいと思っているのです。
 だから、周囲から「繊細さん」と認識されるだけでは、自分の生きづらさは消えません。
 周りに配慮してほしい、お膳立てしてほしいと求めているだけでは、それが現実になることはないということを突きつけられたのです。

繊細さんブームの本質は「自己理解」

 確かに「繊細さん」ブームは、私たちの生きづらさを解消するための追い風になりました。
 繊細で生きづらさを感じやすいという「繊細さん」を周囲の人に知ってもらう一助にはなりました。
 しかし繊細さんブームの一番の成果は、自分の気質を理解する助けとなったことです。
 つまり、敏感な気質はデメリットだけではなく良い面もあるということ、そして繊細さんが沢山いて、社会の中でどういう立ち位置に置かれているかということを客観的に理解することが出来たことが大きいのです。

一歩前に踏み出そう

 このように「繊細さん」ブームの一番の成果は、自己理解が深まったことです。
 自分の気質をネガティブな側面だけではなく、冷静に正しく理解出来ることが一番の成果です。
 この自己理解から、自分は社会でどう立ち回っていくのか戦略を立てることが出来ます。
 自分の気質を冷静に正しく理解して始めて、自分が出来ることを考えられます。
 自分と同じ気質の人が上手くいっていない理由について考える。自分のことより冷静に、客観的に考えやすいかもしれません。
 こうやって周囲に対して一歩アクションを取ってみましょう。
 これを続けることで、人生が変わってきます。
 少しずつでも前に進んでいきましょう。

まとめ

 今回は「繊細さん」ブームが敏感な気質の人にとって後押しになった現状、そしてそれだけで生きづらさが解決するわけではないこと、深まった自己理解を使って自ら一歩前に進むことの重要性についてお話しました。
 「繊細さん」ブームを経て、社会環境は確実に敏感な気質の人に追い風になっています。この追い風を受けて自ら一歩前に進むのです。
 一歩前に進むことが出来たらそれが自信になります。更に一歩前に出る力になるでしょう。
 そうすることで生きづらさが少しずつ解消してくるはずです。

 チルチルとミチルの兄妹たちは、冒険の途中「幸福の花園」へ迷い込みます。
 そこで沢山の「幸福」たちに出会います。
 チルチルは、「幸福」から「ぼくのことを知らないの?」と笑われてしまいます。

「ぼくは、『きみの家のなかの幸福』だよ。ここにいる連中はみな、きみの家の中に住んでいる『幸福』たちだよ。」
「ぼくが笑ったり、歌ったりしても、きみは見もしないし、聞きもしないんだ。」
「でもこれからは、わけなく君はぼくたちを見つけることが出来るよ。」

 敏感な人は「繊細さん」ブームの中で、探していた青い鳥を見つけられませんでした。
 青い鳥を探す旅の行き着く先、私たち敏感な人は一体何を見て、何を感じるのでしょうか?
 チルチルとミチルの大冒険が、そのヒントになるかもしれません。

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