テニス部におけるプレー中の怪我(2つのタイプ)

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

テニス部で活動をしていると、プレー中にケガをすることがあります。こんなときの責任は、法的にはどのように考えればよいのでしょうか。本日は、①自分で治療しなければならないパターン、②ケガの原因を作った者に費用負担を求めるパターンの2つのタイプをご紹介します。

1 自分で治療しなければならないパターン

言い換えれば、治療にかかった費用を自分で負担するパターンです。

難しく考えることはありません。単純に、自分でコート上でスリップしてしまって転び、怪我をしてしまったような場合を想像してください。

このような場合、誰が悪いわけでもありません。そのような場合、法的には、「損害賠償責任を負う者がいない」状態になります。

そうすると、治療にかかる費用は自分で負担しなければならないわけです。

ちなみに、このような場面でも、「傷害保険」というものが使えることがあります。「傷害保険」とは、突発的な事情でケガをしてしまい、その原因が、内因的なもの(持病による発作とか、疲労骨折など)でない場合に、発動し、治療費のうち、通院費・手術費・入院費等を支払ってくれる保険です。

この保険に加入するためには、通常はあらかじめ保険加入契約をし、保険料を毎月(毎年)支払っておく必要があります。

なお、保険の対象となる人(「被保険者」といいます。)が、本人だけに限られているものもありますが、夫や妻、生計を共にしている親族などにも適用範囲が広がっている場合がありますので、お父さん・お母さんの保険が使えないかを確認するべきです。

2 ケガの原因を作った者に費用負担を求めるパターン

言い換えれば、治療にかかった費用をその原因を作った人に負担してもらうパターンです。

典型的には、ふざけてボールをぶつけたらケガをしたとか、ラケットで殴ったらケガをしたとかいう場面です(※良い子はマネしないでください)。

このような場合、法的には加害者が責任を負います。

民法709条には、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定されており、この条文が先の場面に適用されます。

ラケットで殴った加害者は、わざと(故意)やったわけです。「わざとではない」と言い訳をしても、少なくとも、人の近くでラケットを振り回す行為は、人の身体を傷つけないように注意しなければならない場面で、このような注意を怠っている(過失)わけですから、責任を負うことはほぼ間違いないでしょう。

そして、ラケットで殴られてケガをしなければ、病院に治療に行って治療費を支払う必要は全くなかった訳ですから、「病院までの交通費」と「治療費」は、上記行為「によって生じた」「損害」です(法的に、かっちょよく言うなら「因果関係がある損害」です。)。

したがって、加害者は、被害者の治療費、交通費などを賠償しなければならない義務を負います。

以上、プレー中のケガについて、法的な考え方2パターンでした。実は、この話、まだまだ奥が深いです。たとえば、お互い悪気はなくボールを追いかけたら、ぶつかってしまったとか、意図せず相手にボールがあたってしまったなどという場合に損害賠償責任が生じるのかという問題や、賠償責任を負う場合に、ケガでキャンセルしてしまった家族旅行の航空券代・ホテル代まで負担しなければならないのかという問題など、まだまだ様々な法的論点が含まれています(別記事にてまとめます)。

ですので、困ったことがあれば、自分で判断するより、専門家に相談してみてくださいね。

以上、弁護士の紙尾浩道でした。


記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。