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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第76回]


赤壁 礒部晴樹・画

赤壁

折戟沈沙鉄半銷    折戟(せつげき)沈沙 鉄 なかば銷(しょう)す
自将磨洗認前朝    おのずと 磨洗もて 前朝を認む
東風不興周郎便    東風 周郎のために 便せずんば
銅雀春深鎖二喬    銅雀 春深くして 二喬(にきょう)を鎖(とざ)さん

杜牧


折れて錆びた戟が 沙に埋まっていた
磨き洗うと 前朝時代のものだった
東風が吹かず 周瑜軍の火攻めが成功しなかったら
喬公の娘の美女ふたり
春深い銅雀台に 囲われてしまったことだろう

*戟=げき=刃が縦横に付いた、槍のような武器


三国志で有名な赤壁の古戦場にちなんだ詩です。
呉国の周瑜(しゅうゆ)が、曹操(そうそう)の大水軍に、
おりからの東風に恵まれて、火攻め、焼き討ちで
勝利しました。
もし負けていたら、春まっさかりの今ごろ、
ふたりの美女は曹操の銅雀臺中の人になっていたでしょう。

鎖すという、閉じ込められる感じを絵で表現したく、
画面の上下を白雲で覆い、閉塞感を出してみました。
多少は詩の雰囲気に近づいたでしょうか。







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