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[エッセイ] ラジコンヨット三つの楽しみ ──設計、製作、帆走


旧塗装のヨット、その後変更


私はラジコンヨットを楽しんでいます。
ディズニーランドとどっちが好きといわれたら、近くの公園の池で、ヨットで遊ぶ方が好きですね。
このヨット、ハル(船体)全長23cmという超ミニサイズで自作です。
私は数年前から大きな手術を3回しましたが、その退院の合間に作りました。
ステージ4の大腸がんで、大腸1回、肝臓2回切除しました。
人は命の危機にさらされると、人生を考えます。
自分が一番好きなこと、一番楽しいと思うことはなんだろうと考えました。
それをやらなくちゃ生きてる意味がない。
それがラジコンヨットだったのです。


新塗装のヨット


私は子供のころ、模型工作大好き少年でした。
ゴム動力の模型飛行機や木製潜水艦、ラジォ工作、エナメル線を巻いて作るモーターの工作・・・
接着剤セメダインの甘い匂い、半田が溶ける時のペーストのにおい・・・
とにかく模型さえつくっていれば楽しい少年だったのです。
ラジコンはエンジンの飛行機、グライダーから入りましたが、近くに飛ばせるような広場がなく、あまり飛ばす機会がありませんでした。
しかし近所の公園には大きな池がありました。
ここなら小さなヨットで遊べます。
以後の人生、残余の余生はここで楽しむことにしたのでした。
 
自宅から公園まで徒歩30分、自転車で15分ほどです。
ヨットは、できたら自転車で運びたい。
市販のヨットに手ごろなサイズがないので自作することにしました。
見回すとシャンプーの容器、ペットボトルなど船体候補がいろいろあります。
縦半分に切断すれば、魅力的なヨット形状になりそうです。
しかしいずれも、小さすぎたり、接着不可の材質だったりで、利用できませんでした。
結局、タミヤ模型が市販している、紙のように薄いプラ板から、切って作ることにしました。
 
いよいよ設計、製作です。
私はデザイン専門学校でCADも教えていましたので、設計製図は大好きです。
まず三面図を画きます。
横から、上から、そして前からの各図です。
これはデザイン作業と同じであり、素朴でかわいいイメージにしました。
かっこよく、スタイリッシュでシャープなイメージとは正反対です。
加工素材が木や発泡材料のように中身がつまったソリッド品なら、あとは要所要所の断面図があれば設計完了ですが、平面の板材加工の場合は、各パーツごとの平らにのばした展開図が必要になります。
この作業は多少頭を使うので楽しく、昔ならった図学が役に立ちました。
また内蔵部品の配置や、バッテリー交換のしやすさ、帆や舵を動かすシンプルな構造等、あれやこれや楽しいひとときでした。
次は製作ですが、いろいろと工法を考えました。
マストの取り付け部など、手順が間違うと手が入らない箇所など、それなりに緊張です。
帆は、駅ビル内のパン屋のビニール袋を利用しました。
このヨットは、背中のバックに入る大きさの段ボール箱に、帆を外して収納できます。


微風の中、ゆったり帆走


あとは池で楽しむだけ。
やり始めてわかったのですが、意外と良い風の日は少ないものです。
風のないべたなぎの日、強風で波立つ日、台風前の向きの定まらない落ち着かない風の日・・・
ほとんどの大人、子供はあまり関心がありません。
たまに話しかけてくるおやじがいます。
「それ、モーターで動いているんですか?」
「いや、風だけで動いているんです」
「池のまん中で風がなくなったら、どうするんですか?」
「そのうちまた吹いてきます」
定番の問答です。
くちぼそ釣り常連のおやじと仲良くなり、ワンカップを飲みながら午后のひとときを過ごす、充足の毎日です。

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