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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第65回]


送孟浩然 礒部晴樹・画


黄鶴楼送孟        黄鶴楼にて
浩然之広陵        孟浩然が広陵にゆくを送る

故人西辞黄鶴楼      故人 西のかた黄鶴楼を辞し
煙花三月下揚州      煙花三月 揚州にくだる
孤帆遠影碧空尽      孤帆の遠影 碧空に尽き
唯見長江天際流      唯だ見る 長江天際に流るを

李白

友は 西の黄鶴楼にわかれをつげ
霞たつ花の三月 揚州に下っていった
ポツンとひとつ 帆影が碧空のなかに消えていく
あとはただ長江が 天の果てまで流れていくだけだ


*いくつかある李白の送別の詩のひとつです。
後半2句、好きです。

だいぶ以前の話ですが、老冒険家斎藤実さんの、単独無寄港西回り、
ヨット世界一周の出航というのを、三浦半島のヨットハーバーで、
見送り(見物)したことがありました。
大勢見送りのいる中、ふらりと動き出したヨットは、
港内を小さいエンジンでゆっくり進んでいきましたが、
「もう帰ってこなくていいぞー」
などと、ヨット仲間が笑って声をかけ、
悲壮感がなかったのが印象的でした。
その後、南米大陸最南端のプンタアレナスに、一年ほど
足止めをくらうのですが、この話は長くなるので
やめておきます。






以前、横浜港の大桟橋で、たまたまクルーズ船飛鳥二号の
出航風景に出くわしたことがありました。
電車や飛行機とちがって、船はゆっくり遠ざかっていきます。
港の大きなブリッジを超えて、消え去るまで、
たっぷり時間がありました。
まして李白の時代、帆船の別れは心にしみるものが
あったことでしょう。







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