見出し画像

0512


大好きなバンドのボーカルが亡くなった。

わたしが彼の死を知ったのは、訃報が発表されてから数時間後のこと。ちょうど5限が始まった直後で、けれど授業なんて何も耳に入らず、わたしは彼が亡くなったことを受け入れられずにいた。脳が理解を拒んでいた。

嘘でしょ。なんで?2月にワンマン行ったときはあんなに元気だったのに……
わたしの目の前で、全力で歌を、言葉を、届けてくれたのに。

現実を受け入れられないまま授業をやり過ごし、やる気なんて何も起きなかったけれどサークルへ向かった。家に帰っても、きっと悲しみに沈むだけだ。少しでも気を紛らわせたかった。その作戦は少しだけ成功して、友人や後輩との何気ない会話が、わたしの心を保っていた。けれど現実から目を背けながらも、彼のことは頭から離れなかった。

家に帰って、彼が作った音楽を聴きながらお風呂に入った。ここに至ってもまだ、わたしは彼の死を受け入れることができずにいた。いつもと同じ音源を聴き、ああこの曲ライブでいつも歌ってたな、ライブ楽しかった、もうあの歌声は聴けないのか、もっと聴きたかった。お風呂から上がって髪を乾かしているとき、突然彼がもういない悲しみに真正面から襲われて、うずくまってひとりで泣いた。



生きてまたどこかでって言ったじゃん、いなくならないでよねえ、お願いだから帰ってきて、、


なにかの間違いであればいいのにと願いながら眠りに落ち、朝起きてSNSを開く。けれどネットには、彼がもうこの世にいないことを知らしめる情報ばかりが並んでいた。分かってはいたけれど、悲しくなった。

彼がこの世からいなくなってもわたしの世界は何も変わらず進む。やらなきゃいけないことは山積みだし、課題の締め切りは待ってくれないし、今日も明日も大学に行かなければいけない。そのことが、まるで世界が彼を必要としていないみたいに思えて、なんだかとても悲しくて、わたしは彼のことを忘れてはいけないんだと思った。

気持ちの整理なんて全くついてない。彼の曲を聴いては泣きそうになって、写真フォルダに残るライブでの動画や写真を見ては彼の生きた証を絶対忘れないと誓い、SNSを見ては彼の死が間違いなく事実であることに打ちひしがれている。いつか立ち直らなきゃいけないのは分かっているから、絶対前に進むから、今は彼がもういないことを悲しんでいていいよね。

あなたの作った音楽に、言葉に、全力で歌を届ける姿に、何度も救われました。きっとこれからも。
ずっとずっと大好きです、ありがとう。

わたしは、まだそっちには行かないよ。



最後に、唯一無二の最高にかっこいいロックスターが作った音楽を。よかったら聴いてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?