ザンキゼロ男性とデフレとインフレ
こちらの記事に対する感想になります。
ザンキゼロ男性
詳細は、白饅頭氏のマガジン記事を参照してもらいたいが、ザンキゼロ男性について、簡単にまとめてみる。
残機とは、シューティングゲームにおいて、あと何回死ねるかという回数を表すものだ。”残存機体数” 略して ”残機” である。
残機ゼロになるとゲームオーバーになる。
普通の男性にとって、ひとりの女性と付き合うところまでもっていくのは、めちゃくちゃ労力を消費する。
努力をして、がんばって、いやな思いをして、カネと精神力を使って、血と汗と涙を流し、ようやっと付き合ってみたら、うまくいかなかった。( or ぜんぜん楽しくなかった or しんどいだけだった or 家でアニメ見てた方が幸福度が高い etc.)
このような失敗を繰り返すと、男性は、こんなクソゲーやってられっか!となってしまう。
ひとりの女性と付き合う、結婚に至る直前までもっていく、この労力をかけれる回数を、残機と表現しているのだ。
普通の男性の残機が3であるとすると、女性と付き合って結婚にいたるまで、3回は失敗することができる。
逆に、3回失敗すると、残機がゼロになってしまい、男性は結婚をあきらめてしまう。
ザンキゼロ男性が増えればインフレになる?
コメント欄より、引用
>wis
>1人で生きてくと決めたらキツいハードワークな仕事からも降りれるというメリットがあるぞ。
これはその通りだ。
人生の3大支出は、”教育”、”住宅”、”老後”である。
ザンキゼロ男性にとっては、”教育”の負担はゼロだ。
”住宅”と”老後”の負担は、半分以下に減る。
その結果、ザンキゼロ男性の生涯支出は、既婚男性の半分程度になる。
であるならば、ザンキゼロ男性に必要となる労働も半分程度になるはずだ。
静かなFireムーブメントが起こる。
>1人で生きてくと決めたらキツいハードワークな仕事からも降りれるというメリットがあるぞ。
の通り、ザンキゼロ男性は、ハードワークから降りるだろう。
日本社会全体で、供給される労働力は減り、一方で需要はそのままなのでインフレが起きるに違いない。
だが、ここで気がついた。
ザンキゼロ男性が増えれば、需要も減るのである。特に、”教育”と”住宅”と”老後”に関する需要が減る。
ぱっと見は、需要と供給が釣り合うようにみえる。
一方で、ザンキゼロ男性が増えれば、直感的にはインフレになりそうな気がする。
この点をもう少し深く考察してみる。
やっぱり、ザンキゼロ男性が増えれば、”インフレ” が起きる
ここでは、”独身男性”と”ザンキゼロ男性”を分けて考える。
まず、”独身男性”が存在している。
この”独身男性”が、婚活や女性と付き合うことを通してツラい目にあって、結婚を完全にあきらめた結果、30~40代で”ザンキゼロ男性” に進化すると考えてほしい。
バブル世代までは、昭和の国民皆婚時代のなごりで、ザンキゼロ男性はほとんど存在していなかった。
ザンキゼロ男性が増えていったのは、やはり氷河期世代以降になる。ちょうど、氷河期世代から未婚率が急上昇している。
氷河期世代は、30代~40代までは ”独身男性”であった。
独身男性は、人生の3大支出 ”教育”、”住宅”、”老後” について、既婚男性と比較して支出が半分になる。
一方で、独身男性である間は、結婚をする可能性がある。だから、独身男性は、既婚男性になるつもりで一生懸命はたらく。ザンキゼロが確定するまでは、一生懸命働く。
独身男性が、ハードワークから撤退するのは、ザンキゼロが確定する、30代後半から40代にかけてとなる。
氷河期世代のメジャーな年齢を2024年時点で、50歳としよう。氷河期世代のザンキゼロが確定するのは、2014年 氷河期世代が40歳のときだ。
つまり、2014年までは、独身男性は大量に存在していても、ザンキゼロ男性はほとんど存在していなかったと考えられる。
氷河期世代の年齢からして、2010年代から加速度的にザンキゼロ男性が増加したことになる。
氷河期世代が”独身男性” だった時代は、すべての男性がハードワークにコミットするため、労働力は潤沢に供給される。
一方で、未婚率上昇により、独身男性が増加しているため、”教育” や ”住宅”の需要は減少傾向を示す。
総体として、需要は減少しつつ、供給が多い、デフレの時代が発生する。
1990年から2020年まで継続したデフレは、氷河期世代以降の未婚率が急上昇したとこで、人生の3大支出、”教育”、”住宅”、”老後” に要する需要が急減したことが原因であった。
だが、2014年から、氷河期世代の年齢が40歳を超えてくる。40歳を超えると独身男性たちが結婚を完全にあきらめて”ザンキゼロ男性”に進化する。
2014年以降、人数の多い氷河期世代の ”独身男性” が ”ザンキゼロ男性” に進化し、ハードワークからの撤退を開始したのである。
日本人は、働かない
1980年代まで、日本人はワーカホリックや、働きアリなどと言われていた。
だが、これからの日本人は働かなくなるだろう。
Google Trend で検索してみると、早期リタイアが2010年ごろから人気になっていった様子がわかる。(ちょうど、氷河期世代の独身男性がザンキゼロ男性に進化し始めたころだ)
最近、2022年以降、早期リタイアが減少傾向にあるのは、インフレにより、早期リタイアに必要な資産の計算が難しくなったからだろう。
だがしかし、早期リタイアしないまでも、働き方改革に乗じてハードワークから撤退するザンキゼロ男性が増加することは間違いない。
なぜなら、ザンキゼロ男性は、既婚男性と比較しておカネを使うライフイベントが存在しないため、おカネを使うタイミングがないからである。
ザンキゼロ男性は、すべてをあきらめて、仙人のようになるという。
当然ながら、ガツガツ働くことはない。
仕事をやめていなくとも、労働力の供給を減らすのである。そしてこの労働力の削減は、働き方改革と子育て支援に紛れて見えづらくなっている。
マスメディアなどに取り上げられる機会はなくとも、カネをたくさんもってたってしょうがないよな、と全てを諦めがちなザンキゼロ男性は、熱心に働かなくなる。
ザンキゼロ男性の資産
ザンキゼロ男性は、支出が少ない。
人生の3大支出は、”教育”、”住宅”、”老後”である。
さらに、保険料などがここに加わる。
独身であれば、教育費はゼロ、住宅は独身用の物件で家賃も安い、老後は独身男性は早く死ぬし、そもそも基礎的な生活費が少ないので、必要とされる老後費用が相対的に少ない。
そして、生命保険など、過剰な保険も不要なのである。
つまり、独身男性は、ザンキゼロが確定するまでの30代後半~40代にかけて、早期リタイアは無理でも、長期間無職になっても困ることがない資産を形成しているのである。
むしろ、ザンキゼロ男性が心配すべきは資産が多すぎて、死ぬまでに有効に使いきれない可能性であろう。
当然ながら、ザンキゼロ男性の働く意欲は激減するだろう。
インフレ
独身男性は、既婚男性と比較して、消費をしない。
独身男性が大量に発生すると、需要が縮小し、デフレが発生する。
その一方で、日本経済不調の原因をデフレに求めた大学の先生たちと、いっこうに上昇しない物価に後押しされて、日本銀行は異次元の金融緩和を開始した。
これにより、日本政府は予算使い放題のボーナスタイムに入る。
日本政府は、1300兆円の国債を発行し、その半分以上を日銀が買い入れている。要するに、700兆円の現金を印刷してばらまいている状態を作り上げた。
通常、大規模に国債を発行すると需要が増加し、インフレが発生する。
だが、日本では1990年代から大量の独身男性が発生していたため、異次元のデフレ圧力が発生しており、異次元の金融緩和をしてもインフレにならなかった。
日本でインフレが発生しないためには、独身男性が増加し続ける必要があった。ところが、日本では、独身男性の増加に伴って少子化が進んでいた。子供の数が少なくなっている。
そして、労働力を気前よく供給してくれるのは、ザンキゼロになる前の独身男性である。独身男性が進化して、ザンキゼロ男性になると労働力の供給を絞りだす。
これから、異次元の労働力不足が発生する。
少子化による労働力不足に加えて、ザンキゼロ男性がハードワークから撤退することによる、労働力減少が重なるのである。
労働力が不足すると、財・サービスの供給が不足するから、価格が上がる。つまりインフレになる。
トランザムの重ね掛け
トランザムとは、ガンダムooに登場するシステムである。トランザムを使うとBGMが変化し、機体性能が一時的に3倍になる。ただし、トランザムを使用して一定期間をすぎると機体性能が著しく低下する。
マンガやアニメで定番の、時間制限・制約付きのパワーアップである。
同じようなシステムに、ドラゴンボールの界王拳、ワンピースのギア3、などがある。
1990年から2020年までの日本経済は、失われた30年などと言われている。
だが、実際には、トランザムの重ね掛けを使用していた。極端なドーピングをした状態であった。
第一のトランザムは、国債の大量発行である。
日本国債の発行残高は、1300兆円であり、GDP比 250%を超えている。
毎年毎年、税収の数十パーセントの国債を発行して予算を組んでいるのだから、あきらかに身の丈以上の消費をしているといえる。
第二のトランザムが、独身男性の増加である。
独身男性を増加させることにより、需要を減少させ、労働供給を増加させた。
独身男性は、既婚者と比較して家・教育・老後・保険など消費が少ない割りに、労働供給力は既婚者と同じだ。だから独身男性を増やすことで、一時的にデフレ状態をつくることができる。
2020年ごろにトランザムの終焉があきらかになった。
コロナショックの副作用?
ロシア=ウクライナ戦争の副作用?
きっかけは定かではないが、ついにインフレが発生しだした。
ついに、日本経済のトランザムが切れたようだ。
第一のトランザムは、インフレを抑えるために、国債の日銀引き受けをやめる、つまり国債発行を絞らなければならなくなったことで終焉をむかえる。
第二のトランザムは、氷河期世代の独身男性が、結婚をあきらめ ”ザンキゼロ男性”に進化することで、ハードワークから撤退することで終焉を迎える。ザンキゼロ男性が、労働力の供給を、消費実態にあわせて絞り出す。
トランザムの重ね掛けが終了することで、日本社会の経済バランスは著しく変化する。
ただでさえ、危険なトランザムの重ね掛けをしたのである。
日本経済は、今後数十年にわたってトランザムの反動に苦しむことになる。
それこそ、失われた30年などと、嘆いていたころを懐かしむ程度には、苦しむことになるだろう。
1990年から2020年までは、日本社会がもっとも豊かだった時だと歴史に刻まれることだろう。
歴史には連続性がある。
日本人の生活水準は、ぎゃく放物線を描くだろう。
1945~1990:復興と高度経済成長
1990~2020:高原
2020~20XX:長期的衰退
日本社会はトランザムの重ね掛けで何をしたか?
日本は、トランザムの重ね掛けで得た力を何につかったのだろうか?
それは、平均寿命をどこまで延長できるか、人類史にのこるギネスに挑戦をしたのである。
日本の平均寿命は世界一である。
特に女性の平均寿命は、下のグラフでみたらわかるように2位以下を突き放してダントツの世界一である。
1980年代以降、日本の高齢者は世界一長生きして、世界一よい暮らしをしてきた。
その代わりに、年間100兆円を超える社会保障費が費やされている。
日本の社会保障費は、円:ドル相場に依存するが、ざっくりと、アメリカの軍事費と同程度である。
無茶してる。
そうとうな、無理をしている。
まとめ
独身男性は、教育・住宅・老後 の人生の3大支出について、既婚男性と比較して半分程度の消費しかしない。
未婚率を上げて、独身男性を増加させることで、需要を減らし、労働力供給を維持する、デフレ状態を作り出すことができる。
その後、独身男性が完全に結婚をあきらめて、ザンキゼロ男性になると、ハードワークからの撤退を開始する。労働力の供給を絞るようになる。
その結果、労働力の供給が減り、いっぽうでザンキゼロ男性が蓄えた貯金を使うため、こんどはインフレが発生する。
1990年から2020年にかけて、30年間のデフレ時代と、2020年以降のインフレの発生は、氷河期世代の独身男性からザンキゼロ男性への相転移を考えるとうまく説明できる。
今後の日本では、
・止まらないインフレ
・削減される一方の高齢者福祉
・増税
が起きるだろう。
今後日本で発生することは、未婚率を上げたことによる複雑でダイナミックな変動の帰結である。
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