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世にも奇妙な中小企業会計

最近、中小企業診断士の研究会で「世にも奇妙な中小企業会計」と題して3回ほど立て続けて登壇する機会がありました(登壇と言っても全部Zoomですが)。

何年か前から、ほぼ同様の内容で話す機会はあったので、今年は診断士の同期がしっかりと「世にも奇妙な中小企業会計」とタイトルをつけてくれて、コンテンツとしてまとめられたと思います。

自分が経理担当として、また、支援先で、変な会計処理をいくつも見てきました。それは法律違反とは言えないまでも「なんじゃこれは」と思うことがたびたびあったのです。

粉飾じゃないか、と言われると否定しきれない処理もあります。中小企業の場合、粉飾(もどき)をする大きな理由は、第一に利益を減らして税金を減らすためです。第二に利益を増やすためです。業績を良く見せないと入札に不利であるとか金融機関からの借入が難しくなるからです。ただ、もう一つ理由はあると感じていて、それが「知らないから」です。深層心理としては第一か第二の理由に結びつくのでしょうが、なぜそういう操作をしてはまずいのか知らないから平気でやっているのだろうと思う機会がいくつもありました。

正直、目をつぶっても良いと思う例もあるのですが、さすがにこれはまずいだろう思うものあります。まずいというのは、それでは正しく診断ができなくなるという意味です。

たとえば、業績の悪化によって役員報酬の一部をカットすることになった場合。カットされた分を貸付金や仮払金で支払っておいて、業績が回復したら役員報酬を増額してそこから返済してもらうような形をとっていた企業がありました。この場合、本来、人件費として費用になるものが、貸付金や仮払金として資産になってしまいます。これではまっとくな財務分析などできるはずがありません。

大企業でまっとうな会計処理を当たり前にしてきた人から見ると、信じられないことがあると思います。そもそも変な処理をしているとまったく気づかず、提出された決算書をまともに信じて、それに基づいて診断や支援をしても的外れになってしまうでしょう。ですから、中小企業ではこうした処理もあり得るのですよ、という事例としてさまざま提示させていただきました。
ただ僕らは監察官でも査察官でもありませんから、変な処理を見つけて糾弾するのが仕事ではありません。必要なことは、より正確なその企業の実態をつかみ、それに基づいて支援していくことです。そのために、いわゆる「粉飾」を見抜く目をもっていた方が良いと考えています。そして、本当にその企業に寄り添うなら、こうした短期的な小手先のごまかしは長い目で見たとき、会社のためにはならない、とちゃんと伝えられる診断士でありたいとの想いでこのコンテンツは作っています。


あまり具体例は書けない内容ですが(苦笑) お声がけいただければお話しできる場を作れるかもしれません。


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