見出し画像

SDGs雑感~「中小企業のSDGs経営推進マニュアルに関する調査研究」から~

11月5日、「中小企業経営診断シンポジウム」へ参加してきました。中小企業診断士協会が行っている一番大きなイベントです。
昨年、有志と取り組んだ「中小企業のSDGs経営推進マニュアルに関する調査研究」について発表の機会をいただいたので、別に僕が発表者なわけではないですが、せっかくなので4年ぶりにフル参加することにしました。
調査研究についてはこちらから


⇒ 「中小企業のSDGs経営推進マニュアルに関する調査研究」
僕は第1章を担当しています。

ということで今回は、SDGsにまつわる雑感を徒然に書いてみます。SDGsそのものについての説明は書かないので、興味がある方は、上記「中小企業のSDGs経営推進マニュアルに関する調査研究」の第1章を読んでくださいませ。

■SDGsの認知度

昨年くらいから日本におけるSDGsの認知度は急速に上がってきています。SDGs関連の書籍がどのくらい出版されているか調べようと思ったのですがよくわからなくなりました。特集された雑誌やムック本を含めると100冊以上は刊行されているようです。

しかし、日本ではSDGsが従来のCSR(慈善事業や寄付活動)として捉えられている節があります。だからコロナ禍において「SDGsなんて言ってられない。まずは目先の利益を……」となってしまいがちなのだと思います。実際はSDGsを誤認しているだけなのですが。端的に言ってしまえば「社業を通して社会課題を解決する(ことで利益を得る)」がSDGsで企業に求められていることです。

■社会にとって善き企業


アメリカではすでに「社会にとって善き企業」でないと企業価値を高く評価してもらえなくなってきたと思います。2019年のビジネス・ラウンドテーブルにおける「株主資本主義」との決別、「ステークホルダー資本主義」への転換の宣言によってこの流れは決定的になりました。多くの場合、アメリカ的経営に追随する日本企業も同じような取組みをしていくでしょう。

驚いたのは「アメリカ企業も日本的経営に目覚めた」と捉えている人が多かったことです。渋沢栄一や「三方良し」の精神などを思い浮かべたのだと思いますが、1990年代半ば以降の日本は、アメリカ以上に「株主資本主義」「マーケット至上主義」だったと思います。象徴が「小泉構造改革」なわけです。そして今なお、その中心にいた人物が政財界の中心に跋扈しているのはいまだに日本が「株主資本主義」「マーケット至上主義」である証だと思います。また、2019年に突然、「ステークホルダー資本主義」に転換したと捉えている人も多かったのにも驚きました。マイケル・ポーターがCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)を提唱したのが2011年、そのバックにあると言われるネスレがCSV活動を具体的に始めたのは2006年なわけで、ある日突然、「ステークホルダー資本主義」へ転換したわけではありません。

かように、日本におけるSDGs(やESG、CSVなど)の認識はおぼつかないものだと思うのですが、さらに、SDGsがCO2の削減など環境問題と混同されている節があります。もちろん環境問題も大切です。しかし、SDGsには17の目標が掲げられていて、それはいわゆる「環境」問題だけではなりません。ジェンダーの問題も教育の問題も貧困の問題もあるのです。

■SDGsを経営に埋め込む

SDGs経営を謳う大企業の社員が、SDGsバッチを誇らしげに胸につけながら内実はなにもわかっていない、上から言われたからバッチをつけているだけ。企業のイメージアップのためだけにSDGsを使う、いわゆるSDGsウオッシュな企業を多々見かけます。放置しておくとバブル期のメセナ活動と同じように、いつの間にか下火になってしまう恐れもあると考えています。そして、SDGsへの取り組みが下火になれば、メセナの時と違い世界のマーケットから日本が取り残されるだろうと危惧しています。

それでも大企業、上場企業はマーケットからの圧力があるのでいつかは気づき、早かれ遅かれ取り組みを始めると思います。しかし、中小企業はどうなのか。テーマが壮大すぎて自分たちとは関係ないと思いがちですが、そんなことはありません。大企業のサプライチェーンの一部を担っていれば、大企業と同じ対応は求められます。なにより、より地域に密着している中小企業のほうがSDGsとの親和性は高いとも言えるのです。

SDGsが「社業を通して社会問題を解決する」のであれば、経営理念と密接に関連してきますし、経営戦略とも大きく関わってきます。ですから、SDGsをどう経営に実装するか、埋め込んでいけるか。その一助になることを目指して、調査研究レポートを作成しました。

企業内診断士が取り組むには大きすぎるテーマのように感じられるかもしれません。しかし、目標は大きくても、やることは現場レベルからの積み上げです。この調査研究レポートを活用し、ブラッシュアップしながら、少しでも前に進めるように精進していきたいと思います。

<SDGsに関する入門書です>
他にも良い本はありますが、入門書としてはこちらがお薦めかなあ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?