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部門最適の総和は全体最適にはならない

とある企業の幹部会議に参加させてもらったときのこと。1枚のペーパーが配られ、経営企画部の責任者が次のように言われました。

「各部門長は、明後日までの来期のKGI(Key Goal Indicator)を設定して、私まで提出してください」

僕は正直、何を言われているのはわかりませんでした。全社の目標(なりKGIなり)を提示しないで、各部門にゴール設定をさせてどうするのか、と思ったのです。もしかすると僕が知らないだけで、すでに全社目標は周知されているのかもしれない、と考えたのですが、違っていました。

「全社目標はどうなってるの?」
という質問が飛んでいたからです。

答えは「売上○○億円です」。続いて「より具体的には、皆さんから提出してもらうKGIを見て、調整しながら決めていきます。現場の声は大事ですから」でした。僕は目眩がしたのですが……

会社の向かう方向を示さないまま、各部門(現場)にKGIを決められるのか、僕は疑問に思います。もし決めたとしてもそれは、各部門にとって都合の良いKGIであって、それを混ぜ合わせても、全社にとって都合の良いKGIができあがるとは思えません。

それどころか、各部門に目標を立てさせ、それを並べて「これが我が社の目標です」とやるのは最低最悪だ、と『良い戦略、悪い戦略』に書いてありました。というか、目標を扱った(経営)戦略の本には同じようなことが述べられているでしょう。


僕は以前、こんな文章を書いています。

「戦略を成功させるために戦術がある」
と僕は考えています。(そして戦略は理念を達成するためにある)

日本の企業組織になぞらえて言えば
「取締役(経営陣)が戦略を立て、執行役員が戦略を達成するための戦術を考え執行する」
になります、大雑把に言うと。

「いや、現場の声が大事で、乖離した目標を立てても仕方がない」
との声も聞きましたが、何か間違っていると感じます。トップダウンとボトムアップのあり方を勘違いしているとしか思えません。

普段から現場の状況を把握しておくのは大事です。把握するために話をよく聞く必要もあるでしょう。そして、把握した現場の状況を踏まえた戦略を立てなければ、その戦略は絵に描いた餅です。しかし、先に現場に戦術を考えさせて、それを足しあわせ、混ぜ合わせて戦略を作るというのは、ベクトルの向きが完全に逆です。

現場にとって最適である目標を足しあわせても会社全体にとっての最適にはなりません。

日本では「戦略」と「戦術」を意識して使い分ける人が少ない。漢字で見ると似たような言葉に思えるのでしょうが、英語では“strategy / tactics”です。明らかに違う言葉です。ごちゃごちゃにすることなく、考えていかないと、せっかくの時間が無駄になりかねません。

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