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【書評】捏造の科学者 STAP細胞事件

科学には疎いこともあって時間をかけて少しずつ読みました。細かい内容はわからないところもありますが、着実は取材を積み上げて事実を解明していこうとする過程はよくわかりました。その意味では、非常にわかりやすかったです。

STAP細胞が発表され、騒動になった初期、僕自身、小保方氏を引きずり下ろそうとする何らかの圧力が働いているのではないか、と考えていた時期がありました。

政治面や経済面ではそう簡単に陰謀論に巻き込まれない自信があるのですが、自然科学の面では陰謀論とは言わないまでも、自分が信じたい事象だけをつなぎ合わせて考えてしまうのだと痛切に感じた事件でもありました。結局、一定の知識がないと、「これぞ隠された事実」「教科書では教えない真実」などというキャッチーな言葉に引っかかってしまうのだと思います。そう感じていたことを読みながら思いだしていました。

最近、Twitterで新聞記者も博士課程を出た方がいいのでは、という論争もどきがありました。現場の記者からそんなものはいらない、的な意見が多くてびっくりしたのですが、記者の専門性については程度問題だと思います。著者の須田さんが、理系の大学院(修士)まで修了していることが本書のわかりやすさ、追求の的確さにつながっていると思います。須田さんは物理学専攻だそうですので、本事件の分野とは直接関係はありません。しかしおそらくは、科学者が話すことを理解でき、あるいは自分が理解できていないことが何かを理解できるのだと思います。だから、的確な取材と検証ができ、自然科学にド素人な僕でも理解できる内容に仕上がっているのだと思いました。

最後の方に、小保方氏の責任、理研のガバナンスの問題点とともに、もっと大きな問題点に言及されていました。それは、行政の観点、経営の観点としても僕自身が問題だと考えていることと一致します。どうやらその点は、共著で出された

に書かれているようなので、次に読んでみようと思います。

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