見出し画像

「オリジナリティ」ってなんですか?

中小企業診断士の世界には「プロコン塾(プロフェッショナルコンサルタント養成塾)」がかなりの数、存在します。東京協会中央支部では「マスターコース」とも呼ばれています。

僕も以前、受講していました。東京協会城北支部の「城北プロコン塾」です。このときの経験をもとに、当リレーブログでもこんな記事を書きました。

さて、城北プロコン塾の大きな特色が「卒業レポートを書く」ことです。ほとんどのプロコン塾ではプレゼンが重視されているのに対して、「書く」を重視しています。いろいろ議論はありますが、中小企業診断士にとって「書く」はとても大切なスキルです。取材記事を執筆するなど直接的な仕事だけでなく、企業診断のレポートをテキストにまとめる、改善策をレポートにまとめる、など、プレゼンだけでは終わらない部分を抱えています。

この「卒業レポート」を書くにあたり、強く言われていたことがあります。それが「オリジナリティを出せ」でした。評価もオリジナリティがあるかどうか重視すると言われていたのです。

なるほどと思いつつ、僕は戸惑いました。「さて、オリジナリティとはなんだろうか?」と考えたわけです。僕だけではありません。同期には同じように思っていた人がいましたし、その後、事務局で関わった下の代にも同じ思いをしている人がいたのでした。中には必要以上にオリジナリティを神秘的に考えてしまい
「オリジナリティ=全くの0から新説を唱えること」
と捉えてしまう人もいました。こんな風に捉えては、よほどの天才ではない限り、オリジナリティなど発揮できないでしょう。

■オリジナリティとは差異である

自分が当事者であった頃は忘れていたのですが、事務局として下の代の受講生と接する中で、思い出した言葉です。最初に知ったのは、遥洋子さんの『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』の中でした。

むろん、もともとは上野千鶴子さんの言葉です。

差異とは、「すでに知られていることと、自分の感じたこと、考えたこととの差」です。その差の中にこそオリジナリティの芽がある。わかりやすいように大胆に言ってしまえば、すでに知られていることに新しい何かを付け加えられれば、その新しい何かが「オリジナリティ」になるのです。

■オリジナリティは情報の真空地帯には発生しない

言うのは簡単ですが、実際はそれほど簡単な話ではありません。まず、違和感を覚えられる程度には、自分なりの考え方、ものの見方をもっていないといけません。その上で、「すでに知られていることを知る」ことが必要です。知らなければ違和感を覚えた差を認識することもできません。

オリジナリティは情報の真空地帯には発生しない。オリジナリティとはすでに知られている情報からの「差異」を意味するが、「すでに知られていること」が何か、を知らなければ、何が「差異」であるかを知ることもできないからだ。

〈わたし〉のメタ社会学

さらに、その差異を言葉にして他人に伝わるようにしなくてはいけません。直観を論理に文節していかなくてはいけないのです。

いま頃、なぜこんなことをまた思い出したかというと、大学院生として修士論文(課題研究レポート)を書くにあたり、こんな大事なことを忘れていたことに気づいたからです。

なかなか論文が進まないのは、大学院進学を勤務先に認めさせるために便宜で決めたはずの研究計画書のテーマにとらわれて、自分が本当に感じている違和感と向き合っていない気がしています。だから先行研究を読んでも「勉強になった」で終わってしまいます。

■「いまさら」と言っているから……

勉強するならそれでいいですが、これでは「研究」にならない。いくら書いても論文にはなりません。

すでに3年目を迎えていて、「いまさら」そこからやるのか、という気持ちもありますが、いまさらって言っていてはいつまで経っても良いものはできないので、いまからでもいい、気がついたところでやり直したいと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?