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父とタケノコとサバの水煮缶


タケノコとサバの水煮缶なんて言ったら、わかる人にはわかってしまうであろう。わたしは海なし県の出身である。

わたしの故郷にはタケノコとサバの水煮缶を具材にしたお味噌汁があって、これが非常に美味しい。これが郷土の味であって全国的にまったく無名だと知ったのは、だいぶ大人になってからだ。

作り方はほんとに簡単で、沸騰したお湯にサバの水煮缶(味噌煮缶とかでもよい)を汁ごとと、灰汁抜き済の刻んだタケノコを入れて、あとはお好みでネギを加え、お味噌をとくだけ。
県民以外は抵抗感がある見た目らしいが、何度も言う。これは本当に美味しい。県民以外もぜひ試してほしい。


それでなんでそんな話になったかというと、わたしの父である。
年齢は知らないが70代ぐらい。
関係ないが、田舎の超高齢社会は深刻で、70代の父が80代の人をお年寄りと呼んだりする。お前もお年寄りじゃんかよ、とわたしは内心思っているのだが(言わない)、たぶん田舎の社会的には?あるいは父の中では、地域の若手エースぐらいの扱いだ。

そんな父がいつの頃からか、畑で採れた野菜などを段ボールに詰めて送ってくるようになった。はじめは遠慮がちに。万遍なく消費されていると知ってから現在は、ほぼ事後報告で野菜が届く。

だいたいは父が畑で育てた旬の野菜で、あとは山で採れた山菜や、道の駅で買った果物や、社会福祉事務所で購入した食品が中身である。

共同購入で買ったサバの水煮缶やイワシ缶や鮭缶。

母にはいまいち不人気の手作りジャム。

買ったけど食べてなかったお煎餅。

謎の大袋の茶葉。


最新のお届けものは採れたばかりの春の山菜で、あずきな、こごみ、山椒、うるい、ニラ、蕗、たらの芽、椎茸が入っていた。

これが最近、どんどん頻度があがっている。

以前は年に2〜3回ほど届く間隔だったが、コロナ禍に入ってからは月に1回、今年に入ってからはほぼ隔週である。

何故こんなに届くのかというと、たぶん彼が我が家の経済状況を心配しているからなのだろう。


4人姉妹の次女(わたし)は昨年いっぱいで会社を辞め、あげく、もう勤めないと言い出した。

11年勤めた魚屋は今までの最長だったし、本人だって定年まで勤めるつもりだったんだから、離れて暮らす父だってそりゃ驚いたろう。

新卒から公務員として勤め、定年後も再雇用制度を使って働いていた仕事人の父からしたら、理解に苦しむ感じなんじゃなかろうか。

でもまぁ直接的に否定される事はない。


ただ野菜の届く頻度があがるだけだ。


わたしは現在、子育て中。

こどもがきちんとご飯を食べ、安心できる場所で育ち、可能であれば、いろんな経験をさせてあげたい。

せっかく我が家に生まれてきてくれて、縁あって家族になったのだから、楽しく過ごせる場と、自分の成長を自分で認めて褒めてあげられる肯定感、みたいなものは育まれてほしいなぁと思っている。


だがしかし共働きの片方(わたし)の収入が激落ちで家計は火の車である。


自営業になってからの残高の減るスピードが早過ぎて、いちいち悩んでいたけど悩んでも仕方ないと最近は開き直ってしまって、どうにかなるといいなぁというか、どうにかしないと生きていけないけど、未来に希望を託して先行投資ばかりしている状態。

さぁペイできる日は来るのか…!



どうにかなるかなぁ


いや、どうにかするんですよ。


なんだか全部おもしろくなってきた。


そんなここ最近。



そろそろタケノコの時期かな。



サバ缶が入っていたら、またお味噌汁ができるな。


父からの宅急便は増える一方である。


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