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大好きだった自分を、取り戻しに

今月の初めくらいからだったかな、やたら、YouTubeで吹奏楽の動画を見ている、というか聴いている。なんだか無性にいろんな曲が聴きたくて。そして、やたら楽器に、フルートに触れたくなっている自分に気づいた。

フルートとの出会いは中学生の時。吹奏楽部に入って3年間、フルートとピッコロを吹いていた。フルートは他の楽器に比べて大会に出られる人数が少なくて、1年生の時は出られなかった。
これが悔しくて悔しくて。大会明けから、学校にあったピッコロも練習し始めた。誰も吹ける人がいなかったから、上手くなれば必ずピッコロパートで出られる、と思って。
元々高音が得意だったこともあって、ピッコロはすぐに吹けるようになり、翌年の大会では目論見通り、ピッコロパートという自分の枠を得ることに成功した。それ以降も、曲の編成に合わせて、フルートとピッコロを行ったり来たりしていた。

フルートとピッコロには、飛び上がるくらい嬉しかった思い出がたくさんある。最後の大会でピッコロでソロを吹いたこと、その大会で初めて金賞を取ったこと。よく練習を見てくれていた、(辛口な)楽器店のお姉さんが「上手いな」とぼそっと言ってくれたこと。さらに大会でフルート奏者の審査員が、講評に「ソロの部分がとても良かった、感動した」と書いてくれていたこと。
目立つことが嫌いな私が、唯一目立つことを厭わなかったのはフルートを吹いていた時だ。ソロだって、恥ずかしいどころか気持ちよかった。さすがに大会の時はものすごく緊張したけど、達成感も大きかった。
もっと上手な人がたくさんいることは知っていた。けれど、そんなことは関係なかった。フルートを吹いている自分が大好きだった。

でも、高校で吹奏楽部に入った私が手にした楽器はフルートじゃなかった。
パート決めの際、フルートは人気で、定員を上回る希望者がいて。1人、また1人と他のパートへ移っていく中、遂にパート枠3人に対し希望者が4人のところまで減った。そこからは話し合いも平行線、そろそろ全員がうんざりしてきたころに、私以外の希望者3人が全員泣き出した。
えー、ずるくないそれー?と思って周りを見渡すと、同様にうんざりしている同級生や先輩からの「あなたは泣くほどやりたいわけじゃないんでしょ?なら他のパートに移れば?そしたら決まるのに」という無言の訴えが、視線が刺さってくるようで。無言の圧力に勝手に負けて、別のパートに移った。

ずっと、人目を気にして生きていた。周りにどう思われているんだろう、こんなことして大丈夫かな、ってビクビクしていた。いい子ちゃんでいたかった。この時も、私が諦めればみんなこの時間から解放されるんだ、私のせいでみんなの時間を無駄にしたんだ、と思っていた。
今ならわかる、全然私のせいじゃないわ。勝手に自分のせいだと思って、自分から手放したんだ。

結局、1年は頑張ったけどどうしても新しい楽器を好きになれなくて、更に部活の運営方針に疑問を抱いたこともあって、吹奏楽部は辞めてしまった。
それからは、フルートはたまに思い出して吹く程度。

今思えば、別に大学で、社会人になって、再開しても良かったのに、ブランクがあることを言い訳にして、逃げた。また「パート分け」の儀式に晒されるのも怖かった。

でも、今でも吹奏楽はやっぱり大好きで、定期的に動画が見たくなる。見るたびに心が躍って、楽器吹きたい欲が高まって、地域の楽団を調べてみたりはするんだけど、団員募集していなかったりで諦めて。そんなことの繰り返し。

別に1人で吹いてたっていいのに。家で吹けないなら外で吹けばいいし、外で吹くのもな、と思うならスタジオを借りてもいい。ブランクが気になるなら、レッスンを受けてみるのもいいかもしれない。「フルートを吹く」だけだったら、今からでもできる。
とりあえず、音を出してみようか。上手いとか下手とかは気にせずに、自分の気が済むまで。

そう思い始めたら、ダンサーの飲み友達が、安価なスタジオを教えてくれた。楽器も弾けるよ!って。そして意外とフルートの個人レッスンはいろんなところで行われていることもわかった。全然実現できちゃうな。考えただけで楽しくなってきた!

まずは、また音楽のある生活をしたい。今はこれが一番。
でも、いつか誰かと音を重ねたいな。楽団じゃなくても、アンサンブルでもいい。
音楽は1人でも楽しいけど、やっぱり人と一緒の方がもっと楽しいから。


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