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#図書館

悲しみ

昨年の五月。市の図書館で見知らぬ詩集に吸い込まれ、たった一つの詩を飲み込んで、泣いた。
悲しいわけではなかった。
そこに、私や、私の身近にあった人をみた気がして、訳もわからぬまま、ただ、ただ泣いた。
声は出さなかった。
いっときでも長くその詩を見て、あまりにも物覚えの悪い、幼く、愚かな私の脳みそに、詩の一文字、詠人の名前、いや、苗字だけでも覚えておきたかったのに。
もう、覚えていないのだ。
綺麗さ

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