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XIIX LIVE TOUR 「USELESS+」備忘録

立て続けにXIIXの話を書きます。

前回の記事ではXIIXの2ndアルバム「USELESS」についておすすめCDアドベントカレンダー21日目の記事として拙筆ながら書かせていただきました。


そのUSELESSというアルバムを掲げたアルバムツアーの後半戦、XIIX LIVE TOUR 「USELESS+」について、ライブレポートと言えるほどのものになるかはわかりませんが自分のための備忘録として書き残します。


このご時世ご気分を害される方がおられたらそっと見なかったことにしてこの記事を閉じていただきたいのですが、2021年のXIIXの全てのフェス・対バンライブ、また前半公演であったLIVE TOUR 「USELESS」名古屋公演、そして今回の「USELESS+」の全公演を見てきました。

それがファンとして必ずしも正しいことであるとは言えませんし、ファンであればライブに行くべき、ファンであれば全通すべき、みたいな考えも自分の中には一切持っていないつもりです。

それでもそういう2021年を見てこれた自分だから残せる感想や自分だから気付けた演出もあったと思っているので、それらを全て忘れてしまないうちに。



セットリスト

バンドセット・前半

1. Halloween Knight

最早恒例とも言える1曲目Halloween Knight。
この1年はほとんどのライブをこの曲で始めているはず。

例外としてilaksaやStay Mellowスタートのパターンもありましたが、しかし堂々鉄板の1曲目。

とは言え演奏は数を重ねるごとにスケールアップしていき、今回は全公演でイントロのベースソロをギターの音色が飾り立てる贅沢仕様です。


大阪1日目は特に歌の熱量が凄まじかった。
2サビ前「誰を 誰を 助ける」のところで勢い良くブレスする音を鮮明にマイクが拾ったときは「このツアー本当にただ事じゃないやつかも」と緊張が走ったのを覚えています。


2. LIFE IS MUSIC!!!!!

「XIIXです!」という簡素な挨拶からこちらも恒例の2曲目。
もしかして2曲目がLIFE IS MUSIC!!!!!じゃなかったライブってここ1年なかったのでは?

少なくとも全ライブでセットリスト入りは果たしているこの曲、Bメロでは須藤さんが客席に向かってクラップを煽るのがお決まりになっているためか客席からはもう煽りがなくとも自然とクラップが巻き起こるのが気持ちいいです。


仙台公演ではBメロ後半でチャカチャカと小気味良いギターのミュートした音が鳴っていて新鮮でした。


3. フラッシュバック

ライブで披露されたのはアルバムツアー「USELESS」以来2度目。6月公演、音源に比べてBPMを落としてもたついた雰囲気に。

この曲に入る前のMCでは毎公演「今日は我々の演奏に身を委ねて自由に身体揺らしてってくださいよろしくお願いします!」と軽く言葉を述べましたが、大阪1日目のみ「今日は我々の演奏、グルーヴに身を委ねて、自由に揺れてってくださいよろしくお願いします!」みたいな(うろ覚え)感じですこし言葉を選びながら話している印象でした。

大阪2日目以降全ての公演で歌に入る直前の2拍で「フラッシュバック」と曲名コールが入っています。


BPMを落としているからなのか2Aが「歌う」というよりも「話す」ような印象だったこの曲。
囁いているような、それでいて叫んでいるような。やりきれない葛藤を拳を握りながら音楽に昇華する、間違いなくあの場限りの表現でした。

2Bの「かなりやばめなフロウ」は全公演スキップ。代わりに間奏ではライブバージョンのギターとベースの掛け合いが披露されました。今ツアーはここに限らずソロの応酬が多く、挑発しているような会話しているような終始楽しそうな2人。


4. ブルー

「時間を掛けて緻密に作り上げたアルバムを一回ぶっ壊して、このツアーのために再構築してきました」とこのツアーに関する軽い説明や抱負を話すMCパートを挟んで、音源ではAメロの後ろで鳴っているふわふわとした同期の音源を4小節ほど流してスタート。

東京公演では「今日の歌、今日の演奏全て、今日に捧げます」と言っていたのが鮮烈に記憶に残っています。忘れたくないです。


Aメロ終わりのギターが際立っていたのが印象的。ライブを終えて音源を聴いて初めて「こんな風に鳴ってたんだ!」と気付かされました。

間奏では「DJ!」の一声からHIRORONさんのプレイが目と耳を惹く。
ソロ回しはXIIXのライブでも恒例ですが、曲中にDJのプレイに耳が傾く機会ってそういえばなかったなとハッとさせられます。


コーラスが印象的なこの曲ですが、大阪1日目は同期音源無し、2日目以降は全て同期のコーラス+小音量の生コーラス、という構成でした。
全体的に1日目はコーラスマイクの音量が大きかったかなという印象なので、そこが調整された結果同期が入った感じなのかな。


雨のような、花のような、空間を感じさせる数多の点がステージから客席を照らすような照明も合わさって幻想的で柔らかく、それでいてスクラッチのエッジの効いたちぐはぐさが妙にしっくり来る感じ、XIIXらしいステージでした。


5. Light & Shadow

ライブでも常連のこの曲ですが、今回のツアーでは照明が一新。
今までのは白ライトがメインで無機質なイメージの照明でしたが、打って変わって後ろから赤い照明がバンドメンバーを照らし浮かぶシルエットに緊迫感が感じられます。

どちらの演出も好きですが、今回のツアーに限って言えば圧倒的に今回の演出が良い、という感じ。
同じ曲でも演奏と照明の使い方によってツアーのピースとしての働き方が違ってくるのを感じます。XIIXの音楽、本当に可能性が多すぎる。

Cメロ、「微かな光も 微かな吐息も」からの一節で斎藤さんに当たる2本の交差したライト、ギター一本のアウトロで真上から当たるピンスポット、この辺はアルバムツアー前半戦「USELESS」から引き続きの演出(のはず)。
その場に自分とステージしかないような、最早照明に照らされる彼しか目に映らないような、思わず息を呑む瞬間です。


大阪両日のみ2サビの「眠くなっておやすみ」あとが eh… ではなく、「オンザベース!」と叫んでベースソロ。


インタビューでも「前半がミニマムな構成なので曲後半で一転して壮大さを出したかった」と言われている通り、「親指で弾かれた」……からのシンバルの音の演出する空間の広がりがどの曲よりライブ映えするこの曲。
ライブハウスで聴くのも良いですが、ホールで聴くと一層「曲の大きさ」が際立ちます。

1曲前のブルーについて「Light & Shadowの系譜」と語られていたこともあるので、そういうところから繋がったセットリストなのかもしれません。


6. おもちゃの街

ブルー、Light & Shadow、そしてよっちさんのスティックカウントからこのおもちゃの街。
聴かせるタイプの曲が続きます。

この曲もライブ常連、大きく変わったところはなかったものの、2サビ前のドラムのフィルインだけ同期でなく生で叩かれていたのが印象的でした。なんだか違うな?と思ったら、1サビ前は同期音源だった。


ツアーの趣旨がそうだったから流れでそう聴こえたのか、そういう風に聴かせてきてたのか、今までの「暖かさと切なさのあるバラード」という印象から打って変わってもう少し強さを持った、未来志向な曲のように感じるステージでした。


7. No More

イントロのギターリフを弾く斎藤さんの表情や客席に伝わる幸福度がギターソロと同じ熱量で驚いた。

この曲は間奏がライブバージョンのギターソロになっていたり、Cメロ「楽しめば勝ち」のあとのコーラス隊の歓声、ギターのチョーキングだったり、魅せ場がめちゃめちゃ多かったですね。


間奏のギターソロはイントロのリフのアレンジ。毎公演ほぼ同じものが披露されていましたが、この公演が初出。


Cメロ「楽しめば勝ち」のあとには音源上も「ヘーイ!」と楽しそうな声が入っていますが、ライブになるとそれが鮮明に聴こえるので新鮮です(6月公演を見るまで入ってることに気付かなかった)。
このタイミングで音源には入っていないドラムのシンコペーションが入っていたりもした。

大阪1日目では先述の通りコーラスの音量が大きかったのでややアンバランスでしたが、2日目以降はまとまりが良かった印象。

仙台・東京公演では「ヘーイ!」に合わせてキュイーン!とギターのチョーキングも加わった贅沢な演奏。
特に仙台ではチョーキングの前に斎藤さんが笑顔でギターを掲げてアピールしていたのも印象的でした。いたずらっ子みたいでかわいい。


アコースティックセット

8. E△7

大阪両日・仙台・名古屋では「ライブではこの世代でもトップクラスのミュージシャンにサポートで入ってもらっていますが、僕たちは2人でXIIXとしてやっていて」というようなMCを挟んでサポートミュージシャンが退場、椅子を出してのアコースティックコーナーへ。
東京公演だけここのMCの方向性がやや違ったような気がしますが、記憶があやふやだ……。

仙台以降の公演では「初めて2人でアレンジした曲、XIIXの最初の曲」のような紹介が挟まっていたかと思います。


E△7は配信ライブ「4th FLOOR」以来「USELESS」、「USELESS+」とアコースティックアレンジで演奏されている曲ですが、今回のツアーではLINE LIVEの特番で披露していたようにルーパーでリズムを刻んでからそこに乗せての演奏。

今までのライブのアコースティックコーナーではフェンダーの赤いアコースタソニックを使っていましたが、今回はYouTubeに投稿されているハンドレッド・グラビティでも使用していたエレアコを使ってましたね。

あと「4th FLOOR」や「USELESS」では同期に合わせる都合上かラストサビ前の "Everything's gonna be alright" を歌わない演奏でしたが今回はちょうどそのタイミングでルーパーの音源を切って生音のみにシフトし、溜めてからラストサビへ入るという違いもあり。


1サビ後の間奏では「ベース、すってぃー!」との掛け声から弾むようなリズムが印象的なベースソロへ。
このソロは毎公演若干ずつ違う演奏になっていたのでそれも聴いていての楽しみでした。


この曲は演奏されるたびにボーカルのメロディアレンジが違うところに乗るのも聴きどころのひとつだと思っています。

2A2回目の「キャッチミーベイビー」にアクセントが付くこともあれば一番最後の「目をそらさないでいて」にアクセントが付くこともあり、一音たりとも聴き逃したくない曲。
今回のツアーは東京公演のみスタンダードに譜面通りのメロディでした。


9. ハンドレッド・グラビティ

前半公演では「もっとツアー回りたいし、2人で回ればもっと身軽にライブができるはず。2人きりでもライブを成立させられるだけのポテンシャルもあると思っている」、後半公演では「アコースティックライブを自分がすることにはあまり興味がなかったけど、XIIXでやってみたらバンドでやるより伝えられる気持ちがあるし思ったより楽しかった」みたいなことをざっくり。

「なので、2人だけでやってもバンドでやってる以上の熱を出せるような曲をと思って作った曲を」とハンドレッド・グラビティをライブ初披露。

YouTubeに動画が出たときには「in the Rough」シリーズで斎藤さんがアコースティックギターを持っていることに驚きの気持ちも強かったので、納得のMCでした。


始めはゆったりと様子を見るようなベースのフレーズに、返事をするギター。同じフレーズが少しずつ加速していき、須藤さんの「1, 2……1, 2, 3, 4!」という掛け声から動画でも聴き慣れたイントロに突入。

その掛け合いも公演ごとに違っていて、セッションというよりはインプロと言ったほうが適切かもしれません。

「毎回違うフレーズを弾いてくる」須藤さん、それに触発されるように新しいフレーズを編み出す斎藤さん、笑顔で応える須藤さん、……というやり取りはまるで楽器を通して会話をしているようで見ている側ですらも心地良く感じます。

特に須藤さんの新しいベースの初下ろしだった東京公演では他の公演に比べても長く濃密な掛け合いが楽しかったな。


どの公演でも思いましたが、やはり生で聴くと「未完成なんだ僕らはまだ」というフレーズに感じるものがありますね。

さらには動画にはないサビのメロディをなぞるアウトロ、これは東京公演でのみメロディにアレンジが掛かっていたりととにかく贅沢なセッションでアコースティックコーナーを締めくくります。


音源化してほしいなあ。


バンドセット・後半

10. ilaksa

サポートメンバーを再びステージ上に迎え、「後半戦」へ突入。

大阪1日目では「気を引き締め直して」、別の公演(東京と、他のところでも言ってた覚えはある)ではバンドメンバー、そして客席に「準備はいいですか?」と一声掛けて曲が始まります。

大阪1,2日目では音源通りベースのタッピングから。仙台ではベースのタッピングの前にドラムのスティックカウントが入り、名古屋・東京ではイントロをアレンジした8小節ほどのセッションが曲前に差し込まれました。

え?1st AL 曲にセッション付くとか、ある?wあるんだ…………。


この曲も元々かなり棘のある曲ですが、DJによるイントロの声ネタが鋭くライブならではの色を足します。

青と緑をメインとした照明にサビでは真っ白なライトが稲光のように明滅して、嵐のような……まさに「気を引き締め直して」後半戦に入るに相応しい攻撃的なステージ。


仙台・名古屋公演では2Aの頭、「見失ってしまったのか どこかに落としたのか」というフレーズで徐に左手を目の前に翳して”見失う”振りをしたり、指で円を作って探すように覗き込んだりする斎藤さんの姿も伺うことができました。

このフレーズ、今回の「同期の音源を間引いたライブ」だからこそボーカルとベースの音だけが際立つような気がして(とは言えこの曲は元々そんなに同期を入れている曲でもなかったと思うので、照明含めたサビの激しさとのコントラストとかだったのかも)、曲の中に入り込むような感覚がしたのを覚えています。


配信ライブ「4th FLOOR」でも落ちサビでは各楽器が好き放題に音を鳴らして理性とか正気とかそういうものを音で絡め取るような、聞き手の心の奥から何かを無理やり引っ張り出すような激しい演奏をされていましたが(とりあえず動画見て)、今回はそこにギターの音や激しさを増しながら点滅を繰り返す照明も加わります。

目眩がするような、「そこに立っている」ことすら覚束なくなるようなパフォーマンスにとにかく圧倒される限り、為されるがまま。


斎藤さんが以前ラジオで「音楽体験で傷を付ける」ことをしたい、と話していましたが、本当にその言葉通り初日の終演後には「楽しかった」とか「かっこよかった」以上に「こんな怖い思い今までしたことあったかな」と自分の生を思い返してしまった。

そんなに恐ろしかったにも関わらず仙台公演では「怖い」「恐ろしい」以上に「今ここにいる自分は『自分』というよりも『自分の形をしたXIIXの一部』であるような感覚」「音楽に取り込まれて自分とそれ以外が曖昧になる感覚」がしたし、名古屋公演ではその瞬間の「脳がチカチカして抉り取られるような感覚」「良いところを執拗に刺されるような感覚」の先を知りたくなったし、あのパフォーマンスを見れば見るほど良い意味で慣らされていく、言葉のままの『中毒性』があると思います。


アウトロでは斎藤さん、須藤さんがステージ前方でお互い向き合ってフィニッシュ。

名古屋公演のときに見た、右手を振り抜きギターを弾き切った瞬間の斎藤さんの、無表情と言うには怖くて、でも色のない表情。たまたま見えただけなのでその瞬間須藤さんがどんな顔で斎藤さんと向き合っていたのかはわからないけど、あの瞬間の「音楽が斎藤宏介の形をしてる」感じがなんだか怖かった。


11. Regulus

狭く、鋭く、突き刺さるようなilaksaから、今度は一気に空間が開けます。

2ndアルバム「USELESS」初回限定盤収録の映像特典に配信ライブ「4th FLOOR」の続きとしてライブ映像が収録されていますが、アレンジ自体は大きくそのときと変わっていない印象です。
多分アウトロだけ「4th FLOOR」や原曲より長めにアレンジされていた気がする。

音源にはなかったキーボードの音色が宇宙空間のようなふわふわとした広がりを演出しながらもギターのカッティングの音でしっかり足は地面を踏みしめるような、BメロCメロの言葉数の多さに対してサビの広がりを持った伸びやかなメロディが対照的な、二面性を持った曲。


アレンジは「4th FLOOR」のときと大きく変わっていなくとも音楽としての結合力は格段に今ツアーのほうが強くて、今「4th FLOOR」を観ると物足りなくすら思えるほど。

とは言えお披露目ライブ「White White」のアンコールでも演奏されていたというこの曲なので、骨の部分が今年の頭と変わっていないのはそういう「長く演奏されてきた曲」なのだろうなと思います。


今ツアーの東京公演で初めてホールでこの曲を聴いたのですが、サビの音楽としての広がり然りメッセージ性の強い歌詞然り、ホール映え威力が抜群です。


12. ホロウ

アルバムツアーの前半公演「USELESS」ではセットリスト入りしなかったこの曲ですが、反対に「USELESS」では披露されたものの今回はセットリストから外れたZZZZZと似たライブアレンジが施された曲です。そういう枠なのだと思っています。


音源同様1番は最小限の音数で、2番に入ると音源以上の、力強さとも盛り上がりとも言えない、迫力……かな、そういうものを感じさせる力の籠もった演奏。

「薬指からライトニング」の歌い方が噛み締めるようで印象的。


音源で聴くと落ち着いたバラードのような、切なさのあるラブソングにも捉えられるこの曲ですが、ライブではアウトロを何度も何度も繰り返しながらまるでコーラスの声を掻き消そうとするかのように演奏の熱が上がっていきます。


これ以上ないほどにスモークを焚いて青白い照明がステージ奥から客席に差し込む様が、普段なら「ステージ奥から客席に差し込む照明」は「ステージと客席の一体感」とか「地続きな様」を感じさせるものであるはずなのに、その激しい演奏と相まってステージと客席の間に見えない壁を作り上げているかのように思えます。


13. アカシ

問題のセッションである。

斎藤さんがギターを取り替える隙に須藤さんが徐にベースの弦を鳴らし出します。
弦を弾いてはボリュームを上げ、また戻して弦を弾いてはボリュームを上げを繰り返しながら響かされる、不気味な、でも何かの始まりを予期させるような和音。

初めの1音だけでもわかるこの音、8月頭に大阪で開催されたFM802のロックフェス「HIGH!HIGH!HIGH!」で披露されたものと同じでした。

フェスで披露されたときはベースの音1本だけだったそこにキーボードとギターが飾り付けるように音を重ね、「USELESS+」仕様のそこから一転フェス披露時と同様アカシのアウトロを転調・アレンジしたフレーズを挟んでベースとギターが交互にスポットライトを浴びながらソロの応酬へ突入。

このソロの掛け合いも他のセッション同様に公演ごとに趣の違うものになっていて、2人の引き出しの多さを感じます。


アカシという曲自体ストリングスが壮大さを演出するXIIXの曲の中でも同期の果たす役割の大きい曲ですが、今回のライブでは同期の音数を減らす分ストリングスが入っていた部分をギターとキーボードで埋めていたように思います。

個人的には2Aの緊迫感溢れるストリングスの音が好きなのですが、それもキーボードの音色で再現されており、原曲のスリルある感じよりは「意思の強さ」が押し出されていた印象です。

その反面なのか、今までのライブでは「この曲らしい」とすら思える白一色だったサビの照明が赤基調の、一転バトル漫画らしい必死さを感じるような照明に差し替わっていたのもまた印象的でした。

間奏でグラデーションのように白一色に変わっていく瞬間の開放感や安心感も合わせてすごく良いステージ演出です。


もしこの世界が全部作られた偽物だとして
与えられた運命が絡まった勘違いだとして
それでも構わない
ありふれた毎日の中に 譲れない理由がある

東京ガーデンシアターというXIIXのキャリア史上ワンマンライブでは一番に大きい会場で聴くこのフレーズはなかなか、心に刺さるものがありましたね。


14. Stay Mellow

アカシのアウトロが終わり、輝かしい光を感じさせる掻き回しの締めと同時にキーボードのイントロが始まります。

聞き手が一番油断している瞬間に、きっと聞き手の誰もにとって一番「XIIXの曲」として馴染みのあるイントロを刺してくる。
「こういうところが本当にXIIXらしい」と思えるところが憎らしいし、こんな曲の流れを許すこの曲のイントロはこのライブのためにあるようにすら思えてきます。


この曲もライブで毎度演奏されているひとつですが、例によって照明の雰囲気がいつもと違う。

今までのライブでの照明は紫や緑基調のどちらかと言うと静かな照明だったように記憶していますが、今回はイントロから黃・紫・ピンクとまさに "Mellow" という単語を連想させるような動きのある照明。

今までのライブでの照明がこの「Stay Mellow」という曲のMVの再現だとすれば今ツアーでの照明は仮面舞踏会を想起させるような、華やかでありながら耽美な、悪い意味で大人っぽい、とでも言えば良いのか、そういったイメージです。


2Aの「美しい鼓道に触れてその歪さに気付いてしまうとき 私の中に住む悪魔がふと目を覚ます」の部分で後ろで鳴っていたキーボードの音は多分今までの公演では聴いたことがなかったと思います。音源では鳴ってません。

なんだか切ないような、何かを諦めてしまったような、大切なものを落としてしまったような、そんな印象の音が歌と詞を一際目立たせるようで鳥肌が立つ。もう一度聴きたい。


仙台・名古屋公演では最後の「Will you make a secret?」に被せて小さく斎藤さんも同じフレーズを歌っており、これも今ツアーで初めて聴いたはず。

仙台で初めて聴いたときは「あれ、今のいつもと違った……歌ってた?」と終わってから気付いたのですが、その瞬間ハッとする感覚があったということは逆に言えば「その瞬間まで何も考えられないぐらい音楽体験に没入していた」からなのかもしれません。


XIIXというバンドを象徴する、癖の強さがそのまま罠の深さであるかのようなこの曲はどのライブでも演奏された瞬間「空間全て」がXIIXのものになるような感覚を覚えますが、一際それが強かったのが名古屋公演でした。

他の公演と何が違ったのかはわからないけど、あの瞬間会場で「自由に身体を揺らしていた」客席は最早音楽に操られているようですらあったし、多分わたしもそのうちの一人だったし、そんな自分や客席をぼんやりと上から眺めていたような不思議な感覚。

あの瞬間を「会場が一体となっていた」と言えば聴こえは良いのだけど、明らかに「一体感」ではない、全員がバラバラに動いているのに何故かその中には「同じ感情」を表出させている……表出させている、というより音楽によって引き出されているような、そういった心地良いけど不安に、恐ろしくなる瞬間が名古屋公演のStay Mellowにはありました。
他の公演でも見た人、見た場所によっては似たような気持ちになった人がいたのかもしれないですが。


15. Answer5

アカシのきらびやかで光に溢れた終わりから一転Stay Mellowの闇に溢れた毒のあるパフォーマンス、そして先行して演奏を始めるドラムよっちさんの「1, 2, …1, 2, 3, 4!」と掛け声からAnswer5へ。
音楽に掻き回されて駆け抜けるしかないみたいな怒涛のクライマックス。

Aメロのドラムのフレーズが印象的なこの曲はドラムが先行して始まった瞬間曲がわかるし、確か6月のツアー「USELESS」か他の対バンライブだったかでも同じ入り方をしていたはず。


どの公演でもここは明らかにクライマックスで普段XIIXのライブで手を挙げることがあまりないわたしもサビ前になるとベースを掲げる須藤さんにつられて手が挙がります。

スピードとパワーを兼ね備えたこの曲ですが、特に大阪1日目は「パワー」、大阪2日目は「スピード」という感じ。
芯としてある「加速度」は変わらないのにその日のバンドの熱の入り方によって見え方が変わる面白い曲です。


披露されたほぼ全てのライブで間奏はサポートメンバー含め全員のソロ回しパートとしてアレンジされていますが、印象的だったのはキーボードの山本健太さんが今回のツアーではソロパートの頭を溜めるようなアレンジをしていたこと、かな。
今まで見たことないタイプのアレンジだった気がします。

6月のツアー「USELESS」ではツアーファイナルの大阪公演のみこのギターソロで斎藤さんがギターを背面弾きしたと話題になっていましたが、今ツアーでは全公演背面弾きを披露する大盤振る舞い。

特に仙台公演ではギターを持ち上げようとするもなにかに引っかかってギターソロの頭数拍がちょっと崩れた様子で、それを見てニコニコと笑顔を見せる須藤さん、という一幕も見られました。


16. like the rain

ノンストップの後半戦をAnswer5で締め「どうもありがとう、XIIXでした!」とライブの終わりを予期させる挨拶のあとは後ろでキーボードのアルペジオが鳴る中長めのMCタイム。

like the rainという曲は斎藤さんの「音楽愛」を歌った詞が心に重く響くバラードですが、まさにそれを予期させるような「音楽愛」に関するMCが各公演で話されました。

このMCについてはかなり公演ごとに内容にバラつきがあって、初日大阪公演1日目では「自分のために音楽をやっているとはっきりわかっている。自分のために作った音楽でみんなに喜んでもらえるからまた自分のために音楽を作る。その繰り返しでみなさんにとって替えの効かないバンドになりたい」という話をしたり、ツアーファイナル東京では「思い上がりかもしれないけど、自分たちは一生音楽をやるべき人間だと思っていて、これが一生だと思うと途方もない気持ちになったりもするけど、それでもこうやって音楽に戻ってきてしまうのは今日みたいな日があるからだと思っています」という話をしたり。

6月、Zepp Divercityでの対バンライブ「LIVE HOLIC vol.31」でもこの曲の前に音楽愛について語るようなMCをしていた覚えがある(細かい内容は覚えてないけど、like the rainが来る流れだと直感したことを覚えている)ので、きっとこの曲はXIIXにとって、斎藤宏介にとって大きな曲なんだろうと思っています。


そして7月の対バンライブ「大ナナイト vol.132」でも「ただのバラードじゃないです」と語られて始まった通り、「ただのバラードじゃない」のがこの曲。

6月、7月と対バンライブで演奏された際にはキーボード不在のためかギター弾き語りのようなアレンジで歌い始めたこの曲ですが、今ツアーでは冒頭のワンコーラスをキーボード+ボーカルの構成で披露します。


2段階に分けて掻き回し、バラードとは思えないような力強い楽器の音で締めくくったこの曲の締めは本当に「ただのバラードじゃない」という言葉の通り決意や意思、運命に愛されようと振り回されようと音楽と進み続ける、という強さを感じるフィナーレ。圧巻の一言しか出ない。


余談、仙台公演でこの曲を歌う斎藤さんを見たときに何故かステージ衣装とは違う「シャツをTシャツの上に羽織った姿」の斎藤さんを幻視したような気がして、あれは何だったのか未だに自分でもわかりません。


アンコール

En1. Endless Summer

どの公演でもすごく急いでアンコールに戻ってきてくれた印象があります。ありがとうございます。

ライブの感想やグッズ紹介のMCを挟んでのアンコール1曲目はEndless Summer。
6月のツアー「USELESS」以来ライブでは披露されてこなかった曲ですが、アンコールに出してくるのにぴったりなデザートみたいな曲だと思います。


ドラムイントロから始まるこの曲、仙台公演以降は斎藤さん須藤さんがイントロでよっちさんにピースをしてみせるのが恒例になっていてほっこりしました。
ただその仙台公演ではその様子に気を取られた斎藤さんが歌い出しを「終わらない時間が終わろうとしている」と間違え、後のMCで「歌詞間違えたの気付いた?歌ってて自然と間違えちゃって、今のことみたいじゃん!って思って」と話すというハプニングも起こったり。
終わらないで泣


音源では「今を愛して気付いたこと」でしっとりと終わるこの曲ですが、今ツアーではアウトロ付きのアレンジで披露されました。
音源通りも良いけど、ライブでやるならこっちのほうがライブらしくて好みかも。

向かい合ってアウトロを弾く2人の幸せそうな表情、写真に残してほしい。


En2. ユースレス・シンフォニー

「次が本当に最後の曲です」と一言あり、大阪両日・仙台公演では「発声練習しとく?すみませんが茶番にお付き合いください」とサポートメンバー合わせ全員がイントロの「アゥッ!」を叫ぶというハートフルなMCがありました。

名古屋・東京公演ではこの流れがなかったのは、多分ilaksaにセッションを付けた分の尺の都合かな。


配信の「4th FLOOR」を除く今年XIIXが出演した全てのライブでユースレス・シンフォニーで締めるセットリストでしたが、このMCの流れで披露されるユースレス・シンフォニーの多幸感というか、心の温まり方は本当に他の今までのライブとは一線を画していたと思います。

個人的にXIIXのライブは飴と鞭……と言うとやや表現が噛み合わないのですが、そういった「暖かさと激しさのバランス」が特徴的だと思っていて、そのマスターピースは間違いなくユースレス・シンフォニーです。

本編でめちゃめちゃに攻撃的、背徳的、退廃的な曲やそのライブ限りのアレンジを魅せてきて、最後にユースレス・シンフォニーで幸せにされて「今日のライブも幸せだったなあ」と思いながら帰る、というのがわたしの中での「XIIXのライブ」なのですが、あたたかいMCのあとのユースレス・シンフォニーは、冬に入る温泉みたいな劇的なあたたかさがあるなあ……と思った「USELESS+」前半公演でした。


仙台公演ではイントロが倍長、名古屋・東京公演では3倍長で演奏されて、どちらも上手・下手それぞれに斎藤さんと須藤さんが張り出して出だしから既に幸福度MAXなユースレス・シンフォニー。最高だ……

仙台公演のイントロでは山本健太さんが立ったままキーボードを弾いているのを見て、5人でXIIXなんだなあ……と本当に思った。
わたしはサポートミュージシャンの世界に詳しいわけではないのですが、XIIXの2人が本当にサポートメンバーの方々を大切にして、尊重しているのがこういう幸せそうな様子から見えるなあと思ったり。


大阪2日目のみ2サビの「so youthless!」を歌わず、代わりに「アゥッ!」とイントロのシャウトを挟んだ斎藤さんのことをわたしは一生忘れないと思います。
本当にライブが大切で、ライブが大好きな人で、あの瞬間そうせざるを得ないような気持ちだったんだろうな。

間奏に入ると須藤さんが客席にクラップを煽るのが恒例のこの曲ですが、特に仙台公演で満足気な笑顔で両手を高く広げながら全身でクラップを浴びるような仕草をする斎藤さんの姿が印象的でした。


曲が終わると大阪1日目は須藤さんと斎藤さんの「カーテンコールやる?」「何それ?」という会話からサポートメンバー含め5人で手をつないでお辞儀を、大阪2日目と名古屋(だったかな)、では須藤さんがメンバー紹介を。

東京公演では斎藤さんの「ナントカナントカやろう」という曖昧すぎる提案から大阪1日目同様カーテンコール形式での挨拶。マイクがうっすらと「俺がせーのって言うから『ありがとうございました』でお願いします」みたいな即席の打ち合わせを拾っていて、笑った。愛おしいなと思った。



総括

本当に良いライブだったし、本当に終わってほしくなかったし、東京公演のMCで斎藤さんが「嫌だ。終わりたくない」と言ってくれたとき、本当に嬉しかったです。

大阪2daysが終わったあと「スタッフからも評判が良くて嬉しい」と斎藤さんがツイートしていましたが、XIIXとずっと一緒にライブを作っているスタッフから評判が良いライブだったこと、そしてそう言われたことを本人が素直に喜べるライブだったこと、それを本気で「良いライブだった」と思えたこと、そういう全部が本当に嬉しいと思える、2021年のXIIXの活動を締め括るに相応しいライブだったと思います。


自分としては本当に、いろんな対バンやフェスのひとつひとつでXIIXのライブを観てきて、確かに彼らがその延長線上にいたこと、確かにそれらの場で拾った全てを糧にして「USELESS+」というライブツアーになったのだという確信ができたことが幸せでした。
XIIXと同じ時代に生まれてXIIXを好きになれる感性を持って生きてきてXIIXと出会えただけでなくこんなに贅沢な体験ができるわたしは本当に幸せ者です。


本当に良いライブだったし、本当に終わってほしくなかったけど、「曲の再現性を持ちつつもどこまで壊せるかに挑戦する」今回のツアーを終えてそれだけの達成感を得て、きっとまたXIIXはもっとわたしの予想できない方向に進化していくのだと思うとそれも含めて楽しみに思えるような、そういう未来を見せてくれたことも含めて最高のライブツアーでした。


2021年をXIIXと共に生きれた感謝と2022年のXIIXへの期待を込めて、この「USELESS+」を忘れないための備忘録としてこの記事を残します。

もしここまでお読みいただいた方がいれば本当にありがとう。
これをここまで読んでくれたということはきっとXIIXのことが大好きな人なんだろうなと思います。来年もその先も、わたしとこの記事をお読みのあなたがXIIXを好きでいられる未来を願っています。


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