新人介護士の頃の体験談
私が新人介護士の時に特に苦労したのは、認知症を患う利用者さんのケアです。
夜中になると部屋を抜けだしてウロウロと歩きまわる方。普段はとても穏やかなのに、急に暴力的になって介護士に掴みかかる方。「お金を盗られた」と大騒ぎして他の利用者さんを責め立てる方。一晩に30~40回もナースコールを鳴らして体位交換をせがむ方もいらっしゃいました。深夜から明け方にかけての疲れがピークに達したタイミングで起こる「鳴り止まないナースコール」は、当時の私にとっては大きな恐怖でした。
「どうしてこんなことするかなぁ!?」と思ってしまうこれらの言動ですが、必ずその人なりに何かしらの理由があるはずなんです。例えば、徘徊の多くは「家に帰りたい」という帰宅願望から来ているのだと聞きました。
新人の頃は利用者さんの話に対して「それは違いますよ」と否定の言葉をかけてしまい、火に油を注ぐことも多かった私。先輩から「言動を否定したり間違いを指摘したりすると、余計に収集がつかなくなるよ」というアドバイスを受けてからは、できるだけ相手の話に対して「そうなんですね」「そんなことがあったんですね」「こうしたかったんですね」と共感するようにしました。
そして、ある程度話を聞いたら全く別の話を振ってみる。すると、アッサリと興味がそちらの話題へ移り、拍子抜けすることも多々ありました。「相手を受け止めた上で、相手に応じたケアをする」という先輩から学んだ仕事に対する姿勢。忙しさのあまりつい忘れがちですが、これからも大事にしていきたいと思っています。
認知症を患っている利用者さんの言動はさまざまでしたが、中でも印象に残っている出来事があります。それは、面会にいらしたご家族に対する虚言です。
80代の女性利用者さんが、ご家族に対して「こいつら(職員)にいじめられている」「ろくにご飯を食べさせてもらえない」「早く家に帰りたい」などという発言を連発し、ご家族の不安を掻き立てたのです。職員がご家族へ丁寧に説明をするものの、ご家族は「本当に(この施設は)大丈夫ですか・・・?」と怪訝な顔。本人がそんなことを言って心配になるのは、確かにそうですよね。大事な家族を預けているんですもの。何かあってからでは遅いと不安になるのも当たり前です。そうしたこともあり、介護職を続ける上で、利用者さんはもちろんご家族への細やかなケアの必要性を改めて感じさせられた、という話でした。
上記のような話のみならず、いろいろと介護に携わってきて苦労はありました。未だに頭を悩まされることもしばしばです。「介護の世界に入りたい」と感じている人は、どんな苦労があるのかどうかを確認しておいた方がいいことは確かです。大変な実情を知ってしまえば、怖気づいて「やっぱり止めた」となってしまうかもしれません。しかし私はそれでも「いろいろな苦労をする分だけのやりがいはあるよ」と伝えたいです。そうした理由から、介護に興味がある方はまずしっかり厳しい現実に向き合った上で職探しをすることをおすすめします。 [併せて読みたいサイト⇒介護の新人教育お悩み相談所]
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