猫。


先日のこと。

その日は 仕事が休みだった。

1ヶ月くらい前に むしったはずの庭の草が また気になるくらいのびていた。

さすが 雑草魂 なんて言葉が生まれるほどである。

ただただ 雨とお日様の光のみで ほっといても どんどんのびる。

むしってもむしっても どんどん成長する。

大きくなって欲しい 紫陽花は ちょっとずつしか 成長しないのに。

数日雨が降った後 曇りが続いていた。

空を見上げると すぐには切れ間が出なそうな いい感じの雲が広がっていた。

気温もそんなに高くない。

草むしりには 絶好な日和だ。

運動不足には ちょうどいい 立ったり座ったりをくり返しながら 草をむしる。

目の前の 雑草と戦っているとあっという間に 時間がたつ。

1時間くらいたったかなぁ アテにならない自分の中の時計を頭に浮かべた頃 最初のうちは窓越しに 私の草むしりを眺めていた 愛犬も奥に入ってしまっていた。

その少し後 背中に気配を感じて振り返ると 猫と目が合った。

多分 裏の家で飼われている猫だろう。

キッチンで洗い物をしていると 時々目の前を通り過ぎていく 猫と同じ毛色だ。

当たり前のように 我が家の庭を通り抜けて行こうとする。

目が合った瞬間 猫は ビクッと固まったが そのまま草むしりを続けると うちの玄関の前で 毛づくろいを始めた。

玄関の前のアスファルトに背中をこすりつけたり 横になったり 完全にくつろいでいる。

玄関フードの中に入ろうとするので 中に入るのはダメよ と声を掛けると 入るのをやめた。

また アスファルト部分に戻り ゴロゴロしている。

ネコ派か イヌ派か そう聞かれたら 迷うことなく イヌ派だと答える。

一緒に暮らすなら 断然 犬だ。

けれど 草をむしる私と 横でくつろぐ猫。

30分弱くらいの 一緒に過ごした時間で   猫がいる空間も 悪くないな と思い始めていた。

ふれあうでもなく ただ 2メートルくらいの距離で 時間をともにしただけだけど。

根っこの深い草と格闘し ふと気づくとちょうど 玄関フードから猫が出てくるところだった。

コラ。と思ったけど 猫に勝手に好感を持ち始めた私は まぁいいか。と 許していた。

そんな私に 猫は背中を向け 去って行った。

またね。 ちょっとだけ仲良くなりかけた友人を見送る気分で ピンと立ったシッポをながめる。

それから更に 時間がたち 昼近くに汗だくで草むしりを終えた。

シャワーを浴びて スッキリしよー。達成感でいっぱいの 満足気分のまま玄関フードに入って 足が止まった。

なんか臭い。

虫コナーズの芳香剤の匂いがするはずの玄関フードが なんか臭い。

クンクンしながら よく見ると玄関のドアに おしっこがかけられていた。

くぅーっっっっっっ。

猫(あいつ)めっ。

仲良くなれそう と思った友達に裏切られた気分で 私は地団駄を踏んだ。

10年も我が家にいる愛犬ですら 玄関フードでおしっこなんて したことないぞ。

完全に 私の中の ブラックリスト入り決定。

誰にも 当たれない怒りとともに 玄関フードと玄関前に 大量に消臭剤と木酢液をまいた。

私は イヌ派である。

揺らぐことなく。

そんな休日の話。

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