見出し画像

スマホをなくした話

スマホをなくした話

9月の下旬あたりから近所のカレッジのAdult ESLに通い始めた。
地域の外国人(というか、英語を母語としない大人たち)に向けた気軽なオープンエントリークラスだが、その割には週に4回、毎日2時間の授業(もちろん全て英語)を受講する必要があり、結構ハードに英語を鍛えられている。
で、そのクラスでは、月に1回ぐらいのペースでそれなりの長さのエッセイを書く宿題が出る。
そのお題が今回は「なくしものをしたときの話」だったのだけど、自分にとってはとてもタイムリーだったので、日本語でもさっと書き残しておこうかと思った次第。
特に何の学びもオチもないのだが。

ちょうど先週の話だ。
通販の段ボールなどが溜まってきたのでゴミを出すことにした。
当地ではゴミの出し方に曜日の指定や細かい分別などはないらしく、近くのダストシュートに「ゴミ」と「リサイクルできるもの」に分けて投入するだけでいい。
週1~2回、適当にまとめてそれぞれに放り込んでいる。

そういうわけで、溜まっていたゴミ――大きめの段ボールを2つ、燃えるゴミを1袋、ペットボトルなどのリサイクルゴミを1袋、それから捨てあぐねていた大きめの保冷剤(燃えるゴミに入れていいものかどうか微妙に自信がなかったが、たぶんポリマーか何かだから水道に流すわけにいかないし、ゴミにするしかないだろう)――などを適当にまとめて担ぐ。
1回で持っていくにはちょっと重いが、致し方なし。飼い猫がリビングから脱走防止のために締め出されてニャーニャー文句を言っているので、早くゴミ出しを終えて開けてやりたかったのだ。

共用部、ダストシュートのある小部屋へ向かい、持ってきたゴミたちをそこへ適当に放り込んでいく。
と、リサイクル品のダストシュートに2つ目の段ボールを投げ込んで下を見たとき、奥が青白く光っているのが見えた。
階下のゴミ集積場に明かりがついているのは時々見えるが、この時間帯には珍しいし、その光が青い状態なんて見たことがない。
何か、電源のついたままの家電でも捨てられているのだろうか?とそのときは思ったが、さほど気に留めなかった。

ゴミを出し終えて、家に入ろうとしたときだった。
ポケットの中には鍵だけが入っていて、スマホが入っていないことに気付く。
あれ、おかしい。と思った。
割とスマホは肌身離さず持っている方だ。

家を出るときに特に確認しなかった、のだろうか?
しかし、自分がスマホを忘れて家を出るだろうか?
なんだったら廊下を歩いている短時間だって手に持ってちらちら見ていたりする。
さっきはどうだっただろう、もう覚えていない。
もし―—考えたくないけれど、もし、ポケットに入れないまま適当にゴミを出そうとして、ダストシュートに放り込んでしまっていたのだとしたら……

その瞬間、さっき見た青い光が頭を過ぎった。
ちょうどスマートフォンの画面で暗い場所を照らしたような……

「まさか私、どさくさに紛れてスマホを捨ててしまったんじゃないか!?」

あまりの動揺にめまいがした。
その日、夫は長い国外出張に出ていて、数日帰ってこない予定だった。
スマホがないとまず夫に連絡を取る手段がない。
車もないので、食品やその他必要なものをAmazonで頼むことも、Uberや公共バスで出かけることもできない。
(厳密には車はあるが、カリフォルニアの免許をまだ仮免しか持っていない。カリフォルニアでは引っ越してきたらいつまでも国際免許で運転をせず10日程度で免許を取れという無茶な法律があるらしく、渡米から相当経っているので、国際免許で一人で運転するのはそろそろグレーなのだ)。

まずは在り処を確認しなければ、と焦る。
ダストシュートの中に放り込んでしまったのだとしたらもう回収はできないとされているのだが、そこにあるならあると確認してから対応を考えたいし、ここはアメリカ、もしかして泣きつけば何とかしてくれる人がいるかもしれない。

ダストシュートのある小部屋に戻り、動揺で頭が真っ白なのだが、そうだ、Apple Watchからスマホを鳴らせるはずだ、と震える手で操作する。
奥から音は聞こえない。一瞬の安堵。
しかし、画面を見れば「オフライン」との表示。
何らかの理由でつながっていないだけ、かもしれない。
不安は払拭されない。どころか、鳴らなかったことになんだか絶望したような記憶すらある。
落ち着け、と言ってやりたい。ここでは鳴らない方がいいのだ。

それから、鍵にBluetoothトラッカーのTileをつけていることを思い出し、そちらも祈るような思いでボタンを連打する。
が、鳴らない。
こちらだって鳴らない方がいいには決まっているが、すっかり混乱しきっていた私の動揺は深まる。

いずれも鳴らない、ということは家にあるのか?
しかしあの青い光はちょうどスマホの画面のような明るさだったし、私はこういうとき、たいていの場合、予想通りの恐ろしい失敗をしているに決まっている―—。
めまいと戦いながら小走りで家に帰り、再びTileのボタンを連打しながらドアを開けた。

その瞬間、聞いたことのある通知メロディがバスルームから流れてきて、安堵のあまり文字通り玄関先で崩れ落ちた。
スマホは大方の予想通り、無事、最初からトイレの脇に放置されていたのだった。

よかった。
いや、無駄に動揺して疲れた。
なんで最初にトイレを確認しなかったんだろう。
いや、そんな余裕はなかった……。

もうすっかり情緒がおかしくなり、半泣きでヘラヘラ笑いながらスマホを手に取ったあたりで、リビングから締め出されている猫が私の帰宅を悟り、またニャーニャーと文句を言い始めた。
かわいいね。出してあげるから待ってなさい。

それにしても、あの青い光が何だったのかは未だに謎のままだし、その後もあんな風に光っているところなんて見かけたことがない。
もしかすると、私ではない誰かが、本当にスマホを放り込んでしまっていたのでは……と思っている。
いずれにせよ当分、ダストシュートに鍵かスマホを捨ててしまう悪夢を見ることが増えそうだ。

追記:実際のエッセイ

ちなみに…ということで。英文で書いたものが添削されて帰ってきたので、修正後のものを思い出がてら載せておく。
いくらか知らない単語を避けたり、長くなりすぎるので割愛したり、分かりやすくするべく嘘をついているが、まあこんな感じ。
だいたい10箇所ぐらい先生の添削が入ったあとなので、元の文章と比べれば恥ずかしくない印象になっているはず。

DeepLのアプリを辞書代わりに使った文もあり、長さのわりにラクはしているが、基本的には自分が意味を理解して使いこなせそうな語彙を選ぶようにはしているし、そこそこの分量を自分で書いている。
(ChatGPTだとたぶんあまりにも実力に見合わないものをお出しされてしまう可能性があると感じていて、あえて今もDeepLを使っている節がある)
来る前はDeepLを使ってもこんなに長く書けることはなかったと思うので、やっぱりよく頑張ったと思う、わたし。
自画自賛も卑下もなく、さほど真面目にトレーニングしたわけではない中級者の英語ってこんなもんかな、という感じがするという点で模範的なのではないかと思う。

Was my smartphone thrown away?

A few days ago, I almost lost my iPhone11. It’s a Product Red model, and I like it very much. I bought it in 2020, so I have been considering changing it to a newer model. However, needless to say, I can’t do anything without my smartphone. No matter how old it is, it’s the most necessary tool for me. I always keep it in my pocket.

That day I almost lost my phone, I had to take out the trash. I grabbed two big Amazon boxes, a garbage bag from the kitchen, a bag full of cat litter, and so on. They were a little bit heavy for me to carry all at once. I headed for the trash disposal and threw those things into the trash chute. At that time, I could see the trash light up with a blue light under the chute. I thought it was strange. After that, when I was entering my house, I noticed I didn’t have my smartphone in my pocket, and I remembered that blue light. I was sure my smartphone was accidentally thrown away!

I was really upset because my husband had left for a 7-day business trip that morning. I wouldn’t be able to call him, order something from Amazon, or even use Uber. I went back to the trash room and tried to ring my smartphone from my Apple Watch. But it seemed too far away and would not ring. Next, I realized I had a Tile – Bluetooth tracker – with my keys as well. I pushed the button so many times, but it didn’t ring. ‘Perhaps I didn’t drop it?’ I breathed deeply and returned to my house. Then, I could hear the alarm of the Tile app. Finally, I found it in the bathroom. I had left it there from the start!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?