背景のある虚室

ー祖母が買ってくれたシルバーグレー色したチェックのワンピースは第二次性徴期が始まった女児のスピードに追い立てられてすぐに着れなくなってしまったのを覚えていますー

わたしだけの わたしだけの わたしの為だけに存在するものを
常に求めていて、わたしだけの わたしの為だけのものならば
それが汚れた布切れでも嬉しくて

ー送られてきたチューリップハットは祖母たちの年齢相応のもので受け取ったわたしはそんなことは何も知らなくてそれがダサいかカッコ悪いかなんて分からなくてただ祖母がわたしの為に用意したものだということが嬉しくて鏡の前で何度も被り方を考えていたのを覚えていますー

わたしだけのわたしの為だけのものが
大人になった今でも
恋しくて欲しくて仕方ないのだけれど
奪うことは決して 幸福などではなく
ましてや 愛するということは過不足があると
たちまち 崩れてしまい かなしいというよりも
からっぽなわたしが
微笑んで存在しているということが
これほど虚しい軽さだということなど
知りませんでした。

ー会いたいと送られてきたメールにわたしも同じだと返信しましたが本当は会いたいのではなく確かめたかっただけでその手軽に送られてくる言葉が本当の重力を持っているのか確かめたくてただそれだけのわたしでしたー

#詩 #現代詩 #自由詩

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