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【書評メモ】交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史


交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史

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デイヴィッド・ライク著


つい最近まで、人類はアフリカで誕生し、遺伝子を辿るとひとりの女性に行き着くといわれていました。遺伝学者が多様な民族のミトコンドリアDNAを解析して母系を辿り、アフリカの1人の女性から分岐していることを明らかにしたのです。

しかし、ハーヴァード大学医学大学院遺伝学教授である著者のデイヴィッド・ライクによれば、日進月歩である最新の全ゲノムデータ解析を用いると、ネアンデルタール人の系統とサピエンスの系統が分岐したのは、約77万〜55万年前へと大きく遡り、我々サピエンスの起源は、従来の説より一気に50万年も古くなったということです。すなわち、我々ホモ・サピエンスが、約5万年前に東アフリカを出て紅海を渡りヨーロッパやアジアに拡散していった、という通説が覆されようとしているのです。

さらに、ネアンデルタール人の直系に近いのはヨーロッパ人と考えられていましたが、実は東アジア人のほうがヨーロッパ人よりネアンデルタール人の遺伝子を多く引き継ぎ、我々の祖先である東アジア人のほうが、よりネアンデルタール人の直系だということもわかったのです。

これが縄文人であり、同じDNAを持つ人たちがベーリング海峡を渡り、カリブや南米の原住民となっていきました。東アジアと中南米で似たような民族打楽器があることから、このときに打楽器が持ち込まれたのでしょう。

そして歴史は進み、約1万年前に最終氷河期が終わり、5000年前、車輪の発明によって人々はアジアから西へ移動し、2000年前の農耕革命によって定住するようになり、現在へと続いているのです。

いま人類史研究は飛躍的進歩を遂げつつあります。大きな人類史が覆るほどの発表が毎年続き、これまでの考古学や人類学の定説を次々に打ち砕き、人類の新たな歴史を浮かび上がらせようとしているのです。この風潮は我々人類の知的好奇心が尽きない限り、加速していくことでしょう。

“見識ある社会とは、知的な活動を高く評価するものではないだろうか?たとえ、直接の経済的恩恵や、その他の実際的な恩恵をもたらさないとしても。人類の過去を研究するのは、美術や音楽、文学、あるいは宇宙論の研究と同じように不可欠なことだ。なぜなら、人類が共有するさまざまな側面に気づかせてくれるからだ。極めて重要でありながら、これまでは想像もしなかったような側面に。”



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