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骨髄抑制


抗がん剤の治療では、骨髄中の血液をつくる気候が障害されて、血液の中の白血球、赤血球、血小板の数が減ってしまうことがあります。これを骨髄抑制といいます。


 TC療法では、白血球に含まれる好中球が急激に減少してしまいます。好中球は細菌や病原菌からからだを守る役割があるため、現象するとからだの抵抗力が低下し、風邪や肺炎などの感染症が起こりやすくなります。 

 好中球は一般的に、TC療法の点滴後7~14日で最も少なくなり、その後3週間ほどで回復します。好中球の減少による自覚症状はありませんが、この期間は感染しやすい時期ですので十分に気を付けていただき、感染予防のためのケアを行いましょう。 


 【骨髄抑制を伴う症状と治療への影響】

白血球減少→易感染(感染:発熱、呼吸・循環障害など)

血小板減少→易出血(出血:歯肉・鼻出血、消化管出血、内臓出血など)

赤血球減少→貧血症状(めまい、立ち眩み、倦怠感、息切れ、呼吸困難感、心不全など)


 治療への影響→生命の危機、体力の消耗、闘病意欲の低下、治療継続への不安・不信→治療の延期・中止につながる。 

 【感染兆候を観察する指標となる白血球】

白血球は、外部から体内に侵入した、細菌・ウイルスなどの異物の排除と、腫瘍細胞や役目を終えた細胞の排除などの役割をする造血幹細胞由来の細胞です。

白血球は、好中球、好塩基球、単球、リンパ球に分類され、その中でも好中球は、白血球全体の50~70%を占めます。

好中球は、細菌や真菌などの感染には最初に集結し、かつ主に対処することから、白血球の中でも感染徴候を観察していく上では重要な指標となります。


 白血球の基準値 

白血球 3500~9500/㎕、

好中球 白血球中の40.0~70.0%

好中球の寿命  血液内では1日以内      


 セルフケアのポイント

・食事前、トイレの後、外出から帰ってきたときなどは石鹸でよく手を洗い、こまめにうがいをしましょう。

・身体を清潔に保ちましょう。

・歯磨きは柔らかい歯ブラシを使い、口の中を傷つけないようにやさしく磨きましょう。

・カミソリは注意して使用しましょう。

・外出時はマスクを着用し、人込みはなるべく避けましょう。

・風邪をひいている人や、小さなお子様との面会は控えましょう。

・部屋のホコリがたまらないように掃除をしましょう。

・ペットや草花にもなるべく近づかないようにしましょう。

・下着など身に着けるものを清潔にしましょう。

・刺身や生野菜などの生ものを避け、加熱したものを食べるほうがよいです。


 こんなときにはすぐに連絡を!

・わきの下の体温が、37.5度以上ある。

・咳がでる。

・のどに痛みがある。

・寒気がする。

・排尿時に痛い、焼けるような熱さを感じる。

・腰やわき腹に痛みがある。

 発熱を一緒に下痢症状もある場合は、直ちに医療機関に連絡してください! 


 ※化学療法中は一時的な免疫能低下状態となるため、インフルエンザの罹患を予防する不活化インフルエンザワクチンの接種が推奨され、家族の接種も望まれます。接種のタイミングは、レジメンや骨髄抑制の状態により安全な接種のタイミングが異なるため、医師に確認してください。 

 【貧血とは】

赤血球には、酸素と二酸化炭素の運搬をするという役割があります。貧血は、赤血球中にあるヘモグロビンが減少した状態です。皮膚・粘膜の蒼白、息切れ、動悸、嗜眠、易疲労感として自覚されます。 

 貧血時に注意すること

・めまいがあるときには、安静にしましょう。十分な休息をとることも大事です。

・症状が出たときに最小限の動きで済むように、環境を整えておきましょう。

・血行が悪くなり手足が冷えますので、体を温めましょう。

・熱いお湯での入浴やシャワーは体の負担になるので、ぬるめのお湯で疲れない程度にしましょう。

・安全のために、急激な動きは避け、ゆっくり動きましょう。・衣類や寝具などで保温を行いましょう。

 【出血傾向とは】

血小板には、血管が損傷したときに集合してその傷口をふさぎ、出血を止める作用があります。出血傾向は、この血小板の減少によって、止血機序が破綻し、出血が抑制できなくなるために起こります。 

 出血傾向時に注意すること

・転倒・打撲・外傷の予防に努めましょう。

・歯ぐきから出血しやすくなっているので、歯磨きは柔らかい歯ブラシを使用して歯肉を傷つけないようにしましょう。

・鼻血が出やすくなっているので、鼻をかむときは強くかまないようにしましょう。

・皮膚が乾燥すると傷つきやすくなるので、保湿クリームを使うとよいです。

・髭剃りは、皮膚を傷つけにくい電気カミソリの使用が望ましいです。

・注射や採血後は5分以上しっかり押さえ、止血を確認しましょう。

・排便による出血を予防するために、整腸剤などを使用する場合があります。

・下着や衣服による、体の圧迫を最小限にしましょう。

・ぶつかったりするだけでもアザになりやすいので、障害となるものは片づけて、転倒・転落のないように環境を整えましょう。

参考・引用書籍

ナツメ社 がん化学療法のケア

エーザイ株式会社 ドセタキセル・シクロフォスファミド療法を受けられる方へ

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