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変幻自在、80年代の安全地帯/玉置浩二〈悲しみにさよなら〉〈好きさ〉〈じれったい〉〈キ・ツ・イ〉〈I LOVE YOUからはじめよう〉

NHK紅白歌合戦の出場者が発表になった。近年は追加枠でいろいろとビックネームが発表されるので、どんな人が出てくるのか、年末まで楽しみだ。

昨年2022年の紅白は、けっこう面白かった。桑田佳祐さん達の同学年バンドもよかったけど、印象深かったのが安全地帯。
歌ったのは「I LOVE YOUからはじめよう」(1988)

4世代そろった義実家でワイワイ、50代の義兄たちは「懐かしいなぁ」、20代の甥は「玉置浩二?田園なら知ってるけど」なんて口々に言いながら観ていた。

私は、リアルタイムでこの曲を覚えている。誰もが知る超ヒット曲というわけではないけど、大正解。底抜けに明るくてスケールが大きくて、紅白という大舞台にとてもふさわしかった。(動画は2017年ライブの映像)

甥っ子の言った「田園」(1996)は玉置さんソロ。
※この記事では安全地帯の曲と玉置さんソロの曲をまぜて語ります。ファンの方、ご了承ください🙇‍♀️

私の母(今70代)は「田園」が発表された頃、
「玉置浩二は『ワインレッドの心』みたいな歌を歌ってすごくよかったのに、こんな ”ジャカスカ ジャカスカ” したのを歌うなんて…」
と嘆いていた。このミュージックビデオも、だいぶはじけてるもんね。
それがいまや、当時を知らない若者にも知られるような名曲に。
でも母のような「金妻きんつま世代」の女性にはやっぱり、「ワインレッドの心」みたいなムーディな曲の方が人気なのだろうな。

その「ワインレッド~」をぎゅっと濃縮したような曲が「好きさ」(1986)。濃厚かつ短い(2分49秒)ところがいい。余韻がある。

少し前同級生の友人とカラオケに行き、友人がこれを歌った。小学生の頃好きだったんだ、と言う。
私「随分と大人っぽいのを」
友「『めぞん一刻』の主題歌だったんだよ」
私「合わなくない?」
友「いや合ってたんだよ」
話し終わって気づいたがこの会話、20年くらい前にもした。多分、彼女と一緒にカラオケに行く度に同じ会話をしている。なんなら30年くらい前にも。

安全地帯は「碧い瞳のエリス」(1985)「プルシアンブルーの肖像」(1986)などでは、かなり耽美的な世界観を表現していた。

がっつりメイクをしたミステリアスな玉置さんは、子ども心にちょっと怖かった(上のジャケ写のイメージ)。でもあれは今思うと、ヴィジュアル系のはしりだった。サウンドは後のヴィジュアル系とは違うけど、世界観的なところで影響を与えた…かもしれない。

そんな耽美路線から毛色が変わって、クールになっているのが「じれったい」(1987)
プリンスやデヴィッド・ボウイを思わせるような独特なリズムとビートに玉置さんのヴォーカルがハマりまくって、とにかくかっこいい。

「じれったい」に近いサウンドで、玉置さんソロの「キ・ツ・イ」(1989)。たしか玉置さん主演のドラマの主題歌だった。
女声コーラスと随所に入る玉置さんのフェイクが、かなりセクシーな雰囲気。中学の頃これを録音ダビングしてオリジナルカセットに入れていた記憶があって、改めて聴きなおして「中学生でこんなの聴いてたのか…」と苦笑してしまった。

ガラッと違った雰囲気なのが「萠黄色のスナップ」(1982)。安全地帯のデビュー曲。ベスト盤で聴いて知り、好きになった。
彼らのふるさとは、北海道旭川市。
私は北海道を旅するのが大好き。これを聴くと、北海道の雄大な景色がバーッと目に浮かぶ。とてもハートフルな1曲。

*  *  *  *  *

正直、安全地帯、玉置さんが多様な曲を歌っているイメージがあまりなかった。でも改めて取り上げてみると、実に様々な曲があって驚いた。

それでもなお「いろいろ挑戦しているなぁ」と感じさせなかったのは、それだけ玉置さん、安全地帯のメンバーの皆さんが、どの曲も違和感なく表現しきっていたから。どれを聴いても「これは、彼らの曲でしかありえない」と思ってしまうのだ。

*  *  *  *  *

最後にもう1曲。

悲しみにさよなら(1985)は幼い頃、テレビでラジオで街で、本当によく流れていた。
恋愛の曲だけど、私にとっては違ったイメージがある。これを聴くと、その頃住んでいた小さな社宅や賑やかな街を、本当に鮮やかに思い出すのだ。

泣かないでひとりで ほゝえんでみつめて
あなたのそばにいるから
悲しみにさよなら ほゝえんでさよなら
ひとりじゃないさ

「悲しみにさよなら」より
  作詞:松井五郎  作曲:玉置浩二

あの頃から、時間も場所も、随分遠くまで来てしまった。
でもきっと大丈夫。

優しい玉置さんの声はまるで、そんな風に励ましてくれているようだ。

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