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Suchmosは、タバコの匂い。不思議な歌詞としびれるベースにひたった夏〈MINT〉〈Get Lady〉〈STAY TUNE〉

Suchmosサチモスって? という方にはこの曲。
聴いたことのある方が多いはず。

「STAY TUNE」は、2016年HONDA「VEZELヴェゼル」のCMソングになった。
バブル以来廃れるいっぽうだった「若者向けのかっこいいクルマのCM」を成立させた、どえらいかっこいい一曲。

第2弾CMで使用された「808」は、以前こちらの記事で紹介した。

Suchmosは、2010年代に登場したジャンル「ネオシティポップ」の筆頭とされている。
でも、よく並んで語られるNulbarich(ナルバリッチ)と比べると、もっとソウルフルでゴリゴリ硬派、濃厚でメロウ。R&Bに近い感じ。


20年ほど前私は、ソウル・R&Bというジャンルに魅かれ、さまざまな曲を聴いた。日本でも70年代や80年代から素敵なアーティストはいたが、なかなかジャンル自体はメジャーにならないようだった。

20年前はついにこのR&Bが、日本でブレイクした時期だった。MISIAさんや平井堅さんなど、超メジャー級の活躍をするアーティストが現れ、このままこのジャンルはどんどん発展していくだろう、というワクワク感があった。

でも20年後の今、そうなってはいない。
今の時代広くヒットするのは、親しみやすくポップなもの。
とんでもない実力者たち(米津玄師さんや藤井風さんなど)がそれを作って歌っていて、抜群に良いものがたくさんあるし、私もよく聴く。


でも私が一番好きなのは、もっと濃厚でメロウで、タバコの匂いがするくらいスモーキーなものなのだ。
(タバコは嫌いだけど)

今の人たちはそういうの好きじゃないんだろうな、とあきらめていた私の前に現れたのが、Suchmos。

いやそんなことない。全然好きですよ。
ていうか、昔のよりもっとカッコよくできますよ。

まるで、そう言ってくれるかのようだった。


私がこの夏夢中になったのは、「STAY TUNE」とはだいぶちがった2曲。

「Get Lady」はまさに、メロウでタバコの匂い。ただただカッコいい。

この夏、何度も何度も聴いた。寝る前にイヤホンをつけて、1人こっそり。そんな曲。

2番に入る前のつなぎの部分(1:42~46あたり)のベースが、まるで心臓の鼓動みたいでしびれるのだ。


「MINT」は、Suchmosのライブ定番曲だったそう。(出典

歌詞は言葉遊びのように不思議。
Suchmosの歌詞はだいたい語感優先か、何かの暗喩のように意味ありげ。

「MINT」の歌詞はごく一部だけメッセージ性があり、すごく印象的。

錆びた弦で良い
破けたジーンズで良い
孤独な夜が あっていい
何も無くても笑えていればいい
何も無くても歩けさえすればいい

「MINT」歌詞より抜粋(作詞:YONCE)

ベース音がうねるように沿うこの部分(1:53~)が、とても温かい。ライブの定番と聞いて納得した。


「MINT」でも「Get Lady」でも、こんなにベースが耳に残ってしまうのには理由がある。
ベースのHSUさんが2021年に急逝したのだ。
Suchmosはその数か月前から活動休止状態にあり、今に至る。

Suchmosとしての活動再開は、ないのだろうか。


孤独な夜が あっていい
何も無くても笑えていればいい……

「MINT」の歌詞に、胸が痛む。



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