日記と短歌 泳ぐ春
泳ぐ春 #tanka
✲ ✲ ✲
遠い海を見るはずだったふたり今は別々の海を目指してるふたり
わたしたち一人でもうまくやってける これはそういう愛だったから
正しいことばっか言わんでにせものの花野にわたしを置き去りにして
ちがうのに だって笑ってくれるからわたしいつまでも荒れ狂う水
心臓の場所をはじめて知る腕の中は苦しくて嬉しい、嬉しい
春の中を泳ぐときってこんな気持ち泣かないでよって笑われながら
ずっとってほんとにずっとのことだったきみのいちばんになれてよかった
1/21(日) 日記
彼は元恋人・ヤマモトさんの親友で、ヤマモトさんを通じて知り合った。
私、ヤマモトさん、彼で遊んだことも、そこに共通の友人カップルを混ぜて遊んだこともある。
ヤマモトさんと別れてから、頻繁にサシで誘われるようになった。
彼は結構変わった人で(人との距離感にバグがあるタイプ)、私への誘いに関しても恋愛感情的なものは一切なくシンプルに友人として誘ってくれているだけなのだけど、私はそれに少し困惑していた。
私だったら友達の元恋人(しかも数回しか会ったことない、そこまで親密なわけでもない相手)を頻繁に遊びに誘ったりしないから。
ヤマモトさんにもそれとなく相談したりなんだかんだ理由をつけて断ったりしていたのだけど、彼からしたら「ただ仲の良い友人を誘ってるだけ」だから誘いは一向に減らず、いつかの予定ばかりが増えていった。
それから何週間か経った日、突然「ヤマモトから、アカネちゃんが俺から連絡めっちゃ来るって言ってたって聞いた。迷惑でしたね、ごめん」と連絡が来た。
彼が不眠症持ちなのも情緒が揺らぎやすいことも知っていたので、傷つけたくなくて「語弊があるな、めっちゃ誘ってくれるけど本当に忙しくて行けない的なことは言ったよ」と返信する。
丸く収まりますように、と思っていたのに、スイッチが入ってしまった彼からヤマモトさんに対するいわれのない、勘違いも甚だしい長文愚痴ラインが来た。
「いつもいろんな分野でヤマモトから勝負を挑まれてきた、でもその度に俺が勝ってしまっていた。アカネちゃんがいるときに初めてヤマモトが俺に勝ったと思える瞬間があって嬉しかったんだと思う。
ヤマモトにとって俺はそういう(敵対視した、妬み嫉みの対象となる)存在で、そんな俺がかつては自分のテリトリー内にいたアカネちゃんと仲良くしてるのが面白くない状況なんだと思う」
「写真展も美術館もアカネちゃんと見たいと思ったから誘った、でもヤマモトがなんか言ってくるかもなとは少し考えた」
みたいなことが文脈も文法もちぐはぐなまま長々と書いてあって、もうどこから突っ込めばいいのか分からないくらい途方に暮れてしまった。
もちろんヤマモトさんは彼のことを敵対視したり勝ち負けで物事を見たりましてや妬んだりなんて一切してなくて(というか妬むような対象ではそもそもなくて)、
むしろ学歴とか職歴とか所持品とか、そういう外側のスペックで他人と自分を勝手に比較して劣等感に苛まれ、ところ構わず衝突事故を起こしているのは彼の方だった。
私もヤマモトさんも自分の不甲斐なさを他人のせいにしたり他人と自分を比べて妬んだりなんてしない。
その長文が私に対しての暴言か、百歩譲って他のだれかに対してのものだったら許せたと思う。
特に気にも止めず、こりゃ鬱状態に入ったな〜とケアの方向に舵を切れたと思う。
けど、ヤマモトさんへのことだったのがだめだった。
本当に最悪な気持ちになり、その長文への返信を6時間くらいかけてゆっくりゆっくり3倍の文量で書いた。
「きみたちの関係性のことは私には分からないし、きみがそう感じているのならそうなのかもしれないけど」と書いたあとに、「でもごめん、ちょっと何言ってるか分からないな」と続けた。
途中、どうしようもなくなってヤマモトさんに電話をした。
声を聞いたら突発的に涙が出て、「泣いちゃう!」と言ったら「泣かないでよ〜」と笑われてもっと泣いた。
諸々の経緯は彼から最初の連絡が来た段階で伝えていたのだけど、ヤマモトさんは私の話を遮ることなくうんうんと聞き続けた。
彼の友達を悪く言ってることも、こんなことを本人に伝えて傷つけてしまってることも不甲斐なかった。
俺はまったく傷ついてないし、彼に対しても怒ってもないよ、むしろ嫌な気持ちにさせてごめんねと繰り返し言われ、私は私が好きなのはヤマモトさんだけなのに、傷ついてほしくないのはヤマモトさんだけで、あとは全部どうだっていいのに、と言いながらぐずぐず泣いた。
ヤマモトさんは俺もだよ、と言いながらずっと笑っていた。
数時間かけて書いた渾身の長文を読んでもらい、素晴らしい文章ですとお墨付きをもらった。
アカネはやさしいよと言われ、絶対にそんなことないのにと思った。
ヤマモトさんとの電話を「今からアズサちゃん(母)ともんじゃ食べるから!」と唐突に切った。
情緒が不安定なのは私の方かもしれない。
いざ送らん!と彼とのトーク画面を開くと、さっきの文面がすべて送信取り消しされていた。
私をぶん殴った文章はなかったことにされ、ふざけんなよと心底思った。
自分の加害性に責任と覚悟を持てないやつが、被害者面ばっかうまくなってんなよ、という一文を加えるか悩み、これは送ったところで私が気持ちよくなるだけだなと思ってやめた。
送るか迷ったけど送るね、という一言をつけて長々書き連ねた文章をトーク画面に放り投げる。
傷つけると分かってる文章を相手に送るの、こちら側もきちんと傷つくなと思った。
ヤマモトさんから「麻辣春雨いくらでもおごるよ」と連絡が来ていて、「それはマジでお願い」と返した。
と、いう日を経て詠んだ短歌が冒頭のもの。
バカデカい愛を目の当たりにすると意味もなく涙が出るんだな〜と思った。いい気付き。
久しぶりに短歌がするする詠めてうれしかった。
ポジだろうがネガだろうが、琴線に触れないとアウトプットってできないんすね、、
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