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日記 カウントダウンの行方

11/11(土) 日記

劇場勤務時代の仲良したちと浅草にもんじゃを食べに行った。

私の前の代の支配人(便宜上、ここから先は「支配人」と記載)とパパになったトミヤマさん(仮名、会社員兼脚本家)、爆モテクールボーイのカトウくん(仮名、もう私しか爆モテクールボーイと呼んでない)と私の4人。

芸大院生のヒライくん(仮名、最近恋愛で悩み中らしい)は修論が忙しく欠席。

なんだかんだ会うのは久しぶりで、トミヤマさんは6月にかけた私のパーマを見て「あれ、印象変わりましたね!」と言っていた。
「そうなんです、変わらずキュートですよね」と自己申告したら「中身はまるで変わってなくて安心しました!!」と言われた。

全員が同じ場所で働いていた時代があるなんて、と毎回思う。
日記を晒していたこともあり、あれは私が作り出した夢物語、、?みたいな感覚があるから、集まる度に安心する。よかった現実で。


トミヤマさんベイビーはすくすく成長中だそうで、最近は「うんめーーーーい!!!」と泣くようになったと言っていた。
子どもはあんまり得意じゃないけど、運命ベイビーにはお目にかかりたい。ご利益ありそう。

カトウくんが「俺最近YouTubeで赤ちゃんの動画ばっかり見てて。それ見てると本当に泣きそうになるんすよね」と言うのに対し、支配人が「なんで泣きそうになるの?全然分からない」と切り捨てていて面白かった。

赤ちゃんがどうってよりも、なぜか分からないけど自分の琴線に触れてしまうものってあるじゃないですか、と言ったら、あまりにも懐疑的な顔で首を傾げていて笑ってしまう。
別に嘘でも頷いておけばいいのに、そうしないところが支配人の愛おしいところだなと思った。

私はめちゃくちゃハッピーなシーンに出くわすと突発的に涙が出そうになります、と言ったら、トミヤマさんが首取れるんじゃないかってくらい頷いていた。

もんじゃもお好み焼きもテーブルに備え付けの鉄板でセルフで作るタイプだった。

こういう時に動いてくれるのはトミヤマさん。
私はやる気にならず、前に座っているカトウくんに全てを託す。
かろうじて、完成したお好み焼きの取り分けだけはやった。
ら、カトウくん(2こ下)に「取り分けてくれるの?偉いね」と言われてウケた。

もんじゃは最初の混ぜるところだけやった。
作るのはトミヤマさんが(信じられないくらい汗かきながら)やってくれた。

支配人は去年の春に体調を崩されて、そこから治療と入退院を繰り返している。
体調が安定しているタイミングでご飯に行っているのだけど、毎回顔を合わせる度に心のどこかで「よかった、まだ大丈夫だ」と思っている。

いつまでも変わらないでいてほしいのに、いつまでも変わらないものなんてこの世に存在しなくて腹が立つ。不変であれよ。

支配人がなんてことないように病状を話し、それをトミヤマさんが泣きそうな顔で聞く。
私は口角を上げて、ばかみたいに明るい相づちを打つ。
カトウくんの「次の日程、決めましょうよ」という淡々とした言葉に安心する。

次はヒライくんも入れてちゃんこ鍋を食べに行くことになった。
トミヤマさんが運命ベイビーも連れてきてくれるらしく、カトウくんは「マジで泣いたらどうしよ、、」と言っていた。


夜ご飯は前職の先輩・タカヤマさん(仮名、7こ上、同期と元恋人・ヤマモトさんのマブな先輩。なのでつまり私もマブ)と地中海料理を食べた。

タカヤマさんとは最寄りが同じなのだけど、引っ越す前にこの街で会いたくて私から誘った。

彼にはヤマモトさん経由で破局を伝えていたので、会った瞬間「ご存知の通り、別れました〜」とピースする。

もう元気なの?と聞かれて、別れてからは元気ですね、と答える。
確定事項として別れが見えている、カウントダウンの期間が一番しんどかったかも、と言ったら「超わかるわ、、」と深く深く頷いていた。

地中海料理屋さんに着き、何食べます?とメニューを眺めている時に「あのさぁ、俺、離婚したのね」と言われ、ここ数ヶ月で一番デカい声の「マジで!!!!????」が出た。

「だからさっきのカウントダウンの話、めちゃくちゃ分かるんだよね」と言われ、いやレベルが違いすぎるだろ、、と思った。

タカヤマさんの結婚生活は10年で、離婚の理由はその10年間の中で出来た小さな小さな傷が途方もなく大きくなってしまったから。

離婚の一年くらい前から心がうまく動かなくなってカウンセリングを受けていて、最近やっと普通に話せるようになってきたんだよね、と笑っていた。
小4と小1のお子さんにも、今年まだ4回しか会えていないらしい。

タカヤマさんはとにかく優しくて自己犠牲的でなおかつ自己肯定感が低くて、「うまくいかなかったのは俺ができていなかったから」と思ってしまう人。
一見明るくて気さくな人ほど、繊細で弱くて過剰な気遣い屋さんで、だから自分へのハードルも高くなりがちだよな、と思う。

私も自分のことはそんなに気に入ってないです、と言ったら、「気に入ってない」という距離の取り方いいね、と言われた。
あんまり考えたことがなかった、そうなのか。

自分の好きな(気に入っている)ところなんてひとつもないよ、と言うので、じゃあ代わりに私が言いましょうか?タカヤマさんの好きなところ、と言ったら笑っていた。


私も自分に課したハードルが鬼高いタイプだし、評価軸を他人に委ねられないから誰に褒められても「いや私自身は納得してないんすよね!!!」としかならずずっと自信がないのだけど、

この日タカヤマさんと会ってからずっと「まあでも私あなたにとってあまりにも可愛い後輩ですしね!」のスタンスを崩さず、どこを褒められても一切否定せずに「そうなんですよね」と頷いていたことに終盤で気付き、エッ自己肯定感バチクソ高くない、、?????となった。

タカヤマさんは私が図々しく肯定するたびにゲラゲラ笑っていた。そりゃ笑うしかない。

夕方。

昔、ソフレだったバンドマン・タキガワくん(仮名、よく考えるとソフレだったバンドマンという肩書き、全然意味わからないな)に「そのアンバランスな自信のなさ、なんなの?」と言われたことがあるのだけど、同じことをタカヤマさんにも言われた。

んなこと分かんないわよ!と思いつつ、私はたぶん根拠がほしいんだろうなとも思った。
自分に対しての、揺るがない根拠と説得力。激ムズ。


帰りは駅から20分の距離をタカヤマさんが送ってくれた。
最寄りが同じとはいえ方向は真逆なのに申し訳なくなる。

「下心出てたら言ってね!?好きになっちゃう可能性があるから!」と言っていたけど、優しいこの人が自分の後輩(ヤマモトさん)の元カノに手を出すはずもなく、家に着いた2秒後には「じゃ!」と来た道を戻っていった。

あの地獄のカウントダウンも、いずれハッピーエンドに繋がるのだろうな、と思った。

救われない信仰ばかりの星今日もわたしの光はわたしと思う #tanka

#ほんじつのBGM #宗藤竜太 #いじわる

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