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日記 綴じ蓋をさがす

10/24(火) 日記

同僚のミヤモトさん(仮名、5こも年下の気も我もつえ〜女(私)の暴挙を笑って許してくれるウルトラ優しい34歳独身男性)と商談に向かう。

私はミヤモトさんと二人になる度に「最近あった面白い話をしてください」と言い、ミヤモトさんは毎回頭を悩ませながら一生懸命近況を話してくれる。

あまりにも面白トピックスがないときはマッチングアプリで出会った女の子とのご飯の話や誘われて行った合コンの話を、文字通り身を削りながらしてくれるから楽しい気持ちになる。

最近はアプリで出会った子に2回目のご飯の当日にドタキャンされてしまったらしい。

ミヤモトさんの良さが分からないなんて!という気持ちと、まあでもドタキャンされそうなのもちょっと分かるな、、という気持ちが入り混じり、そんなことする人もいるんですね〜とクソほどつまらない返答で会話を終わらせてしまった。

アポイントの時間までまだ10分以上あり、受付の前にあるベンチに座る。
この季節の、この時間帯の空がいちばん綺麗だと思う。

あまりにも綺麗で「ミヤモトさん見て、空きれい!」と言ってみたけど、ダサい恋愛ドラマのダサいヒロインのセリフみたいですぐに後悔した。

ミヤモトさんは「わー本当だ、めっちゃ綺麗!」とはしゃぎだし、私の自己嫌悪には微塵も気づいていなかった。

これは熱海の夕方。見たままの色をフィルムで残せて嬉しかった。

今度は私が面白トピックスを披露するターンで、ミヤモトさんが何気なく聞いた「最近彼氏とどこか行った?」の言葉に、なるべくなんてことないトーンで「あ〜私別れたんですよね」と答える。

案の定ミヤモトさんは「マジで!!??」とバカデカボイスをフロア中に響かせて、受付のお姉さんをビビらせていた。

ミヤモトさんは理由とか原因とかは一切聞かず、そっか、そうなんだ、、と繰り返していた。

4年ぶりに市場に戻ってきました〜とピースしたら、いやもうそりゃあね、それはそれは引く手あまただと思うよ、としどろもどろ言っていて面白かった。絶対に思ってなくてウケる。

ミヤモトさんには(元)彼のウルトラ優しいエピソード(深夜に虫が出る度に車を一時間半走らせて私の家まで来て退治してくれていた、など)をたくさんしていたので、もうあんなに優しくて愛情深い人には出会えないかもしれない、次に恋人ができてもきっと比べてしまう、とつい溢してしまった。

ミヤモトさんは真剣な顔で「持論だけど、」と切り出して、(もっといい人いるよ、とか、意外と忘れられるもんだよ、とか、そういうことを言われるんだろうなと思っていたら)「工藤さんは優しい人間を引き寄せるタイプだと思うから大丈夫」と言われた。

なんか良いことを言われた気がして喜びかけたのだけど、「工藤さんみたいな人を好きになる人はきっと喜んで虫を退治しに行くタイプだと思う!し、恋愛に限らず、工藤さんは人間関係を築く上で本能的にそういう人を選んでると思うよ!」とのことで、

めちゃくちゃオブラートに包んだ割れ鍋に綴じ蓋的な話で笑ってしまった。

だから次に付き合う人も深夜に車を走らせて虫を退治しに来てくれるよ!とミヤモトさんは言い、私はそうだといいですよね、と笑って返した。

でも私は他の誰でもなく、あの人に来てほしかったんですよね、ということは言わなかった。

帰路

パン屋からの帰り道、タクシー列が並んでいたので20分の道のりを歩いて帰る。
つい一ヶ月前までは東北沢で降り、改札前で待っていてくれる人の元に駆け寄っていたという事実、もうぜんぶ夢みたいだな、と思った。

明日も仕事。

最後だと分かってしまうあまりにもエンドロールが似合う夕焼け #tanka

#ほんじつのBGM #ズーカラデル #秘密

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