祖母の料理

昨日の続きのようなもの。

いいとこのお嬢様だった祖母を、祖父は孫から見てもわかるくらい甘やかしていた。今も甘やかしている。
ド田舎の家で暮らすことになってとても不便で嫌だったし、近所の人から虐められていたと祖母は話していた。本当かどうかはわからないが、50年以上同じ愚痴を言っているので、祖母の中では根深いものなのだろう。
習い事を沢山して友達と旅行へ行って。優雅な専業主婦をしていた祖母は、家事はあまり得意でなかったのだと思う。陶芸はするが皿洗いは面倒。ルンバが発売されだした時真っ先に購入していた。
多分料理も苦手だ。祖父は外食が多い仕事だったため、夫の為に作るという感覚はなかったと思う。そして甘党すぎて味覚が特殊だ。母が入院して、祖母がご飯を作るという期間が何度かあったが、スーパーのお惣菜が多かった。作ったとしても激甘の唐揚げや味噌汁だった。
祖母が料理をしていた期間は、父はお弁当を買っていた。そして私に「早くお母さんに料理を教わりなさい」と言っていた。
(この祖母の料理を食べたり避けたりしていた父が、「同じ味」に固執する人間になったのは何故だろう。不思議だ)

祖母は母の事が苦手だ。家事全般得意で横暴な父にも文句を言わない。質素倹約に励み(祖母から見れば)教育熱心な母は、祖母にとって理解できない人種だ。
「○○(母)さんは上手くやりくりするから」と1食200円の計算で祖父母の食費を渡していた。(ちなみに東京都の中学校の給食費は1食あたり305円らしい)
そのくせに「たまにはすき焼きとか食べたいわよねえ」等と言う。
料理番組がやっていると「美味しそう。○○さん作れるでしょ?」と必ず言う。作ったら父が文句を言うと知っているのに。
母は「あなたの息子がうるさいから作りません」とは言えない。

あまりに長引く場合はしょうがないので「私も食べたい。作ってみる」と言う事にしていた。私が作るならば、祖母はお金を出していい食材を買ってくる。母は「やぎと祖母がなんか作った」と言える。父が文句を言ってカップ麺を食べ始める以外の問題点は無い。

祖母が買ってくるか母に嫌味を言うのをやめるかですぐ解決する。しかしこの誰の得にもならない茶番は何度もあった。
最悪だったのはおせちを作る時だ。来客の分も作るため、流石に祖母も作る。父対策と「○○さんはこんなふうに作るのね」を回避するために、母は毎年同じレシピ本を忠実に守る。しかしそつがない動きは祖母の機嫌を悪くする。
この2人に挟まれて料理をするのは嫌だった。


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