代替可能な黒ボブ女

大学に入りたての頃、私は髪が長くてその辺の女子大生デビューの例に漏れず、ブリーチなしの茶髪をなびかせていた。一年くらいそういう時期は続いたんだけど、その途中で二個上のサークルの先輩とかにインスピレーションを受けてノンノみたいな服装に飽き飽きするようになってはきていた。


極めつけは最初の彼氏だった。浅野いにおが好きだった元カレは黒ボブ女のSNS画像を熱心にいいねしていた。私の方でも当時は、そこまでアイデンティが固まっていなかったので見事にその趣味に乗じ、美容院で「黒ボブにしてください」と注文した。これが意外と彼氏以外からも評判がよく、以来デフォルトがコレとなった。

自身の話をなおざりにしていたが、私も私で「男のタイプは?」と聞かれた際、「マッシュならなんでもいい(笑)」と答えるのだった。


そのあと起こったことがわかるだろうか。元カレとは私の肥大化した承認欲求から起きた過ちにより別れを余儀なくされ、私はまた市場へと逆戻りした。すると黒ボブであることによって分良くターゲットとするマッシュ男が釣れるようになった。


今回のタイトル「代替可能」であるが、やはり世には流行り廃りがあって、またその中にも細かいカテゴライズがある。以前、マッチングアプリで出会った男が「恋人なんて誰相手でも大体似たようなことをするから、代替可能なものさ」と言っていた。その意見には私はどちらかと言えば賛成である。ある程度射程に存在する人であって、妥協の出来る程度には成長した人間が正しく寄れば、結果は同じだと思うし、日々紡がれる偶然は必然なんかではない。私は非運命論者だ。
本当のことはわからないが21歳の私は少なくとも人間は結局「個」だと思っていて、個人がスワイプされるカード越しに面白くなければ、またカードを見極める解像度を磨いていかねば、理想郷へとは辿り着けないと考えている。果て、出来なかった場合は「諦め」の方向へと舵を切るよう自分をアルコールなんかで誤魔化している。

話は飛躍したが、流行になぞらえ、また自身の趣味の傾向になぞらえて見た目を整えることは有益であると考える。また、そこに辿り着けたことだけで一旦は万々歳なのである。

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