お茶を片手に読む話/茶屋すずわの友人

お茶と暮らしの店『茶屋すずわ』を営む店主です。こちらのnoteは僕の人生で出会った中で…

お茶を片手に読む話/茶屋すずわの友人

お茶と暮らしの店『茶屋すずわ』を営む店主です。こちらのnoteは僕の人生で出会った中で面白人間ナンバー3に入るライター山崎和之(仮名)が担当してます。お茶があるだかないだかわからないけど最後にはお茶が出てくる物語。少しの笑いの提供と大きな見返りを期待してます。

最近の記事

孤高の最期のお話

第52話 今年はキンモクセイが2度咲いた。 私の住む神奈川県では8月中旬から9月にかけて秋雨前線が停滞し、季節外れの低温にあてられたキンモクセイは9月11日にはその穏やかな香を鼻腔に届けた。そして1ヶ月ほど経った今、早とちりを恥じるようにまたも健気に咲いている。 9月28日、親父が旅立った。77歳だった。 ここで悲しい話題というのは書くべきかどうか、しばしためらったが、これほどまでに心が揺り動いた話題を書かずして何を書こうものか。そう思って今、iPhoneの文字列をこ

    • 中高年でも分かるアポトーシスの楽しみ方のお話

      第51話 どうもこんにちは。バスの運行中、ふとマイクがオンになっていることを忘れ「訪れる〜べき時がきた〜♪」と、オフィシャル髭男dismの「アポトーシス」を口ずさんでしまい車内のお客さん全員の頭に?マークを乗っけた者です。何がきたんだよ・・・。 さて冒頭から推察される通り、ただいま40代おっさんバス運転士はアポトーシスに夢中である。この曲を初めて聴いたとき、私はその世界観にド肝を抜かれた。家族でキャンプ場に行った際、息子とカブトムシを捕まえることになり、じゃあトイレを済ま

      • 陰口の処方箋のお話

        第50話 妻がパート先の人間関係でトラブルがあったらしく、台所で涙を流していた。 顛末を聞いてみると、今まで妻自身仲が良いと思っていたパート先のKさん(中年女性)と、今後さらに建設的な付き合いを続けていく為にKさんの目に余る陰口癖、そして陰口を叩いた標的と楽しそうに接する二面性(言動と行動の不一致)をオブラートに包めるだけ包んで指摘したそうだ。するとあら不思議。Kさんの陰口の標的が妻に変わった。という話である。 女子小中学生の間で繰り広げられるイジメの構図だなあと思った。

        • 嘲笑のお話

          第49話 7月17日(土)。暑いってんで、6歳の息子と2人で神奈川県は藤沢市の海水浴場、鵠沼海岸に行ってきた。いわゆる「ザ・湘南ビーチ」である。 昨年は訳の分からない流行り病で海水浴場が規制され、一度も海に連れて行けなかった為、6歳児ときたらそれはもう脱法ハーブに手ェ出しました?って職質かけたいくらいトチ狂ったように海を楽しんでくれた。 一昨年は海水に足を踏み入れることすら億劫だった息子の成長を垣間見て、私としてはこの上なく幸せな気持ちになった。 さてそんな鵠沼海岸であ

          クリボーのお話

          第48話 それは昭和初期に起きた今なお世間から抹消されようとしている、ある事件についてお話ししたい。 山梨県のとある山村に、貧しくとも仲睦まじく暮らす4人の家族の姿があった。父親の平田岩男(以下全て仮名)は椎茸栽培を生業としていた。 一般的にこの集落の成人男性は春と秋に椎茸栽培をし、その他の季節は林業を兼業する者が多かった。しかし岩男は幼少の頃から身体が弱く、春と秋に椎茸を収穫するのがやっとのことだった。だが元来の凝り性に加えて手先の器用だった岩男はホダ木や植菌方法にこだ

          時間の投資のお話

          第47話 不況である。いつまでも見通しの付かない今後の情勢に不安の方も多いと思う。今日はそんな方に向けて、40代、妻1子1、3人家族、都内バス運転士のコロナ禍における心境と行動の変化をお伝えしたい。 昨日。 会社で事務員に残業を頼まれたので「今日は家でビールを飲んだりミニトマトに水をあげたり息子とマリオメーカー2をしなければならないから残れない。本当に申し訳ない」と、どこに申し訳ない要素があるのか全く理解できない返答をした。 すると周りにいた乗務員から「もったいねー!

          蛭ヶ岳の仙人のお話

          第46話 5月後半。 梅雨入り前の爽やかな温度と湿度に包まれたひととき。本来であれば多くの人が行楽に訪れ、新緑に目を奪われるシーズンである。 しかし世界中の人々の生活様式を一転させた肺炎ウィルスによって、去年同様、今年の5月も外出がはばかられる事態となってしまっている。子供が可哀想だ。きっと将来、この時期に幼少期を過ごした外出抑制世代は感受性に欠けている、なんて統計データが発表されることと思う。 マンボウだのアルコール提供禁止だのワクチン摂取申請の煩雑さだのと、情報が錯綜

          「LUNA SEA」のお話

          第45話 誰にでも黒歴史と呼ばれる時代があったと思う。 あたくし山崎にもそりゃあもう全力で黒歴史でしたと、振り返るだけで全身に悪寒が走る時代があった訳です。 とりわけ、中学3年から高校を卒業するまでは酷かった。 当時バンドブームの絶頂で、洋楽・邦楽を問わず、ハードコアからJ-POPまで、CDの普及に伴ってあらゆるジャンルの音楽が若者たちの耳に届く所となった。中でもある一つのバンドに傾倒し、その後の人生観にも影響を受ける若者も少なくなかった。 例に漏れず私もある一つのバ

          一人息子との付き合い方のお話

          第44話 こんばんは。バス運転士です。会社の休憩所で「マンボウなんてやったって効果ないよな!」みたいな話が上がっていて、推察するにそれはマンボウのようにゆったりとした動作を心掛けることによって、呼吸を控えたり飛沫を抑えたりして感染を防いじゃお。みたいな運動かと思った者です。マジで知らんかった。こういう造語ホントに嫌い。 ところでもうすぐウチの一人息子が6歳になる。以前こちらで述べた通り、我が息子ながら人に優しく、与え、譲る気持ちを持ち、明るく聡く、穏やかで、自制心や強調性

          一人息子との付き合い方のお話

          地球の摂理のお話

          第43話 昨日、深夜0時に仕事が終わって1時に帰宅。3時に就寝。6時起床。ただいま健康診断を受けるため朝7時の電車に揺られながらこの記事を書いている。健康を犠牲にして受ける健康診断というのも、なかなか趣きがあっていいものよなあ。じゃねーよ。クッソねむい。 さて。唐突だが皆さんは決断に迫られたとき、何に従って答えを導き出しているだろうか。信念なのか。人間関係か。シンプルに私欲で決めるって方もいると思う。 想像して欲しい。例えばアナタは一企業の平社員。 会社で一番仲のいい同

          奇跡の数珠つなぎのお話

          第42話 雷に竜巻と豪雨。春の嵐が吹いている。よし、今日から筋トレやろうってんで、急に体を動かすと筋肉痛に襲われるように、物事が次に移行するには痛みが伴う。それは気象も同じなんだなあと思う。 さて、思えば東日本大震災から10年の月日が経った。未曾有の天災に家族や知人を失った方もいらっしゃると思う。今日はそんな方の心に、少しでも響いてくれたら嬉しいなあという話題だ。 私は盆や彼岸といった慣例に際して、一応は形式に則ってキュウリやナスに割り箸を挿してみたり先祖の墓参りに行っ

          不徳ダメ。ゼッタイのお話

          第41話 昨夜iPhoneで「頓挫」という言葉を調べ、翌朝、出勤のため車に乗り込んだ所、Bluetoothを介して車のスピーカーから「とんざっ とんざっ とんざっ とんざっ」と頓挫の音声ガイダンスが流れてきて、まさか早朝4時に小気味良く罵倒されるとは思ってもみなかった私は激しく頓挫した。 さて、今日は徳と不徳、中でも不徳を積み重ねると世の中はあんまり容赦してくれませんよーっていうお話をする。「あれ?思い返してみれば私、不徳を積んでる感じがする」っていう方はぜひとも読み進め

          会話のジレンマのお話

          第40話 梅の花がポップコーンのように弾けては咲き、コブシの蕾も打ち上げ花火のごとく大輪の華を咲かせた。河津桜はパッションピンクから新緑にそのフォルムを変えようとしている。 春である。 いま正に関東では緊急事態宣言も解除が近づき、バス運転士から見ても次第に日常の交通量が増えてきているのを感じる。 というのに、私の心はどこか晴れない。 理由は判然としている。5歳の息子との会話がうまく成立しないからだ。 息子はいま起きたことや思い出したことを、その都度教えてくれる。

          40歳のおっさんがclub houseを本気で攻略しようとしてるお話

          第39話 今日はウチの営業所で売り上げワースト1の路線の運行だった。 休日・祝日のみ運行しているこの路線は、5時間程度の運行に対して総客数が10人程度。その内ほとんどの方が敬老フリーパスのようなノーキャッシュの定期券を使用されるので、実質的な売り上げは1000円に届かない。実に非生産的な路線である。 バスを運転している当人としても、途中で何度も自分の存在意義を見失いそうになり、その都度「家族の為。息子の為」と自分を鼓舞しなければならず、運転以外にもよく分からない自己嫌悪

          40歳のおっさんがclub houseを本気で攻略しようとしてるお話

          返報性の原理のお話

          第38話 2月。早朝3時50分。神奈川県。温度計の数値が1℃を示す中、起きて早々、プランターで縮こまるソラマメ達に水を与えている。 バス運転士の朝は早い。 路線バスは始発の電車に乗りたいというスズメみたいな行動様式の人たちをまずは最寄り駅まで届けるという割りかしイカれた任務があり、その為電車の始発より早い時間から運行しなければならないのだ。 この現象は都心から郊外へと離れていくほど顕著になる。理由は簡単。都心が早朝を迎える時間に都心に着きたいお客さんを運ぶのだから、必

          もう一度会いたい人間のお話

          第37話 絶賛、緊急事態宣言発令中である。 私が暮らす神奈川県はまさにその渦中にある。 バス運転士という日々の交通量を把握する立場から現状をお伝えすると、通常時と比べて明らかに車両数も人の往来も少ない。また20時頃に飲食店を見渡すと、ウッキウキでのれんを降ろす店主を見掛けたりする。そりゃあ早く閉められた上に原価0円で6万円が懐に入るのだから、ウキウキしない方が難しい。 とはいえ、メディアは人々の自粛への意識が甘いなどと囁いたりしているが、都心の動向を見ていると、日本が一