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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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2021年11月の記事一覧

「密室の女」・・・怪談。女は何を恐れたか?

『密室の女』 「怖い!」 エレベーターに乗り込んだ途端、中にいた女が口元を抑えながら 奥の壁に張り付くように下がった。 何が怖いんだろうと目線を追うと・・・どうやら私の事らしい。 狭いエレベーターの箱の中に男と二人きりになって 不安なのは、分からないでもないが、怖いと口に出すほどではないだろう。 私はちょっと不機嫌な気分になったが、女に背を向けて行先階のボタンを押した。 『俺の顔に何かついているのかな』 磨かれた操作パネルに映る自分の顔を眺めてみるが 特に変わっ

「すきま」・・・怪談。隙間を恐れる男は何を見たのか。

『すきま』 「目が覗いてくるんだ」 杉田は、明らかに神経過敏になっていた。 レスリングのインターハイに向けた強化選手に選ばれた杉田が 練習にも大学にも顔を出さなくなって二週間。 業を煮やした部長の命令で、同期の俺と吉野がアパートを訪れたのだが、 杉田は奇妙な話をするばかりだった。 「最初は閉め忘れた窓の隙間だった。 夜中に寒いな、と思って見たら、見開いた目がこっちを見ていたんだ」 「覗きか?」 「俺も最初はそう思った。男の一人暮らしを覗くなんて趣味の悪い輩だな、

「愛を誓う言葉」・・・怪談。誘拐された女ともだちの運命は。

ミスキャンパスの誉れ高い女子大生の理美が行方不明になった。 身代金の要求が無いのと、部屋をシェアしていた亜紀の証言により、 犯人は理美をつけ狙っていたストーカーのような男が 捜査線上に上ったが、行方は全く掴めなかった。 「無事に帰ってきて・・・」 亜紀の心配をよそに、事件はすぐに解決した。 一週間ほどしてたった頃、 理美がふらりと帰って来たのだった。 「どこにいたの?」 「分からない。夜中一人で勉強してたら急に眠くなって 気が付いたら山の中に一人でいたの」 「と

「鬼と石段」・・・生け贄を救う方法とは。伝説に秘められた謎。

『鬼と石段』   男鹿三山が雪帽子をかぶると、麓の村は恐怖に覆われる。 冬一番の大雪の夜。 山奥に棲む、五匹の鬼たちが降りてきて その怪力で村人の家を壊したり、 蓄えのお米を奪ったりの乱暴を働くのだ。 その為、村では毎年、生け贄として娘を一人差し出し、 何とか村を守っていた。 「今年はどの家から差し出すのじゃ」 「お前の家はどうじゃ。嫁の貰い手もおらんじゃろう」 「何を言う。お前の娘こそ、偏屈オヤジの面倒を見るより 生け贄になった方が、ましじゃろ」 冬が近づく

「女神の祝宴」・・・不思議な話。もし愛娘の異変に気が付いたら。

『女神の祝宴』  作・夢乃玉堂 「もう男なんて信用できない!」 娘のお迎えに向かう途中、 俺は聞き捨てならない叫び声を聞いた。 見ると、保育園にほど近い橋の上に 人だかりが出来ている。 「結婚詐欺にあったらしいよ」 「あそこから飛び降りたら命は無いね」 群衆が見守る橋の中ほどで、 髪の長い女性が欄干から身を乗り出して 川の中を覗き込んでいた。 かなり思いつめている様子で、 警官も下手に近寄れないでいる。 ところが、しばらくするとその女に、 トコトコトコって、 ピン