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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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2021年4月の記事一覧

「あの世の境の橋の上で」・・・あの世に天国と地獄があるのは、なぜか?

あっという間に読める超ショート怪談。世を拗ねた男が体験した不思議とは・・・ 『あの世の境の橋の上で』 秋田、羽州街道から少し外れたところに、三途川橋と呼ばれる橋が架かっている。 その先には、草一つ生えぬ荒れ果てた大地が広がり、 そこかしこから硫黄の蒸気が吹き上がっている川原毛地獄と、 名湯と呼ばれる泥湯温泉がある。 まさに、天国と地獄に通じる橋である。 徳川家康が無くなって100年ほどがたった頃の事である。 その橋のたもとに一人の男が座っていた。 名を仮に、二ノ俣大

「深夜喫茶の獲物」・・・あっという間に読めるちょっとだけ怖い話かも・・・

超ショートショート。 その向こうに隠れている情念は・・・なぜ彼女はそんなことをしているのだろうか、過去に一体何が・・・ 『深夜喫茶の獲物』 あたしは、終電間際の深夜喫茶が好きだ。 「彼氏ができたルームシェアの友達に気を使わせないよう ○○カフェで過ごすのも疲れて来たな。 せめて朝まで一緒にいてくれる人でもいれば良いのに」 こんな風にSNSに書き込むと、 獲物を求める男がすぐにやってくる。 そして、一人で携帯を見つめている女の子を見つけるなり、 優しい言葉で話しかける

「ロープはどこだ」… あっという間に読める超ショート怪談。注意散漫の夫を上から見下ろす妻。

あっという間に読める超ショート怪談。でも、よ~くその向こうに隠れているものを想像すると・・・ 「ロープ。ロープはどこだ・・・」 右往左往する夫を見下ろしながら、私はため息が出そうになった。 どうしてあなたは、そんなに忘れやすいの? 会社に行ったらお弁当箱を忘れるし、 生命保険は、私の分しか入っていなかったし。 遺産相続協議書の私の名前欄も全然間違っていたし、 本当に忘れん坊で、慌て者ね。 ロープなら天井の梁から、私の首に掛かってるでしょ。 あなたが掛けたんじゃな

「染まる。」・・・超ショート怪談。 夫婦ならばこそ?

あっという間に読める超ショート怪談。でも、よ~くその向こうに隠れているものを想像すると・・・ 『染まる。』 浮気が止まらない夫に 「浮気相手が自殺したよ」 と伝えに行くのは、もう3回目だ。 それでも夫の浮気は止まらない。 「次はいつ頃になるか、賭けてみる?」 平気でそんなことを言う夫の人格を最初は疑ったが・・・ なぜか今では、一緒になって薄ら笑いするようになってしまった。                    おわり #朗読 #怪談 #

「誰が」 タクシーの怖い話。怖いのは・・・

短詩。でも、よ~くその向こうに隠れているものを想像すると・・・ 『誰が・・・』 真夜中まで時間をつぶし、 タクシーにワンメーターだけ乗って 空になった後部座席に手を振って降りる。 テールランプが見えなくなるまで見送ったら その日の日課は終わり。 リア充な女のふりなんて簡単に作り出せる。 誰かに見せる訳でもないが 誰かが見ていたらと思うと止められない。 誰か、誰か、教えて。 私はどうなれば幸福なの。         おわり #朗読 #タクシー #ワンメーター #リア

「恋を見つめる」・・・ただそれだけなのに、余りにも異常で・・・

あっという間に読める超ショート。でも、よ~くその向こうに隠れているものを想像すると・・・ある意味、怖い話。 『元彼からのメール』 「久しぶりに会わないか?」 先月別れたばかりの元彼のメールに 30分待ってから返事を書いた。 「新しい恋を見つけたから」 もちろん恋をしているわけではない でも嘘をついたわけでもない。 これから若いカップルのいる深夜喫茶を巡って 苦いコーヒーをお代わりしていくのだから。 傷心を抱えて、他人の新しい恋を見つめるのが趣味なのよ。 イニシャ

「ランチボックス」「お届け物です」・・・ショートホラー。ブラフさんが、「#怪談 選」に選んでくれました。 ありがとうございます。

以前にも選んでいただいて、本当にありがたいと思っています。 短いので、こちらでも再録します。 ついでに、新しく続編も掲載します。 あっという間に読める超ショート怪談。でも、よ~くその向こうに隠れているものを想像すると・・・ ・・・・・・・・・・ 『お届け物です』…  「ご自宅から、お忘れ物のお届けだそうです」 半年前死んだ妻の来社を、今日も受付の女が内線で取り次いでくる。 この会社には、内線も受付も無いのに。                    おわり(つづく

「なれそめ」・・・如何にして俺が彼女との距離を縮めたか。

『なれそめ』 カーテンの向こう側、ベランダに面したサッシに サワサワサワっと何かがこすれるような音がする。 「風が出て来たね。洗濯物、取り込もうか?」 優しいところを見せて点数を稼ぐつもりで 言ったが、彼女は、『うん・・・』と生返事をしただけで 小説を読み続けていた。 俺は心の中でチッと舌打ちをしたが、 言った手前止めるとも言えず、 ひとりでベランダ側のサッシまで行って カーテンを開いて確かめてみた。 ベランダは綺麗に片づけられていて何もなかった。 洗濯物はおろか、