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日本トランスパーソナル学会の設立。

 1996年、精神科医・安藤治さんらの尽力によって「日本トランスパーソナル学会」が発足。5月24日〜26日の日程で、第1回会議がおこなわれました。場所は静岡県下田市・南伊豆国民休暇村です。

 こちらは1996年に(もう25年も前になるのですね)WHO ARE YOU?のホームページに掲載したお知らせです。

 このときは「境界を超える対話」と題し、河合隼雄さん、見田宗介さん、おおえまさのりさん、上野圭一さん、星川淳さん、岡野守也さん、鎌田東二さん、宮迫千鶴さん、上田紀行さんらが講演をおこない、ミュージシャンの喜多郎さんが和太鼓の演奏を、高橋実さんが舞踏を披露しました。

 吉福さんは3日目の最後に登壇し、講演をおこないました。こちらから、そのときの講演のビデオを見ることができます。動く吉福さんを収めた貴重な映像です。

 講演の全文は書籍『境界を超える対話』(雲母書房)に収録されています。

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 講演タイトルは「トランスパーソナルとは何か」となっていますが、吉福さんは「トランスパーソナルとは……」といった高所からの話はしていません。ハワイでの日々の暮らし、思いがけない友人との再会など、徹底的にパーソナルな、個人的な視点から話を展開していきます(逆に、そのことをしらけた気持ちで聞いていた人もいるようです)。そして唐突に、「倍音(オーバートーン)」の話をはじめます。ある音を楽器で鳴らすと、その周波数の整数倍の周波数の音が同時に含まれて鳴るという性質があり、それが和音となって耳に心地よく聞こえるのだといいます。

「個人にとってトランスパーソナルという意識、無意識の領域というものは、一種の倍音のような存在なのではないかと考えることができると思います。もし、倍音のもととなる『C(ド)』というパーソナリティ、個人、私というものがしっかりと音を出していなければ、上の倍音は良い共鳴をしません。ですから、いくらさまざまな倍音を体験したからといっても、その根の基音というものに立ち返って、しっかり耳を傾けない限り、上の音は浮草や根無し草のように非常に虚しい存在になってしまう」

 超越的な境地を求め、現実から遊離しがちな人々に対して、もっと自分を大事にすること、地に足をつけて生きることを語りかけています。日本トランスパーソナル学会の船出にふさわしい内容かどうかはわかりませんが、ここに吉福さんの真意があると思います。


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