ライブをやった時の源泉徴収の方法


 TriArtの第二回である沖縄学より、主催に関しては任意団体としてのGY.Materialsが催すこととなりました。(音源に関しては諸事情があるので同名の別団体扱いです)

 これまでは個人で主催をしていたため源泉徴収の義務を背負っていませんでしたが任意団体主催の場合は演者さんとの特約が無い限りは源泉徴収の義務が発生します。
 
 とはいえバンドの世界って本当に源泉徴収とか一切やらないため1から調べる必要がありまして、今回は自分が調べた範囲での源泉徴収の取り扱いについて纏めた内容となります。


源泉徴収の習慣がない世界

 元々バンドの世界は源泉徴収されること自体が稀です。

・チャージバックまで行くことが滅多に無い
・チャージバックまで行っても源泉徴収しないハコが殆ど

 主に上記2点が理由です。ハコによっては源泉徴収の義務者ではないため源泉徴収しないケースもあるので一概には言えませんが、この辺りは実務上の理由もあります。
 
 年度末には源泉徴収票をお送りしなければならないのですが、出演バンド全部にそんな事してたらとんでもない手間になるため、それを嫌がってギャラではない処理を会計上はやっています。
 
 具体的に言うと、チケットの代金は全て預り金で処理し、チャージバックの金額に関しては差し引きの金額を割増の手数料として取っていると言う処理ですね。つまり、チケットの売上をお客さんから預かり、バンドさんに右から左へと渡しているだけ。その日のチケットによる売り上げは一旦全部無かったことにして、ホールレンタル料(チケット代xノルマ枚数)と動員人数に応じた手数料(チケット代x(100-バック率))をハコ側の売上として計上しています。
 
 これはもうギャラでは無いので、自分がライブハウスのノルマ制ももうやめようと言っているのは、実務上も税制上もギャラとして扱っていないからです。だから誤魔化した名目はもうやめて正直にホールレンタル料のコマ割りと動員に応じた割増料金と言うべきなんじゃないですかと考えています。まぁこれは余談ですが。

徴収義務者

 源泉徴収の義務の発生についてですが、個人がギャラを出す立場の場合は徴収の義務がないので、源泉徴収しなくても問題は有りません。

 重ねての記載となりますが、上記の例は、個人でライブハウスを運営し、常時働く人が居ないような小規模のハコは徴収義務が発生しません。

 なお、演者さん本人が確定申告をしていて源泉徴収を0でと合意が成立している場合はお任せでも大丈夫との話を聞いています。念のため文章などでこの特約は保存しておいた方が良いと思います。

源泉徴収の金額

 一度に支払うギャラが100万以下の場合は10.21%を徴収し、差額を演者さんにお渡しします。

 小規模なライブの場合はこの金額を上回るようなケースはほぼないので10.21%で覚えれば大丈夫でしょう。

 ちなみに100万を超える場合は100万1円から20.42%となります。

(200万の場合、100万x20.42%+100万x10.21%)
 計算がややこしいので源泉徴収の自動計算を作成しました。
https://gymaterials.jp/blog-entry-164.html

 なお、ノルマ制や枚数に応じたバックの場合、基本的には現金手渡しなので、1円、10円、100円などが大量に必要となります。
 
 事前に何円でと契約するものでは無いため何枚必要かも解りませんので小型の金庫を用意して準備金の用意を強く推奨します。

領収書を切ってもらう

 ギャランティをお渡しした際には領収書を切ってもらいます。これを切ってもらわないと経費として認めてもらいにくくなります。

 この際記述してもらう金額は、実際に渡した金額ではなく源泉徴収を含む金額を記述してもらいます。ギャラ20,000円の場合、17,958円をお渡しする事になりますが、領収書は20,000円の記載になります。

 この際、「源泉含む」等を但し書きに記載してもらい実際の手渡しの金額とは異なる旨を明記してもらっておきます。

 1名の方に年間5万を超えるギャラを支払う場合、支払調書を税務署に提出する必要があります。(翌年1/31まで)この際にマイナンバー、及び住所が必要となりますので、領収書に住所を書いてもらうよう心掛けてください。また、マイナンバーはマイナンバーカードや通知カードの写真を送ってもらい保存するようにしてください。

 領収書には控えの無いものも有りますが、経験上、この手の控えが無い為に演者側としての実績の証明に苦労した経験が有りますので、カーボンコピー等の控えの出るタイプの領収書を強く推奨します。

帳簿上の記載

 問題は帳簿上の記載ですが、勘定科目は以下の様に処理します。仮に20,000円のギャラとした場合以下のような形になります。

|預り金|2,042|現金|2,042|

 納税時も同様に預り金で処理します。

|現金|2,042|預り金|2,042|

 自分も、当初何も考えずに外注工賃で計上してしまいましたがこれだと外注の経費が下がる事になるため不適切な処理となります。

 源泉徴収の金額は本来演者さんのお金を預かったものですので預り金が妥当、となります。 

e-Taxでの処理

一部手続きが抜けていたので加筆します(20221101)

以下の手順で届け出ている税務署へ書類を送信してください。

・e-Taxソフト(WEB版)へログイン
・申告・申請・納税を選択
・新規作成を選択
・報酬・料金等の所得税徴収高計算書を選択
・提出先税務署等で該当する税務署を選択
 (人によって異なります)
・納期などの区分、及び区分を入力
 納期等の区分
  支払いのあった年と月を入力
・区分
 興行のギャラの場合は07「芸能人の役務の提供を内容とする事業を行う個人の報酬・料金」

・人員・支払額・税額の入力
 人員
  支払った人数を入力します
  (バンド単位での支払いの場合、1バンド=1名で計上)
 支払額
  支払額の合計です
 税額
  預かった源泉徴収金額の合計です
  計算上は支払額と税率の数字が合わなくなる場合が有りますが支払毎に切り捨てですので、気にせず預かった金額の総額を入力してください。
 本税
  自動で入力されます
 延滞金
  期日内であれば無視して構いません
 合計額
  自動で入力されます
 摘要
  よく解らないので毎回無視してます。

・入力内容の確認・訂正
 問題無ければ次へを選択

・受付システムへの送信
 問題無ければ次へを選択

一連の作業後に納付を行われた方がいいと思います。
(20221101加筆ここまで)

納税(納付)方法

 ギャランティの納税については翌月の10日までに行わなければなりません。

 国税庁のHPに納税の案内がありますので状況に応じて選択をされてください。

 コンビニでの支払いやクレカでの支払い、e-taxでの支払いなどが可能です。今回はコンビニ支払いで納税を行いました。

給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成

 1名に対する支払いが年間5万円を超える場合、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書を翌年の1/31までに作成しなければなません。バタバタする年始ですので気を付けてください。(忘れてた場合は怒られる前に急ぎ作成しましょう)

 e-taxにログインし「新規作成」を選択し、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書」を選択。支払調書を作成し提出してください。

 申告書等の作成1/2での作業ですが、ギャランティの場合「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の行にある作成ボタンを押します。

 支払いを受ける者のすぐ下に「前のページからのコピー」と書かれた入力できそうな枠がありますが、これはボタンです。入力フィールドはその横の3行です。住所、氏名、マイナンバーを記載します。記載するのは提出範囲に記載のある条件に該当する方のみで大丈夫です。

(2023/12/09加筆ここから)
 令和5年の段階では「同一人に対する令和5年中の支払金額の合計が5万円を超えるもの」となっていますので、支払額の合計が5万を下回る演者さんに関しては記載の必要はありません。
(2023/12/09加筆ここここまで)

 区分には「出演料」(場合に応じて原稿料などにしてください)、細目には出演したライブの名称等を記載してください。

 作成が完了したら次へを押して「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の作成に入ります。そのほか提出範囲外の源泉徴収の合計もここで記載を行います。

 作成が完了したら次へをおし、修正などが無いかを確認します。問題泣ければ次へを押し、電子署名を行います。電子署名後は送信ボタンを押せば提出完了です。

 以上、源泉徴収の取り扱いについてでした。公演時の参考になれば幸いです。

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