ノルマのあるライブに出るのを止めよう

ノルマ制を廃止したら演者の質が下がるという仮説について、検証するにあたってはまずノルマと演者の品質の相関性を見る必要があります。

ライブ音楽の規模はバブル期辺りを絶頂として衰退のグラフを描き続けています。自分はその頃の世界を体感としては知りませんが、映像を見る限りは平日であっても良い演者さんに恵まれていたのは事実でしょう。

逆に自分の体感で言えば20年ほど前からアマチュア音楽のライブの質は劣化の一途をたどっています。ノルマ自体は出所が不明なのですが絶頂期を迎える以前から存在していたと言う事だけは確かなようですので、この間チケットノルマの力は何かしら作用を続けていたと言ってよいと思います。

ノルマ制が品質の向上に良い影響を与えているのであれば、存在していた期間は品質面においては右肩上がりでなければならないはずです。つまりもう結論はでました。

ノルマ制が舞台の品質が上がる時代にも存在し下がる時代にも存在したと言う事は、ノルマ制の存在は舞台の品質向上には一切関与していないと言う事です。品質の向上には別の影響力があります。

ふるいの存在

音楽の隆盛とバンドの品質、及びバンド数については一定似たような相関があると言ってよいと思うのですが、これに一切無関係な要素が一つあります。ライブハウスの数です。

それこそ数年前までライブハウスの数は増え続けました。潰れたとしても場所の移転程度で本格的に潰れ始めたのはここ5年ぐらいだと思います。単純な話、演者の数は減っているのにライブハウスの数ばかり増えてきました。

やたらと掛け持ちの多いバンドマンさんも異様に増えましたし、その日限りと言う次に続かないバンドさんも大量発生しました。出演の可能な枠が過剰に余ったためです。なのでライブハウス側もライブハウスを維持するために演者をふるいにかける事が出来なくなりました。

そしてこれと連動するかのように、1日当たりの出演数が徐々に増え始めました。ライブハウス主導のライブよりも誰かが主催する企画のライブの方が増えていったのもこの時期だと思います。1本あたりのライブの内容が文字通り水増しされていった時期です。

当然のことですが見る価値があるかどうかを判断するのはお客さんの側です。そして、同じバンドマンが贔屓目に見ても行く価値が無いと判断する内容が大多数になった状況で一般のお客さんなんか余計に来ないですよねと、そう言う世界になりました。

バンド数が多ければ出演枠が足りないため、そこに出るための努力もしますしハコ側もいい品質のものだけをピックアップした興行が行えました。自然とふるいにかけられていた時期がバブル前後の時代には存在したと言うだけの話だと思うのです。

なぜノルマ制の廃止を訴えるのか

端的に言うと、今はお金を払えば出れる時代だからです。だからこそ払っても出られないふるいを用意します。それだけの話でしかありません。現状では演者の品質よりもスケジュールを埋められるかどうかが優先されています。品質は二の次の状況では市場から捨てられて当然です。

ノルマ制のおかげで全然演奏できない舞台が全くできない人が舞台に立ち、演者の質は下がっている、ノルマ制が演者の質を下げているという現実は受け入れるべきです。

ふるいの役割をどこかで取り戻さねばなりません。なのでノルマを廃止する代わりに主催者が狭い枠を用意する必要があります。

より厳しい基準で、より強く言える立場を保持していることはふるいにかける側としては非常に重要だと思うのです。ノルマを課しておいてプロデューサーのような顔をするべきでは無いと感じます。発言力の背景には背負っている責任が必要ですし、特に金額は重要な要素と言っていいでしょう。金銭リスクを背負わない人間を必要以上に持ち上げてはなりません。

バンドはノルマのあるライブに出てはいけない

なぜノルマを課すのか。

バンドにノルマが課されるとはどういうことなのか。

ノルマ制は品質を担保するものでは無いのであれば何を担保するものなのか。

ここにはしっかりと目を向ける必要があります。

ノルマ制が担保するもの。それはその日の売上です。逆に言えば、あなた方は売上の信用が出来ないからノルマを課すと言われているんです。

全員がノルマ制を受け入れると言う事は、全員が売り上げの信用を持たない存在であると言う事を受け入れると言う事に他なりません。自分達で自分たちは売りものにならない存在だと言うのと同義なのです。

しかし興行において出演を依頼すると言う事は外注を依頼すると言う事です。どこの世界に外注先に経費の100%を押し付けるような施工主があるんでしょうか。興行の世界に残る悪しき因習です。

自分たちの出演を商品とみなす気が無い相手をビジネスパートナーとしてはいけません。お金を取る興業をやる以上はビジネスで主催者はビジネスパートナーなのです。

頭を下げて出演を依頼しておきながら、商品になり切れていない事をいいことに搾取するようなイベントに出演し、自分たちの心を汚してはいけません。

777は演者さんを社会人として、サービス業として、プロとみなして出演をご依頼します。もし商品として成立しない方から頭を下げられても出演はお断りします。それを理由に搾取はしません。

一人でも多くのバンドマンさんに演者としての誇りを持つ一つのきっかけとなればと考えています。5回しかやりませんので、是非皆さんでこの狭い枠を奪い合ってください。よろしくお願いします。

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