ファンキー末吉氏とJASRACの裁判について

生意気な話しをする、の29日目です。明日で30日ですか。やり始めてよかったなと思う反面、精神的には若干きついのはきついので、JASRAC関係の話がひと段落したらちょっと休もうと思ってます。

では本日は割と本丸のファンキー末吉氏とJASRACの裁判につきまして纏めようと思います。なお、自分はJASRAC寄りでJASRAC側の解説をしますがファンキーさん側の主張があった方がフェアだと思いますので、ファンキーさんのblogのカテゴリ、JASRACとの闘いへのリンクを掲載いたします。
http://funkyblog.jp/jasrac/

一応自分もバンドマンの端くれで、ファンキーさんとは直接の面識こそありませんが先輩を一人たどると会えるぐらいのポジションでして、縦社会としては言うべきではないんでしょうが日本の著作権、特にJASRACを話題にする以上は避けて通れない話題ですので、人脈が無くなる覚悟で足を踏み入れたいと思います。

ファンキー末吉という存在は反JASRACの旗印のように扱われることがあり、JASRACと長期間にわたりLiveBar X.Y.Z.→Aの裁判をされているという事実からそのように使われるのかなと思いますが、まずこの裁判について事実確認をしておきたいと思います。

1.ファンキーさんは訴えた側ではなく、著作権料の未払いで訴えられた側である。2.ファンキーさん側の提示する利用楽曲の報告と実態に齟齬が見られたため調停が難航。3.裁判となり地裁でJASRAC勝利、高裁でJASRAC勝利、最高裁への上告が棄却されファンキーさんの敗訴が確定しました。

東京地方裁判所の判決文
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/931/086931_hanrei.pdf

知的財産高等裁判所の判決文
http://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/203/086203_hanrei.pdf

根本的なお話としてなぜ裁判になったのですかと言うと、ファンキーさん自身がサンプリング調査による漏れに疑問を抱いていたため、ご自身が共同経営をされているライブバーでの包括契約を渋ったためです。

このためJASRAC側と調停が7回ほど開かれ、ファンキーさん側の主張としては第二回の調停の際1曲140円で合意したとする認識のようです。その認識に従って第三回目の調停において提出された曲目リストが実態とかけ離れていたため利用相当額の算出ができず、その後調停を繰り返していたとするのがJASRAC側の主張です。
(争点(4)(原告による許諾の有無)について 地裁判決文のP.12~14)

地裁判決文P.29より調停の経緯が確認できますが、第一回の調停の時点から曲目リストには不備が確認されています。オリジナル楽曲には支払わなくともよいとするスタンスは争点(2)でもファンキーさん側の主張として確認ができます。これについては予備知識でもお話しましたが信託契約とはそもそもJASRACを権利者と認める契約ですので、きちんと契約内容を理解していればこういう主張にはなりません。契約内容を把握していないご本人の問題かと思います。

サンプリング調査による漏れについても、JASRAC側と信託者の会議において合意が成立している事項ですから、判決文にある通りそれは契約を結ばない理由とはなりません。

「原告が,委託者に対する分配額や分配率を回答しなかったことは,原告と委託者との間の著作権信託契約関係においては不相当といえる可能性が仮にあるとしても,これをもって,利用許諾契約を締結しようとする権利者である原告と利用者である被告らとの間の関係において,原告の態度が被告らに対する信義則違反に当たるということはできない。 」
地裁判決文P.47

第二回以降の調停で一曲毎の契約を拒否しつづけた理由についてですが、先述の通り曲目リストに不備があったためです。加えてJASRACは著作権管理団体ですので文化庁に事前に届け出を行った使用料規程でなければ徴収できません。第二回及びそれ以降提案された方式はJASRACの使用料規程には無いので法的に受けることが出来ません。

またファンキーさんは包括契約が独占禁止法に反する違法な契約であると主張されていますが、公正取引委員会から出された内容は放送事業に関するものですからライブハウスに適用するのは不適切です。文化庁に上申書を提出された際の記者会見では包括契約しか結んでもらえなかったとのお話ですが、JASRAC側から個別契約の提示があったことは判決文においても確認できますのでこれは事実誤認かと思います。
地裁判決文P.13,30

記者会見における事実誤認としましては、「1円もない」という発言をされていましたが、「220公演中4公演分の著作権料のみが支払われたと推測される」(p30)との記録が有りますのでこちらも事実誤認です。

ファンキーさんご自身、一貫してサンプリングによる分配に納得がいかないというご主張を展開されていますが、それはJASRACとの契約の内容の話であって、利用者として契約するにあたってはまた別の問題です。また納得がいかないのであれば個別の契約を結ぶべきですが、そこで不確かなリストを提出していたのではご本人の主張である正確な分配と齟齬が生まれるのではないかとも考える次第です。

長くなりましたが本日はこの辺りで。次回はこれってどうなのと言う項目がいくつか残っていますので、そちらに手を付けたいと思います。明日は休みます。twitter等フォローいただけましたら幸いです!

【関連資料】

JASRAC対ファンキー末吉氏の地裁判決文が公開されました
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20160525-00058033/

JASRAC、第二審でもファンキー末吉氏に勝訴
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20161029-00063850/

ファンキー末吉氏はJASRACに何を求めているのか
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20170821-00074764/


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