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ひきこもりと社会をつなぐ「COMOLY(コモリー)」事業に込める想いとは

#05 株式会社Meta Anchor 代表取締役 山田邦生さん

株式会社Meta Anchorは、2016年7月に適性検査サービスを提供する会社として創業し、現在はひきこもりの方の支援事業を主軸としている。ひきこもり当事者のためのオンラインプラットフォーム「COMOLY」の登録者は400名を超え、登録者に依頼したワークも240件にのぼる。しかし、創業から2年間は全く売上が立たず苦しんだという。それでも会社を続けてこられた理由や、ひきこもりの方への支援に関わるようになった経緯等について、 代表取締役の山田邦生氏に話を聞いた。

なぜ、適性検査だったのか

-法人向けの適性検査サービスを事業内容として創業されていますが、この事業を手がけた理由は何ですか。

山田 かつて転職支援をしていた会社でキャリアカウンセラーを務めていた時期に、人の可能性や潜在能力、強みといったものに深い関心を持つようになりました。同時に、それらと関係の深い適性検査のあり方にもある考えを抱くようになったのです。

-といいますと?

山田 適性検査は人をふるいにかけ、不適合者を除く使い方をされることが多いですが、本当はもっと人を活かす方向で使われてもいいのではないかと思ったのです。自分の強みが分かれば働くことが楽しくなるし、人との相性が分かれば職場もうまくいきます。適性検査の使い方を変えることによってそういった働き方を実現したいというのが独立当初の思いでした。

山田氏。「COMOLY」メンバーの描いたMeta Anchor公式キャ ラクター葉月とミーコとともに。

-この事業で利益を出せるようになるまで、ずいぶん苦労されたそうですが。

山田 はい。経験もコネもないところから始めたため当初は全く売れず、ただただお金が減っていく毎日でした。

-プラスに転じたのはいつでしたか。

山田 当時運営していた「適職診断NAVI」という個人向けの無料診断サービスの登録者数が急増した時点がそうです。それに応じるように適性検査サービス「INOBER」の知名度も上がり徐々に利用してもらえるようになりました。

ひきこもっていた友人との再会

-そこまでの間、心が折れずによく持ち堪えましたね。

山田 それはパートナーがいたからです。その頃、就職活動がきっかけでひきこもりになっていた小中学校の同級生と再会し、私は彼にプログラミングを学ぶことを勧め、仕事を手伝ってもらうことにしました。彼というパートナーの存在のおかげでここまで続けられたと感謝しています。

-「COMOLY」事業を始めたのも彼との出会いがきっかけですか。

山田 そうです。再会をきっかけにひきこもりという社会問題に関心を持つようになり、その解決において社会のニーズのあることを知りました。そこで私と彼でひきこもり当事者の方に使ってもらうためのプラットフォームの開発に着手し、2020年1月にサービスをリリースしました。

「COMOLY」をビジネスとして大きく育てていくことが 今後の課題。

-「COMOLY」はどのようなサービスですか。

山田 ひきこもり当事者と社会をつなぐオンラインプラットフォームです。登録していただいた方に当社がヒアリングを行い、その人に合った在宅ワークをマッチングしています。デザインやウェブページ制作、アプリ開発、入力業務など様々なワークを紹介しており、定期的なオンラインセミナーや当事者会、リアルでのワークイベントも実施しています。

-利用者の反応はどうですか?

山田 全員ではありませんが、多くは、ひきこもっていても収入が得られるようになり、自信もついてよかったと言ってくれます。オンラインセミナーでプログラミングを身につけた人もいますし、ここで仕事をしたことによって自信をつけ、他社への就職につながった人もいます。

-リアルのイベント参加はひきこもりの当事者にとってハードルが高いのではないですか。

山田 そこが一般のイベントと異なる点なのですが、当社の場合は、「COMOLY」でのワークやトレーニングを通してできた我々スタッフとの信頼関係がベースにあります。「COMOLY」で活動したことのある人と一緒なら外に出られるかもと思ってもらえているようです。

働くことの楽しさと誰かの役に立つことの喜びを感じて欲しい

-今後、Meta Anchorをどのような会社にしていきたいですか。

山田 より「COMOLY」に軸足を置いた事業展開を考えています。そのためには社会に対ししっかりと価値を提供していかなければなりません。私たちの活動は慈善事業ではありませんから、依頼された仕事に対しきっちりと成果を出し、価値を提供できるビジネスにしていくことが必要です。

-「COMOLY」の登録者にはどうあって欲しいですか。

山田 依頼者に満足してもらえる仕事をすることで、働くことの楽しさや誰かの役に立つことの喜びを感じて欲しいと思います。そして希望を持ってチャレンジし続けて欲しい。私自身も、皆さんの役に立てることに喜びとやりがいを感じて仕事をしています。今後もその気持ちを分かち合っていければと思います。

-根底にある想いは創業時と変わらないのですね。本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。

COMOLY のワークイベント風景。ひきこもり当事者にとって 地方での地域課題解決に貢献する共同作業は達成感も感じ られる。

(余録)お会いした山田氏は活き活きとしてパワーに溢れていた。工学部出身であるのに心理学を独学で学び、適性検査のアルゴリズムを作ってしまう。プログラミングをゼロから学び習得してしまう。コネなし経験なしでも適性検査の会社を作ってしまう。そして周りを巻き込んでいく。「そのパワーはどこから?」と訊くと「数十年にわたり欧米型の資本主義を追い求めてきたせいで、我々日本人が失ってしまったものが多くあります。例えば人の繋がりや仕事をする意義などです。もう一度、日本人が何のために生きるのかという点を再定義していきたいのです」という。社会を良くしたい、人の可能性を活かしたいという強い想いが力を生み、彼を突き動かしているのかもしれないと思った。(五百田誉子)

[企業情報]
株式会社Meta Anchor
https://meta-anchor.com
〒170-0013東京都豊島区東池袋2-54-3
事業内容
1.ひきこもりと社会を繋ぐ「COMOLY」の運営
https://comoly.jp/
2.適性検査事業
https://inober.com/


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