【MTG】ドレッジのすゝめ ~ドレッジの「レ」、弱点篇~

Magic : the Gathering(以下マジック)の『ドレッジ』というデッキについての記事で、第三回です。
前回の記事では、ドレッジデッキ特有の戦略と発掘能力やカードのイベントについて解説した。

本記事ではみんなの敵ドレッジデッキの弱点や『急所』について解説していく。
今回は実用性に乏しい極端な例を取り上げることがあるが、わかりやすさ(面白さ)を優先した表現であることを留意してほしい。

※以下、特筆しない限り「ドレッジ」は「ドレッジデッキ」を指す


■イチョ、襲来

前回の考察で、ドレッジの正体は高速のビートダウンコンボだとわかった。ここでいうコンボは、ビートダウンの速度を極めたことを指している。決して、カードゲームにありがちな、「コンボ決まったので俺の勝ち!なんで負けたのか明s(ry」のような一撃必殺ではない。
最初の記事で紹介したドレッジの挙動を覚えているだろうか。「2ターン目に15点のダメージを与えてクリーチャーも沢山残っている!これは勝ったわ」という状況だった。
しかし冷静に考えてほしい。

『まだ勝ってない』

ライフは5点も残っている。フェッチランドは2回起動できるし、《古えの墳墓》からマナを出すことも《ギタクシア派の調査》を代替コストで唱えることもできる。
相手が一撃必殺のコンボデッキだった場合、決着は全くわからない。

また、妨害がなかったとしてもこの場合のキルターンは3であり、実は2キルのハードルが意外と高いことがわかる。つまりドレッジは純度の高いコンボデッキには速度負けする。


■墓地、抜け出した後

エルドレインの王権現在のドレッジの《戦慄の復活》で釣り上げる主な対象は《大修道士、エリシュ・ノーン(以下ノーン様)》か《灰塵の乗り手》となっている。ノーン様は自軍のクリーチャーを二回りも強化し、敵軍のクリーチャーには二回りの弱化をもたらしてくださる。
しかしながらノーン様は白色であらせられるので、「速攻」には関知なされない。従って、前回の例の《炎族の盲信者》がノーン様だと4/4のゾンビ4体とノーン様で20点分のパワーがあるにも関わらず、対戦相手を攻撃できるのは次のターンになってしまう。
ヴィンテージ環境であってもクリーチャーへの確定除去は採用される。特にノーン様は伝説でいらっしゃるので《カラカス》にもあたってしまわれる。

ドレッジは物量によって圧殺することが得意である。しかし不思議なことに、単体除去が有効でもある。特にそれが《黄泉からの橋》を誘発させないものであれば尚よい。
今回の例でも、アップキープのうちに《イチョリッド》に《剣を鍬に(ソープロ)》をするだけで見た目上の戦力を大きく削ぐことができる。
ドレッジは常に『ソーサリータイミングの優先権』を待っている。メインフェイズに入ってイチョリッドや橋を機能させたいのである。

仮にあなたの手札にソープロと《瞬唱の魔道士(瞬唱)》があるのなら、ソープロをフラッシュバックしたうえで相討ちブロックで橋を追放するチャンスもある。


■静止した墓の中で

例えば次のような手札をキープし先攻でゲームを始めるとする。

画像1

バザール、イチョリッド、打ち消し、発掘持ちとあり内心では勝利宣言前の夜神月(※)に近いだろう。
いつものようにメインでバザールを起動し、墓地にイチョリッドと橋、インプを置いてターンを終了した。

画像2


※:マンガ「DEATH NOTE」の主人公。勝利宣言前は笑いをこらえている

対戦相手のターン。
《山》!からの、

画像3

《モグの狂信者(モグファナ)》!(ドレッジ使いは泡を吹いて倒れる)

ドレッジはこの時点で発掘をしたとしてもイチョリッドを戻さないことがある。発掘も2回はしないかも知れない。
これはかなり消極的なプレイだが、イチョリッドやナルコメーバが戦場に出ることでモグファナの的が出来てしまい、その能力の起動によって墓地の橋も追放されてしまう。

ドレッジは、自壊できるクリーチャーを使われるのが苦手である。
ヴィンテージやレガシーでモグファナに遭遇することはおよそ無いだろうが、現実的にはもっと厄介な《歩行バリスタ》や《電結の荒廃者》に遭遇する。
ドレッジはそれらに居座られると満足に展開が出来なくなる。そして、前回の記事でも述べたように、発掘では墓地に置くカードを選択できない。もしその状況の発掘で橋が4枚墓地に落ちたならかなりルーズコンディションである。


■せめて、マジックらしく

ドレッジはクリーチャーによるビートダウン以外でゲームに勝利することが難しい。
そしてドレッジのクリーチャーは貧弱なので、先制攻撃を持ったクリーチャーや高タフネスのクリーチャーに立たれるとかなり厳しい。
墓地に橋があるうちは使い捨て可能なためドンドン攻める。この場合は先制攻撃を持つことが橋を追放できない(相討ちできない)短所になる。

また、ドレッジのクリーチャーの最大サイズは4/4程度なので、タフネス5はほとんど突破できない。特に《漁る軟泥》は天敵で、墓地の橋やイチョリッドを追放した上で成長し続ける。点強化を突破するための面展開が防がれてしまう。マジで勘弁してほしい

面展開についても、《イゼットの静電術師》が接死を持っているなら何もできない。


■見知らぬ、土地

ドレッジはバザールが無いと始まらない。このカードが無い初手はほぼ間違いなくマリガンである。バザールはマナ能力を持たないが、タップするだけで2ドロー3ディスカードというドレッジに必要な全てができる。
ところで何故か、この土地から赤マナが出る時がある。
しかしそんな土地を置いた覚えはない

そもそもバザールはドレッジにとっての心臓と言える。《真髄の針》や《魔術遠眼鏡》で動きを止めてはいけない。心臓が止まるのだ、死んでしまう


■タップの価値は

ドレッジの安定的なキルターンは3だと説明したが、それにはバザールと発掘による高速の墓地増やしとクリーチャーによる攻撃が必須である。そしてバザールを起動するにもクリーチャーで攻撃するにも、それらがアンタップ状態である必要がある。
パーマネントは通常、アンタップ状態で戦場に出るが、タップ状態で戦場に出させるカードも数多い。
例えばイチョリッドが墓地からタップ状態で戻ったなら速攻の価値は無い。《炎族の盲信者》についても同じだ。
それどころか、バザールがタップインするようなことがあれば、展開は大幅に遅らされる。


■払えない、マナ

エルドレインの王権現在のドレッジの主流はマナレス型である。したがって、追加コストを要求(タキシング)されると支払えない。
コストを要求するカードには《スレイベンの守護者、サリア》や《抵抗の宝球》のような呪文のプレイに影響するもの以外にも、クリーチャーの維持コストを要求する《The Tabernacle at Pendrell Vale(名前の長い土地)》やアーティファクト版の《魔力流出》、起動コスト版の《抑制の場》などがある。
ドレッジはDeathからは逃げ切れているが、Taxからは逃げられない


■四人目のPW

ドレッジの戦略を大きく強化したカードに《虚ろな者》がある。このカードはそのターンに捨てた手札の枚数によって唱えるためのコストが減少する能力を持っている。
ドレッジはバザールによって手札を捨てることが得意であり、一度起動するだけで虚ろな者を0マナで唱えることができる。
しかもドレッジの中ではかなりサイズの大きい4/4である。
しかし、先述の通り、ドレッジはサイズの大きいクリーチャーを突破することが難しい。まさかPWの能力でコントロールを奪われたりサイズを小さくされたりしたら大変である。


■涙

これは最早語るまでもないことだが、ドレッジは墓地対策に弱い
墓地対策は大きく4種類の効果に分けられる。
・墓地のカードを追放する
・墓地からのプレイを制限する
・墓地にカードを置かせない
・その他
「その他」には、《イクスリッドの看守》のように能力を失わせるものや《沈黙の墓石》のように対象にとれなくするものなどがある。
「墓地に置かせない」とは少し分かりづらいかも知れないが、戦場から追放する除去や、ライブラリや手札に戻す除去をいう。

前回の記事で、ドレッジは墓地をリソースにするのではなく、リソースを墓地に置いていると説明したが、そのリソースを使えなくなってしまうことがやはりもっとも厳しい。


■メタの中心でアイを叫んだドレッジ

イチョリッドにはメインフェイズを迎えさせてやってほしい。戦闘フェイズを生き残ったなら、ターン終了時までの短い一生を全うさせてやってほしい。
ナルコメーバが誘発したならちゃんと戦場に出させてやってほしい。やつらはその為に入っているし、セラピーをFBする仕事がまだ残っている。
あなたは自分のクリーチャーを大切に扱い、できるだけ死亡させないようにプレイするべきだ。それがトークンであってもだ。
本来設定されている以上のコストを要求するのは悪い借金取りのようだ。お互いにもともとのカードのコストや能力でプレイできるようにしよう。
出来ればマナを払っていないことは見逃してほしい。
ああそれと、土地破壊はこの界隈ではサイコパス扱いされるようだ。もちろんあなたは違うはずだ。
ゲームを長引かせるのもよくない。あまりライフゲインしたり土地やクリーチャーをタップインさせないほうがいいだろう。
それから、次のゲームのときにデッキに戻し忘れるかも知れないからカードは追放しないでくれ。

ドレッジからのお願いだ


■まごころを、君に(あとがき)

ここまで読んで解ったと思うが、ドレッジは急所が多い。これは端的にデッキの構造上の欠陥と言える。前回述べた通り、所詮は60枚の紙束に過ぎず、それらの強烈なシナジーが『最強』と呼ばせるデッキとなっている。そのシナジーを失わせてしまうものが、急所だ。
前回のドレッジをプレイする上でのルール上の注意点や発生するイベントに関する記事と、この急所に関する記事を照らし合わせれば、よりドレッジを手厚く介護できるようになるハズだ。

殊更カード名は挙げなかったが、急所となっている全てはメタ上のデッキのメインにいずれかが採用されているものが多い。
MUDや白エルドラージ、墓荒らしなどは特に多いだろう。また、環境にはドレッジ以外にもアンフェアなデッキが多数存在する。それらの対策となるカードの中にはドレッジに有効なものもある。
具体的には対オース、対ティンカーを兼ねる《封じ込める僧侶》や《墓掘りの檻》などである。

次回はドレッジのカード選択について相性のよいテーマやエキスパンションのことを書こうと思う。

また、この記事以外にも添削氏の取りまとめにより #ヴィンテージ記事 としてタグ付けされた記事が多く作成されているので、ぜひそれらを一読することも勧めたい。

それでは閲読ありがとうございました。
ぎゃ٩( 'ω' )و


■付録

・《異端聖戦士、サリア》
 サイズも能力も何もかもキツイ
・《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
 デッキが半分否定されている
・《平和の番人》
 除去を使ったあとだとかなり刺さる
・《歩行バリスタ》
 ドレッジを打ち落とすためのクリーチャー
・タキシング全般
 ほぼ死ぬ
・バザール対策
 一撃必殺
・タフネス5以上のクリーチャー
 ほぼ除去できない
・高速コンボ
 《Timewalk》有無の差が大きい
・《死儀礼のシャーマン》
 キツイが先手後手で評価がかなり変わる
・《ダク・フェイデン》
 鋼ポ○モンマスター
・ノーン様
 そちらに出られては困ります


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