【MTG】ドレッジのすゝめ

Magic : the Gathering(以下マジック)のヴィンテージにおける『ドレッジ』というデッキについての記事です。
ここでは、主にドレッジデッキを使用することに興味があるドレッジ初心者に向けて平均的なデッキ構成と「メイン最強」と言われる所以や戦略について紹介しようと思う。
ドレッジデッキの魅力、人気に対する意見は筆者の観測範囲(交友関係内)では肯定派と否定派に二極化している印象がある。筆者は当然肯定派なので、対戦相手がドレッジデッキで自分がそれ以外のデッキのときに瞬殺をかまされたとしても笑って許せるし、自分が使ってるときにマリガンを連発しても全然気にならない。むしろ平気。それは言わば力の代償なのだ。

※以下、特筆しない限り「ドレッジ」は「ドレッジデッキ」を指す

■ドレッジの魅力

ドレッジの魅力はなんと言っても圧倒的な爆発力と安定的な継戦力にある。
「圧倒的な爆発力」とは例えば、次の7枚を初手に先攻でゲームを開始したとする。

・これが、

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・1ターン目の終了時にこうなって、

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・2ターン目の終了時にこうなる

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ドレッジ慣れしてない人では、何が起きたのかわからないかもしれない。
一体どんな動きをしたのかを順番に説明する。なお、各写真上部の横方向に並んでいるカードは墓地である。

第1ターン
・手札から《Bazaar of Baghdad(以下バザール)》をプレイし能力を起動する
 カードを2枚引き、《イチョリッド》と「発掘」をもつ《ゴルガリの墓トロール(同墓トロール)》《臭い草のインプ(同インプ)》を捨てる。
・コストが減少した《虚ろな者》を0マナで唱える

第2ターン
・アップキープのイチョリッドの誘発にバザールを起動する
・バザールの2ドローを墓トロールとインプの発掘に置換する
・発掘により墓地に置かれた《ナルコメーバ》2枚を戦場に出し、イチョリッドを戦場に出す
・ドローステップのドローを墓トロールの発掘に置換する
・メインフェイズにナルコメーバをコストに墓地の《陰謀団式療法(同セラピー)》を唱える
・その際に墓地の《黄泉からの橋(橋)》の能力が誘発し、ゾンビトークンを出す
・セラピーの解決後、イチョリッド、ナルコメーバ、虚ろな者をコストに墓地の《戦慄の復活》を《炎族の盲信者》を対象に唱える
・橋の能力を解決し、戦慄の復活を解決する
・炎族の盲信者の能力によって強化されて3/3となったクリーチャー群で攻撃し15点のダメージ
・ターン終了時に《秘蔵の縫合体》を墓地から戦場に出す

以上、おわかりいただけただろうか?
ドレッジ経験の浅いプレイヤーは驚いたかも知れない。しかし、この動きはそれなりに起こることであり、それどころかこれを上回るブン回りすらも存在する。それは、橋、ナルコメーバ、虚ろな者、バザールなどのいずれかがもう1枚多くあったならば、もっとひどいことができる。
墓地から帰ってくるクリーチャー、橋によって生成されるゾンビによる爆発力と継戦力、その戦略をサポートするハンデスとカウンターを擁するデッキ。
これが「メイン最強」、いや「茶番」、いや…
ドレッジ:ザ・ギャザリング
と呼ばれる所以なのだ。

■ドレッジの種類

ヴィンテージ環境のドレッジには大きく分けて2種類の型が存在する。マナを使うマナ型とマナを使わないマナレス型だ。
『エルドレインの王権』現在の主流はマナレス型であり、前項で紹介したデッキもマナレス型だ。現在のマナレス型は特にピッチドレッジと呼ばれる。

・マナレス型

メインボード
4:《Bazaar of Baghdad》
1:《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand Cenobite》
4:《ナルコメーバ/Narcomoeba》
4:《臭い草のインプ/Stinkweed Imp》
2:《ゴルガリの凶漢/Golgari Thug》
3:《イチョリッド/Ichorid》
1:《ゴルガリの墓トロール/Golgari Grave-Troll》
4:《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam》
1:《灰燼の乗り手/Ashen Rider》
4:《よろめく殻/Shambling Shell》
4:《虚ろな者/Hollow One》
4:《否定の力/Force of Negation》
4:《意志の力/Force of Will》
1:《精神的つまづき/Mental Misstep》
1:《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
4:《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
2:《戦慄の復活/Dread Return》
4:《暴露/Unmask》
4:《黄泉からの橋/Bridge from Below》
4:《血清の粉末/Serum Powder》

サイドボード
4:《活性の力/Force of Vigor》
3:《神聖の力線/Leyline of Sanctity》
4:《虚空の力線/Leyline of the Void》
2:《貪欲な罠/Ravenous Trap》
2:《不快な群れ/Sickening Shoal》

見ての通り、メイン、サイドボード共にマナを必要とせずに機能するカードのみで構成されている。
特筆すべきは意外なほどの柔軟性であろうか。クリーチャーの展開は言わずもがな、バザールによるドローとディスカードを筆頭に、《意志の力》《否定の力》などの打ち消し、《暴露》《セラピー》による手札破壊を持ち、クリーチャー除去には《不快な群れ》(や《Contagion》)、置物破壊に《活性の力》と、ほぼ全方位に対抗することができる。
そして、これらはいずれもマナを支払わずに行われる。また、ドレッジ対策の《The Tabernacle at Pendrell Vale》や相手のバザール対策として《露天鉱床》もごくまれに採用される。

・マナ型
※マナ型には最近の好成績リストが見つからなかったため、筆者が今考えた

メインボード
4:《Bazaar of Baghdad》
1:《石化した原野/Petrified Field》
2:《マナの合流点/Mana Confluence》
2:《ダクムーアの回収場/Dakmor Salvage》
2:《真鍮の都/City of Brass》
1:《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand Cenobite》
4:《ナルコメーバ/Narcomoeba》
3:《イチョリッド/Ichorid》
4:《臭い草のインプ/Stinkweed Imp》
3:《恐血鬼/Bloodghast》
1:《ゴルガリの墓トロール/Golgari Grave-Troll》
4:《秘蔵の縫合体/Prized Amalgam》
1:《灰燼の乗り手/Ashen Rider》
4:《よろめく殻/Shambling Shell》
4:《虚ろな者/Hollow One》
4:《意志の力/Force of Will》
1:《精神的つまづき/Mental Misstep》
1:《むかしむかし/Once Upon a Time》
4:《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
2:《戦慄の復活/Dread Return》
4:《黄泉からの橋/Bridge from Below》
4:《血清の粉末/Serum Powder》

サイドボード
3:《活性の力/Force of Vigor》
2:《鋳塊かじり/Ingot Chewer》
1:《薄れ馬/Wispmare》
1:《蛮族のリング/Barbarian Ring》
1:《虚空の杯/Chalice of the Void》
4:《虚空の力線/Leyline of the Void》
3:《神聖の力線/Leyline of Sanctity》

マナレス型とは対照に、マナを支払う必要があるカードとマナ能力を持った土地が8枚前後採用される。マナは主にサイドボードでの使用が目的で、サイドボードには1マナで使用可能なカードが優先的に採用される。
また、土地を使用する都合から、《陰謀団のピット》や《蛮族のリング》のような除去として使える土地、土地と相性のよい《恐血鬼》や追加の発掘カードとして《壌土からの生命》もよく併用され、タキシング※(Taxing)系の効果に対してもマナレス型よりは耐性がある。
当然だが、マナを要しないカードも採用される。
ちなみに筆者はマナ型を愛用している。それもかなり独自の調整が多い。いずれ紹介したい。

※タキシング:《スレイベンの守護者、サリア》や《抵抗の宝球》などのもつ、追加のマナを要求する効果

■ドレッジの戦略

ドレッジのゲーム上の戦略は墓地をリソースとして活用するというのは上記までの通りだが、ドレッジにはさらに他のデッキではなかなか味わえないマッチ上の特徴がある。
それは、
ド レ ッ ジ は 常 に メ タ ら れ て い る
ということに起因する。ヴィンテージ環境に存在するデッキのほとんどには、サイドボードに6~8枚のドレッジ対策が採用されている。メインボードで《死儀礼のシャーマン》や《封じ込める僧侶》が採用されている場合もあるため、サイドボード後のドレッジは10枚程度の対策カードと戦うことになる。
その対策カードもまたゲームの開始時に設置する《虚空の力線》や0マナの《トーモッドの墓所》、0マナで唱えられる《貪欲な罠》や、《ボジューカの沼》という土地、クリーチャーでは《封じ込める僧侶》や《イクスリッドの看守》などカードタイプも対策タイミングも多種多様である。
メイン最強であるがゆえに、ドレッジはあらゆる対策をされる。ゲームに勝つためにはそれらを乗り越えなければならない。
ドレッジは、1マッチの3ゲームのうち2ゲーム目を対戦相手が採用している対策カードの種類を確認するために行う。
すなわち、
・1ゲーム目はなんとしても勝ち、
・2ゲーム目は対策の種類を確認し、
・3ゲーム目を対策の対策をして戦う
これが他のデッキとは違うマッチ上の戦略であり、ドレッジは2ー1でマッチに勝利することを目標としている
デッキ構築の時点で既に他のデッキとは視点が異なるのである。

■あとがき

2019年のエターナル環境は詳しくは省くが激動であったと思う。
この記事ではドレッジの基本的な挙動や構成について簡易に紹介するに留めた。
他のデッキとは違ったドレッジ特有の魅力が伝わっていれば幸いである。
もしかしたらドレッジが本当に最強だと思わせてしまったかも知れないが、実際には簡単な話ではない。
戦略の項でも述べた通り、ドレッジはあらゆる対策をされ、それらはいずれもデッキの機能を大きく損なわせるものばかりであり、いざ対面したときにはドレッジの弱点の多さを痛感せざるを得ない。
しかし、ドレッジを使い始めればそんなことは些細な問題となる。紹介したような爆発力を一度体験すれば病みつき(アドレナリン大量)である。
ドレッジのカード選択やプレイング、弱点などについても別途記事を作成するつもりである。
また、この記事以外にも添削氏の取りまとめにより #ヴィンテージ記事 としてタグ付けされた記事が多く作成されているので、ぜひそれらを一読することも勧めたい。

それでは閲読ありがとうございました。
ぎゃ٩( 'ω' )و


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