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新幹線で初の廃線もありうるのか?北陸新幹線の延伸問題

北陸新幹線は、すでに敦賀までの開業が実現しました。さらに、敦賀から京都方面への延伸が予定されていますが、その計画はまだ白紙といってもいい状態です。
敦賀から京都方面への延伸は、北陸地方と関西圏を直接結ぶことになり、地域経済の活性化や交通利便性の向上が期待される一方で、技術的・財政的・政治的な課題が山積しています。

本稿では、現在検討されているルート案の詳細と、それぞれの実現可能性について分析し、延伸の難しさを取り上げます。さらに、廃線の可能性や理想的な北陸新幹線の形についても考察します。

現在検討されているルート案


北陸新幹線の敦賀から京都方面への延伸に関して、いくつかのルート案が提案されています。それぞれのルートは地形的な特性やコスト、経済的効果などが異なるため、以下で各ルート案の特徴と実現可能性を詳しく見ていきます。

1. 小浜・京都ルート

このルートは、敦賀から福井県小浜市を経由し、その後南進して京都に接続する案です。
現在、最も有力視されている案であり、福井県や京都府が強く推しています。小浜市を経由することで、日本海側地域の交通網を強化し、観光資源を活用した地域振興が期待されています。
また、京都を経由することで、関西圏と北陸圏のアクセスが大幅に向上するため、経済効果も見込まれています。

**実現可能性**  
小浜・京都ルートは、福井県や京都府を中心に強い支持を受けており、国土交通省や関係機関の間でも比較的好意的に受け止められています。しかし、このルートは山岳地帯を通過するため、長大なトンネル工事が必要であり、建設費用が非常に高額になるという課題があります。また、地元住民や環境保護団体からの反対意見もあり、最終決定にはさらなる調整が必要です。

2. 湖西線活用ルート

この案は、敦賀から既存の湖西線(在来線)を利用して京都に接続するというものです。新たな路線を建設するのではなく、既存の鉄道インフラを活用することで、コスト削減を図ることが狙いです。湖西線はすでに京都と福井を結ぶ重要な路線であり、工事期間を短縮できるメリットがあります。

**実現可能性**  
湖西線活用ルートは、新規のインフラ整備が不要なため、コスト面で非常に魅力的です。しかし、湖西線はすでに在来線として運行しており、輸送容量の限界や新幹線の高速運行に対応するための設備改良が必要です。
また、在来線利用者への影響や、湖西線沿線自治体の調整が求められるため、技術的・政治的な障壁が多く、実現のハードルは高いといえます。

3. 舞鶴経由ルート

このルートは、敦賀から舞鶴市を経由して京都に接続する案です。舞鶴市は日本海側の重要な港湾都市であり、物流や観光の要所として発展を目指す地域です。このルートは、舞鶴市を通過することで地方経済の振興に寄与することが期待されています。

**実現可能性**  
舞鶴経由ルートは、地方創生の観点からは興味深いものの、他のルートに比べて輸送需要が少ないことが問題です。
また、舞鶴市から京都までの山岳地帯を通過するため、トンネル工事が大規模になり、建設費が高騰する可能性が高いです。このため、経済的な採算性が見込めないという理由で、実現可能性は低いと考えられます。

4. 米原ルート

米原ルートは、敦賀から東へ進み、滋賀県米原市で東海道新幹線に接続する案です。米原駅はすでに東海道新幹線と在来線が交差する重要な交通拠点であり、乗り換えの利便性を活かすことができるルートです。

**実現可能性**  
米原ルートは、既存の米原駅を活用することで建設費を抑えられるため、経済的には魅力的です。しかし、東海道新幹線との接続を円滑に行うためには、運行ダイヤの調整や東海道新幹線の輸送能力への影響を考慮する必要があります。また、JR東海は北陸新幹線が東海道新幹線の運行に与える影響を懸念しており、政治的な調整が難航する可能性が高いです。

延伸の難しさ:5つの主な条件


北陸新幹線の敦賀から京都方面への延伸には、いくつかの大きな障害が存在します。特に以下の5つの条件が、延伸の実現を難しくしています。

1. 建設費用の高騰

敦賀から京都までの延伸区間は、山岳地帯や都市部を通過するため、トンネルや橋梁の建設が必要です。これにより、建設費用は非常に高額になると予想されており、国家財政や地方自治体の負担が大きな問題となっています。また、建設費が予算を超過する可能性もあり、財政面でのリスクが高まっています。

2. 地形的な制約

延伸区間の多くは山岳地帯を通過するため、地形的な制約が大きく影響します。特に小浜・京都ルートや舞鶴経由ルートでは、長大なトンネルが必要となり、工期が長期化する可能性があります。また、地盤の不安定な箇所では技術的な困難が予想され、工事の進行に影響を与えることが懸念されています。

3. 環境保護の課題

延伸工事に伴い、自然環境への影響が避けられません。特に山岳地帯や自然保護区を通過するルートでは、環境保護団体や地元住民からの反対運動が起こる可能性があります。これにより、工事が遅延したり、ルートの再検討が必要となる場合があります。環境影響評価(EIA)も慎重に行われる必要があり、これに時間がかかることが予想されます。

4. 政治的調整の難航

北陸新幹線の延伸に関しては、関係する自治体や鉄道会社、国との調整が必要不可欠です。例えば、福井県が支持する小浜・京都ルートと、滋賀県が提案する湖西線活用ルートの間で利害が対立しており、政治的な調整が難航する可能性があります。また、JR東海との連携も重要であり、東海道新幹線との接続に関しては、運行ダイヤや輸送力の調整が求められます。

5. 利用者数の不確実性

敦賀から京都までの延伸が実現したとしても、利用者数が予想を下回れば、運行の採算性が問題となります。特に、人口密度が低い地域を通過するため、需要予測に基づく経済的なリスクが高まっています。採算が取れなければ、運行が赤字となり、最終的には路線の維持が困難になる可能性があります。

廃線の可能性:金沢-敦賀間の例を基に考察


北陸新幹線の敦賀から京都方面への延伸が実現した場合でも、採算性の問題や利用者数の低迷が続けば、最悪の場合、区間の廃線に至る可能性があります。
これまで新幹線の廃線は日本国内で実例がありません。ですが、敦賀-京都間の着工が実現できない場合、北陸新幹線の金沢-敦賀間がその初例となるリスクも指摘されています。
ここでは、金沢-敦賀間の利用者数の推移や現状を基に、廃線の可能性について考察します。

1. 金沢-敦賀間の利用者数の現状

金沢-敦賀間の利用者数は、北陸新幹線の延伸によって一時的に増加が見込まれていますが、長期的に見れば、持続的な利用者増加が期待できるかどうかは不透明です。北陸地方と関西圏を結ぶ高速輸送手段としての役割を果たす一方で、敦賀以南への延伸が遅れたり、最終的に実現しなかった場合、利用者数が減少する懸念があります。特に、京都や大阪への直接接続が実現しない場合、金沢-敦賀間の新幹線利用者が減少し、在来線や他の交通手段に流れる可能性があります。

2. 地元経済への依存と観光需要

金沢から敦賀間の新幹線利用は、地元経済や観光需要に大きく依存しています。金沢は北陸地方の主要都市であり、観光地としても人気がありますが、敦賀やその周辺地域は観光資源や経済基盤が比較的弱いとされています。このため、観光シーズン外の平常時には、ビジネスや通勤需要が限られており、利用者数の安定的な確保が難しい可能性があります。

3. 競合する交通手段との関係

北陸新幹線は高速輸送手段としての強みを持っていますが、自動車や高速バスなどの他の交通手段との競争も激化しています。特に、金沢-敦賀間は比較的距離が短いため、自家用車やバスでの移動も選択肢となり得ます。また、北陸自動車道などの道路インフラも整備されているため、鉄道の優位性が必ずしも明確ではありません。このような競争環境の中で、採算が取れない場合、鉄道運営にとって経済的な負担が大きくなる可能性があります。

4. 採算性が取れない場合のシナリオ

金沢-敦賀間で利用者数が予想を大きく下回り、収益が確保できなければ、赤字運営が長期化することが予想されます。その結果、運行の縮小や減便が検討され、最悪の場合、維持費が高騰する一方で収益が見込めないことから、廃線に至るシナリオも現実味を帯びるかもしれません。北陸新幹線の延伸計画が進行中であるため、廃線の議論はまだ具体化していませんが、リスク管理や採算性の精査が今後重要となります。


理想的な北陸新幹線の形について


北陸新幹線の理想的な形を考える際には、地域経済の発展と国全体のインフラ戦略のバランスを取ることが重要です。以下に、理想的な北陸新幹線のあり方について意見を述べます。

1. 経済効果の最大化

北陸新幹線の延伸は、北陸地方と関西圏を結ぶ交通インフラとして、地域経済に大きな効果をもたらす可能性があります。
そのため、延伸計画を進める際には、関西圏への接続を早期に実現し、観光やビジネスの需要を確実に取り込むことが必要です。
例えば、京都や大阪への直結ルートを確定させることで、北陸地方へのアクセスを向上させ、地域経済全体の活性化を促進することが理想的です。

2. 地元住民との連携と地方創生

北陸新幹線の理想的な形を考える上では、地元住民との協力も不可欠です。
特に、延伸によって通過する地域では、新幹線の開通に伴う地元経済への影響が期待されています。観光産業の振興や地元産業との連携を図り、地域経済を底上げする取り組みが必要です。これにより、利用者数の安定した確保と地方創生を同時に実現することが理想的な形となるでしょう。

3. 環境への配慮

新幹線の延伸には、環境保護の視点も重要です。大規模なインフラ整備によって自然環境に与える影響を最小限に抑えるため、持続可能な技術や工法を採用し、環境負荷の軽減に努めることが求められます。
また、地域社会における持続可能な発展を促進するために、新幹線と地元の公共交通機関との連携強化も必要です。

4. 政治的調整の迅速化

北陸新幹線の延伸には、政治的な調整が避けられません。関係する自治体や鉄道事業者、国の間で利害調整を迅速に進め、計画の停滞を防ぐことが必要です。特に、ルート選定や建設費用の負担に関する議論を円滑に進めることで、計画の早期実現を目指すことが理想的です。
これにより、北陸新幹線の延伸による地域間の格差を是正し、全国的な経済効果を最大化することが可能になります。

結論


北陸新幹線の敦賀から京都方面への延伸は、地域経済や交通インフラの発展にとって重要なプロジェクトですが、その実現には多くの課題が存在します。各ルート案にはそれぞれメリットとデメリットがあり、実現可能性も異なります。
また、建設費用の高騰や地形的な制約、環境問題、政治的調整の難航といった要因が、延伸の難しさを増しています。
さらに、利用者数が予想を下回れば、廃線のリスクも考慮しなければなりません。

理想的な北陸新幹線の形としては、経済効果を最大化し、地元住民との連携を深め、持続可能な発展を目指すことが求められます。
地域経済の発展とインフラ整備のバランスを取りながら、北陸新幹線が日本全体の経済活性化に寄与するよう、計画を進めていくことが重要です。

そのためにも1日も早く延伸ルートを決定し、結びつきの強い関西圏と北陸の各地域とを直結させる必要があります。
反対意見が出ても押し切って事業を進めることができる、強いリーダーシップを持っている担当者が現れることに期待したい。

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