マガジンのカバー画像

ぬさんたら学事始

19
マレー世界についての記事。
運営しているクリエイター

#マレーシア

マレーシア語とインドネシア語

 マレーシアに留学していたという話をしたときに「インドネシア語専攻だったのにマレーシア?」と言われることがあります。専攻する言語が使われている地域以外に留学する人はじつはあまり珍しくないのですが、それはともかく僕は「インドネシア語とマレー語はおなじ言語なんですよ」なんて言ってます。  使い方を間違えるとかなり誤解を招きかねない表現ではあるのですが、マレー語(Bahasa Melayu)という言語をもとにマレーシア語(Bahasa Malaysia)とインドネシア語(Baha

調査地に行きたくない話

 唸るほどの田舎。マレーシアはボルネオ島の山間の町に滞在しながらそんなことばを発していた。四方を見渡すと緑のジャングル。大阪うまれの僕にはあまりにも田舎すぎた。  この国は周辺国と比べると頭ふたつくらい抜けた経済力がある。経済力があるのでこの山奥でもみんな車に乗っているから渋滞が発生する。その渋滞が発生するのは日曜日。教会に入る車の列が目抜き通りを塞いでいる。それだけカトリックの信徒が多い地域で、マレーシアのカトリックを研究する僕にとって調査地になり得るだろうかと予備調査に

マレー語ポップスを聴こう!Knock Knock

Knock Knock Knock Knock 歌:Elizabeth Tan Bulan, bintang kau janjikan Tidak aku teruja Cakap memang mudah Semuanya mampu 天に誓うというけれど期待していないわ なんでもできると言うのは簡単だけど Kata manis kau beri Kuterpikat belum tentu Cakap memang murah Oh, kau pun tahu

マレー語ポップスを聴こう!Malaikat

Malaikat 天使 歌:Hazama Tuhanku Kamu tolonglah hantarkan kepadanya Malaikat tuk jaganya bila ku tiada Tunaikan semua permintaannya Kerna ku cintanya sungguh-sungguh 主よ、あなたの天使を彼女に送り わたしがいないときにも守ってください この願いにすべてをかけます 彼女をほんとうに愛していますから Pagi pet

付き合って二週間、いまがいちばん楽しい

 このままいっしょに長く付き合えるのだろうかと不安になるときもあるが、まだ付き合い始めて2週間である。まだよくわかっていないけれど、きっと好きになれる。いや、もう既に好きだ。  一日30分ほどしか会えないのがもどかしい。僕はふだん大学院で研究したり食い口を探すのに仕事したりしているので、会うための時間をなかなかとることができない。それでも合間を縫って毎日顔を見るようにしている。ほんとうはずっといっしょにいたいけど、一日10時間はいっしょにいたいけど、物理的にそれができないの

イスラーム的便利な表現

 たいしたものではないのだが、語学教室の講師を務めたことがある。入門クラスなので文字の読み書きと発音から始まって、基本的な表現、新出単語などを攫っていく。多くの場合は会話ができるようになることを望まれており、というわけで挨拶表現なども学ぶのだが、これがまた曲者なのである。挨拶表現はいろいろな言語でわりと例外的な語彙や表現をすることが多く、初学者にはあまりいきなり教えたくないのである。  いや、挨拶表現はもうそういうものだと割り切って覚えさせるという方法もある。アラビア語での

ポップ・ムラユを聴こう Kuala Lumpur Oh Kuala Lumpur

Kuala Lumpur Oh Kuala Lumpur クアラルンプール、嗚呼クアラルンプール 歌手:Melak Ridzuan Aku datang dari desa Hanya sebatang kara Meninggalkan kampung tercinta Dan sanak-saudara 愛する故郷と家族を捨てて ※desa:村 田舎から出てきた孤独な俺 Setiba di kota raya Ku giat berkerja Berlumba-l

POP MELAYUを聴こう!Suasana Hari Raya

 ラマダンも半分を折り返してきましたね。といっても朕はカトリック信者なので断食の義務はないのですが、一日くらい隣人に心を合わせて断食に挑戦する気概も欲しいところです(彼らはそれを30日も続けるのですし)。  というわけでマレーシアやインドネシアではそろそろ、ショッピングモールなどでハリラヤの曲が流れているかもしれません。今年は新型コロナウイルスの関係でもしかしたら気軽に帰省できないかもしれませんが、それでもこのハリラヤ関係の曲、マレー語でラグラヤ(Lagu Raya=ラヤの

ジャウィ文字事始

 現代マレー語を勉強すると、規則的にまとめられたラテン文字による正書法で学習することになる。付属記号がつかず、いちど読み方さえ覚えてしまえば簡単に読めてしまうラテン文字マレー語は、マレー半島を支配していたイギリスと、国境の向こう側のオランダ領東インド(現在のインドネシア)でオランダによって考案され、1972年からはマレーシアとインドネシアで統一された正書法が使用されるに至っている。  ではそれ以前に使用されていた文字といえばジャウィである。14世紀にマレー世界にアラブ商人に

マレーシア語とインドネシア語③イギリスかオランダか

  植民地時代に入ってきた語彙について紹介したいと思います。 マレー世界の外来語 今回紹介する語彙は外来語です。といっても外来語にもいろいろな種類があります。日本語でも、たとえばカステラやカルタといったことばポルトガル語由来ですし、そもそも中国語からは膨大に語彙が入りまくっていますが、中国語由来の語彙などは外来語とは認識しないはずです。たとえばコンピュータとかバッグどか、明らかに英語由来のそういうのが外来語として認識されているように、マレー語世界にも似たようなところがありま

マレーシア語とインドネシア語①同じ意味、違う言葉

 マレーシア語とインドネシア語、ということで、前回はそもそもマレーシア語ってなに?インドネシア語ってなんですねん?マレー語とはちゃいますの?というところから解説してみました。長ったらしくてわかりにくかったかもしれませんが。  今回からマレーシア語とインドネシア語の様々な相違点を押さえてみます。 なぜ違いが生まれたか 前回の記事と共通することですが、マレーシア語はマレー語ジョホール方言が、インドネシア語はマレー語リアウ方言が基になって標準語、国語として整備された言語です。そ

マレーシア語とインドネシア語②微妙に違うその綴り

 前回の記事で、マレーシアとインドネシアで同じ意味なのに違う単語の例をいくつか紹介させていただきましたが、今回は同じ単語で同じ意味、だけど微妙に綴りが違う単語たちを紹介したいと思います。 もう既に「違う」その単語 このシリーズではマレーシア語とインドネシア語の違いについて説明しているわけですが、もう既に違う単語があります。そう、このシリーズのテーマたる「違い」は、マレーシアではbeza、インドネシアではbedaと書きます。  「マレーシア語とインドネシア語の違い」と言いた