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【読書】言語学バーリ・トゥード 川添愛

読書レポート521

言語学バーリ・トゥード
川添愛
2021年7月21日発行

笑えて楽しい
日本語言語学者によるコラム集だ
女性でいて プロレス、格闘技ファンであるのが好感を持てる
ソシュール研究者の丸山圭三郎門下生としては見過ごせない好感触なのだ


九州大学で言語学という専攻分野を進めることができたとは幸せなことだと思う
ちなみに丸山圭三郎はフランス文学の専攻であった
丸山圭三郎教授が「現代思想」にソシュール関連の記事を掲載していた頃は学外からも学生達が集まり教室の窓から数十人単位で人がこぼれていた
あの頃の構造主義・記号学・言語学人気は懐かしい
言葉に関心が強いのは著者も同じだ
おかしな日本語には関心があるという
例えば不動産広告のキャッチコピー
「 海老名駅前のタワーを 住む」
に住むではなくて、を住む
終着点としての物件ではなく、人生の過程の中での居住地を表現していると指摘している
不動産広告のプレゼンとは違うだろう
銀座10分圏を住む とか 住みこなす とか を暮らす とか 目と鼻の先 というワードをモッくんの顔写真に落とし込んだADKのクリエィティブもあった
もはや擦り切れた不動産広告表現だ
方や おいしく生きる とか ご飯をおいしく などには興味ない  パンにおいしい は関心がある
残念ながら広告表現やキャッチコピーということに関しての考察は更なる精進を期待したい
変な表現を集めてみたいという非常にサブカルチャーファンらしい特性を持った研究心がある点は好ましいと感じた
自然言語としての日本語の言葉にこだわりながらもプロレスの話しも出て来る
プロレス本といえば個人的には村松友視だが
この著者に教えてもらえた選手とその必殺技
真霜拳號  無道
本田多聞  回転地獄五輪
には興味を持った
格闘技レポートを書かせたらマジ自信あるという誉田哲也の著書も好みのひとつだ
どうやら格闘技好きな著者は興奮する実感が相通じる
感覚的なスピード感やキレも文章で表現しようと工夫されているのだろう
そして思わぬ技を文章の中にもぶち込んできたりもする
新鮮な驚きや楽しみを提供しようとするサービス精神につながっているのではないかと感じている

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