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沖縄食堂エレジー

沖縄の食堂の閉業ラッシュが止まらない。働き方改革やコロナの爪痕による長時間営業から時短営業への変更、材料費光熱費等の高騰、人件費等、沖縄の昔ながらの食堂を維持していくにはしんどい時勢とはいえかなりつらい。
那覇のハイウェイ食堂の休業からの閉業。沖縄市のグランド食堂の一時閉業(移転先が決まり次第再開とのことだが移転先は難航とのこと。沖縄市内での再開をと願っているのだが……)、そして首里のあやぐ食堂の10月いっぱいでの閉業とうちひしがれそうになるこの相次ぐ閉業。
今回はあやぐ食堂と今は亡き食堂の想い出を綴ろうかと思う。
まずはあやぐ食堂。2度目の来沖の際に寄ったあやぐ食堂。きっかけは当時弊サイトにこられていた常連さんの書き込みからだ。
「まいきーさん、もし首里に行くならあやぐ食堂お勧めです。メニューは色々ありますが、味噌汁が美味しいですよ」
ということで、首里城に行くし、せっかくならとブランチをあやぐ食堂にした。オーダーしたのは味噌汁。まぐろの刺身が添えられているものの、退職した鮮魚店でのつらい日々を思い出すので刺身を全く受け付けられず、交渉の末にポーク一枚に変えていただけた。食堂のおばちゃんたちのホスピタリティーに感謝である。
さて味噌汁だが、うまい!どんぶりになみなみ盛られた味噌汁はふんだんに使われた野菜とポークの塩気からくる旨みが体に染み渡り、サイドも半熟の目玉焼き、そして刺身の代わりに添えてくださったポークのカリカリ感、それらは首里の石畳を歩いてくたくたの体に優しく、心もお腹も満たしてくれた。2度目の来訪は2013年。Twitterで知り合ったフォロワーさんとのサシオフのためにあやぐ食堂で待ち合わせ。ゆし豆腐をオーダー。ほんのり薄味ながら、味噌の旨みとゆし豆腐のふわふわ感がマッチしていて瞬く間にたいらげた。次行く時はがっつりとAランチかソーキのケチャップ煮にトライしようかなと思っていた。あやぐ食堂はずっとあるさと呑気に思っていた。そんな矢先の今回の悲報である。先延ばしは厳禁。改めて思い知らされた。
そして、あやぐ食堂の閉業決定にへこみまくる私は今はもうない食堂に思いを馳せた。
中央パークアベニューにあったコザ食堂(現在は跡地にコザの街中華である北京亭が入っているのだが、オーナーの仲本さん入院につき、中華メニューは休止、代わりに軽食が販売されている)。
2004年。2度目の来沖の際に、滞在していたゲストハウスのオプションで南部戦跡ツアーに参加。終わった後、体調を崩し、ブランチをとったのはコザ食堂だった。チャーミングな栄子マーマーの作るそばを啜りつつ、店内に飾られた沖縄県内外の著名人のサインを見回したら、城間正男さんのサインを見つけ、大泣きしたのは今となっては懐かしい。

コザ食堂初体験の顛末は上記を参照願いたい。
コザ食堂は2015年8月に閉業。最後に来店したのは閉店直前の8月8日。既にフードメニューはやめられ、飲み物のみのサーブだったのでアイスティーをオーダーし、栄子マーマーと最後のゆんたくをした。あれから8年。栄子マーマーはお元気しているだろうか?

2015年8月。コザ食堂閉業を知り、動揺しながらもせめてものの記念にと栄子マーマーを撮影。

次は2018年に閉業した普天間コーヒーシャープ。
とある事情により2017年の4月に来沖し、せっかくだからとコザから普天間までの無謀なウォーキングを敢行。普天間宮にたどり着いた時にはすっかり空腹で、ふと目についた普天間コーヒーシャープに来店。

ありし日の普天間コーヒーシャープ


アメリカ世の名残あるお品書き


普天間コーヒーシャープのすき焼き

さんざ悩んですき焼きをオーダー。
深めの器にででんと盛られたすき焼きは思った以上に柔らか目な肉とボリュームたっぷりの野菜のバランスがよく、半熟玉子が絡み、なぜか入っているマロニーが汁を吸って甘じょっぱい。そんなすき焼きだった。
軽口を言い合いながら接客をするオバアとその娘さんらしきねーねーのやり取りが楽しい。そんなコーヒーシャープだった。また行こうと思っていたら翌年に閉店。まだ挑んでいないメニューがたくさんあったのにと普天間コーヒーシャープ閉店を嘆いた。そして、コーヒーシャープのオバアとねーねーはお元気だろうか?気がかりである。
食堂の相次ぐ閉業の一方でコロナ禍でテイクアウトして食べられるからかお弁当屋さんは盛況と聞いた。
NHKのドキュメント72時間では宜野湾市にある24時間営業のお弁当屋さん『井筒屋』が特集され、その人間模様が放送された。

沖縄市でも酔客や塾帰りの学生さんの腹を満たす24時間営業のストアー『一丁目ストアー』が健在だ。具だくさんでやや味あふぁーなじゅーしーおにぎりや、美味しいけれど急いで食べないと油が回りやすいのが難儀なタコミート味のライスコロッケ、タコスボールが恋しい。
旅人のノスタルジーでありエゴでしかないのはわかっていても、どうか私の大好きな店が長く続いてくれますようにと願ってならない。
地元の愛してやまない店も立て続けに閉業し、心のすきま風がどんどん吹きすさんでいるからなおさら切に思うのである。

(文責・コサイミキ)

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