オキナワンロックドリフターvol.73
さて、念願の城間兄弟との対面を果たした後、バスにて普天間へ。
目指すは普天間天満宮。
来沖の度にここで祈り、小さな奇跡をもらえる場所。
無事参拝したその時、清正さんから着信が。
「まいきー、なかなか来ないけれどどうしたの?つじあやのライブ始まるよ」
しまったあああああ。
城間兄弟とのお茶会に浮かれてハイになり忘れる大失態!
ていうか、タクシーで行ってもライブの最初にはもう間に合わない時間。
遅れてくることを伝えてお手洗いに行くとさらに着信が。誰からだろう?
さっちゃんからだ。
「まいきー、ココナッツ行くんだよね?私も行こうかな?卒論のために比嘉さんにも話を聞きたいし」
なんと有難いことに。車でココナッツまで送ってくれるというではないか。
しかし、私の現在地は普天間。車も混む時間に普天間までこさせるのは彼女に多大な負担。
バスに乗ってコザに戻るから京都観光ホテルで落ち合おうと連絡。
そしてバス停へてくてく歩くも。……バスが来る気配がない!時間は刻々と迫る。
仕方がないので買ったばかりの靴をぽくぽく鳴らしながら走ることに。
これならば走ったほうが速いからだ。
ところがどっこい、走るたびに足が痛い。金具か何かが刺さったように痛いのだ。さらに。
べりっ。
そんな音とともにバランスを崩しつんのめってこけてしまった。
見ると靴底がはがれてしまっていた。
禍福はあざなえる縄の如しとはわかっていてもこりゃあんまりだ。
時刻は18時を過ぎた。
どうしよう。
そんなところへタクシーが。大慌てで手を振り、タクシーを呼び止めて中の町はサンエーへ。
さっちゃんに携帯で事情を話してサンエーで靴を買うことに。さっちゃんには相変わらずだねと大笑いされる。
サンエーの衣料品コーナーで靴を買い、履き替えるべく靴を脱いでみた。
足の痛みの犯人は靴下をとめる金具で、それが足の裏にざっくり刺さっていたのだ。念のために手持ちのウェットティッシュで足を拭き、絆創膏を貼る。
新しく買ったスニーカーに履き替えて京都観光ホテル前にてさっちゃんと合流。
一部始終を話すと彼女は苦笑いしつつ相槌を打ってくれた。
やはり話のメインは数時間前の城間兄弟とのお茶会。私の顔はよほど緩んでいたのだろう、さっちゃんはくすくす笑っておめでとうと言ってくれた。
「こんなに幸せそうなまいきー、はじめて見たよ」とさっちゃんに呟かれた時、照れ笑いしてしまった。
ココナッツ前に車を停めてもらう。とその前に、車内で城間兄弟からもらったムーチーでおやつタイム。
あっさりめのムーチーはほんの少しやわらかめで月桃の香りと相まって食べやすく、さっちゃんもさっぱり味でおいしいねと絶賛。
達成感と満足感がムーチーをよりおいしくしていた。
ムーチーを食べ終えたらココナッツムーンへ。
ドアを開けようとするも、閉まっている。どうやら、つじあやのさんのライブはシークレットライブのようだ。
勝手口から煙草を吸おうと外に出られたリナママさんが私たちを見つけて手招きしてくださった。
リナママさんに導かれ、勝手口から入ろうとするも、つんのめり、盛大に転んで、つじさんとオーディエンスの皆さんの注目を浴びてしまい、清正さんから呆れられてしまう。情けない。
ライブの大半は聴けなかったものの、それでもスタッフルーム越しからつじさんの唄う山下達郎さんのカバー『パレード』や、『猫の恩返し』の主題歌である『風になる』を聴けたのは大収穫だった。
ライブは終わり、瞬く間に撤収され、オーディエンスの皆さんもホテルに帰られた。どうやらこのライブは某自動車メーカー主催の懸賞旅行のためのものらしい。
カウンターにはビュッフェ状態で保温容器に入った食べ物がいくつか並べられ、残されている。
清正さんから、「あんたたち食べてもいいよ」と促されたのでお言葉に甘え、サラダやチキンやタコライスをいただくことにした。それだけじゃ恐縮なので飲み物とフライドポテトをオーダーしつつ。
さっきまでライブがあったと思えないくらい、いつものココナッツムーンに戻った店内で、私たちは及川光博を思わせる涼やかな美形なコウスケさんと、どことなくアンジャッシュの児嶋一哉さんを思わせる風貌のユウジさんという新しいスタッフの方から運ばれたフライドポテトとビュッフェの食べ物の残りを食べながら清正さんと話を始めた。
さっちゃんはここぞとばかりに清正さんに質問をされた。音楽をやっているさっちゃんは清正さんのギターについて質問をし、清正さんはそれに淀みなく答えられた。その際に清正さん作曲となっている“Free”にはさほど思い入れがなく、作曲した記憶がないことを話されてあの曲が好きな私は少し寂しくなった。
しばらくして、リナママさんから月桃の葉に包まれた餅を手渡された。しかも、できたてなのか熱々だ。
「はい、カーサムーチー、デザートにどうぞ」と。
料理をひととおり楽しんだら、リナママさんお手製のカーサムーチーだ。紅芋が練り込まれた淡い紫のそれは城間兄弟お手製のムーチーよりも甘く、芋の食感が強めでお菓子みたいな味わいだった。
さっちゃんは食べながら「二度もムーチー食べたね、私たち。今日はムーチー日和だね」と呟いた。それを聞き逃さなかったリナママさん、「ん?どういうこと?」とこちらに近づかれた。
げ!まずい!と思いながらもはぐらかすことはリナママさんの前では不可能だ。私は城間兄弟に会ったことを白状した。
リナママさんは聞き終わるや否や、「えー!あなたまだあの兄弟に関わってるの?」と呆れられた。ひ、ひどい……。
清正さんは「あいつらとお茶したんだ。で、俊雄と正男の様子はどうね?」と尋ねられた。
私は一息つくと、数時間前に張り巡らされた萌えと有頂天フィルターを削いでから清正さんに城間兄弟の様子を話した。特に俊雄さんの言動がなんかふわふわし出したのが心配なのを話した。
清正さんはため息つきながら、「今度は俊雄の番かもね」とぽつり。私も頷いた。
「あいつらは交互に壊れちゃうからなあ」とひとりごちると、清正さんはコウスケさんに「この前のDVD持ってきて」と指示された。
清正さん曰く、以前ビデオに録画していた特番を、劣化しないようにDVDに変換されたそうだ。
特番の名は『伝説から未来へ……オキナワン・ロック・ヒストリー』という1999年に放送された、渋谷と宜野湾で行われたライブのダイジェストだった。
私たちはレアな映像に期待を膨らませながらスクリーンに映る特番を観た。
(オキナワンロックドリフターvol.74へ続く……)
(文責・コサイミキ)