エイスグレード

この映画を観た2019年の冬はかなりかつかつだった。なので財政的に少し無理したものの、見て良かった。
主人公のケイラは中学2年(8年生)。翌年からは高校に通う。顔はやや十代の頃のリンジー・ローハンを思わせるかわいさはあるけれど、ニキビだらけで太りぎみ。友達はおらず、学内1の「無口で賞」に選ばれる始末。そんな彼女の拠り所は、YouTubeでPHP研究所か?な自己啓発動画を撮影して配信することだが、視聴者はいないし、酷いときは再生数0って時もある。
家族は父親と二人暮らし。母親が出て行き、男手ひとりでケイラを育てる父親は、携帯依存性な思春期の娘にどう接していいかわからず、やや干渉ぎみになるか腫れ物に触れるように接するかのいずれしかできない。
ケイラの日常は負け犬のまま淡々と過ぎていくが、高校見学でサポート役として出会ったキラキラ生活満喫している感に満ちた高校生なオリヴィアと出会い、それを機に背伸びしたり、その背伸びが原因で大変なことになったりして少し成長する。そんな話。
見ながら、中学~高校時代のドブ歴史が甦り、頭を抱えた。14歳ってしんどい年だよなと思う。自意識でぶよぶよしていて、キラキラしてる勝ち組の女の子に羨望と憧憬と侮蔑のごった煮みたいな感情を抱くくだりとか大人になって思うと、何イキってるんだよガキがといいたくなるようなトっぽい男の子を好きになるくだりは首がもげるくらい頷いたなあ。しかし、今も昔も悩みは一緒、なおかつ今はSNSで価値をジャッジされたり、承認欲求を満たそうとするからさらに厄介だ。
だからこそ、終盤、思春期の娘にどうして接していいかわからないお父さんにケイラが自分自身のよるべのなさを打ち明ける、お父さんが不器用ながらに真摯に悩む娘を励ますくだりや、ケイラを無視か嘲笑する勝ち組女の子に、ケイラがいままでの積もる怒りをきっぱりと言い放つくだりは思わず笑みがこぼれる。……まあ、あの勝ち組女の子たち、そんなケイラを「何あれ頭おかしい」と笑うんだろうけれど。でも、多分、勝ち組のあの女の子は高校時代、何もかもがうまくいかない雨の日に、君がプレゼントしたあのカードゲームをやると思うよ、ケイラ。
そして、ケイラが高校見学でお世話になるおねいさん、オリヴィアは多分高校デビュー成功した運のいい女の子で、中学時代はケイラまではいかないけどもさい子だったんだろうなとか推測したよ。さらに、ケイラがオリヴィアに誘われて会う高校生グループ、あ、明らかに非モテキョロ充がいるよと胸騒ぎがしたら案の定……。
ケイラがあのキョロ充な送り狼の外堀固めに屈して食われてぼろぼろにみたいなことにならずに済んだことに安心したし、イキることをかっこいいと勘違いしてるエイデンに裸の自撮り画像を送信しなくてよかったと心底思う。あの男の子、絶対にケイラがそんなことしたら、軽はずみにX videoやX-hamsterあたりにアップして取り返しのつかないことになっていたから。
ラストシーン。14歳の彼女が未来の彼女に送る動画のシーンは笑い泣きしてしまった。

ぱっとしないどころかむしろドブ歴史な中学校ないし高校生活を送る女の子、または送ったかつての女の子には刺さる映画。

(文責・コサイミキ)

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